「足りない」と「足らない」は、どちらも意味としては同じで、どちらを用いても間違いではありません。
ただし、「足りない」は現代的な表現であり、「足らない」はやや古めかしい表現とされています。
この違いは、それぞれの語源に由来します。「足りない」は「足りる」の否定形であるのに対し、「足らない」は「足る」の否定形から来ています。
「足る」は古くから使われていた言葉で、一方、「足りる」は江戸時代以降に広まった言葉であるため、「足りない」は「足らない」より新しい表現と言えます。
ちなみに、「足る」が一般的だった時代には否定形として「足らず」や「足らぬ」が使われていました。そのため、「足らない」も比較的新しい表現のひとつです。
また、「足る」と「足りる」の関係性は、「借る」と「借りる」や、「飽く」と「飽きる」といった動詞の変化と似ています。
しかし、「借りない」を「借らない」とはあまり言わないように、現代では「足らない」の使用頻度が減りつつあり、将来的には「足りない」だけが用いられるようになる可能性も考えられます。
足りないとは
「足りない」という言葉は、動詞「足りる」の否定形にあたります。
「足りる」は上一段活用の動詞で、十分な量や条件を満たしている状態を指します。
「足りない」はそれを否定した形であり、「お金が足りない」「時間が足りない」「努力が足りない」といった形で、何かが不足している状況を表す際に用いられます。
「足りる」という表現自体は、「足る」から派生したもので、江戸時代以降に広く使われるようになった比較的新しい言葉です。
そのため、「足りない」も「足らない」と比べて現代的な表現であり、日常的な会話や文章で広く使用されています。
ただし、「足りない」が現代的であるからといって、必ずしもそちらを選ぶべきだというわけではありません。
後述のように、「足らない」も現在でも一般的に使われる表現の一つです。
足らないとは
「足らない」は、動詞「足る」の否定形です。
「足る」は五段活用の動詞であり、「何かが必要な基準を満たしている」という意味を持ちます。
否定形の「足らない」も、「足りない」と同様に「お金が足らない」「準備が足らない」といった形で、あるものが十分ではないことを表します。
「足る」は「足りる」よりも歴史のある言葉であり、「語るに足る」といった少し格式ばった表現で使われることもあります。ただし、日常的な場面での使用頻度は高くありません。
一方で、その否定形である「足らない」は、現代でも耳にすることが多く、特に会話の中では親しみを感じさせる言葉として用いられることがあります。
結果として、「足りない」の方が使用頻度は高いものの、「足らない」も選択肢として十分に通用する表現です。
まとめ
「足りない」と「足らない」は、いずれも何かが不足していることを表しますが、その成り立ちや使われ方に違いがあります。
「足りない」は、動詞「足りる」の否定形です。
「足りる」は上一段活用の動詞で、十分な量や条件を満たしている状態を指します。
この表現は江戸時代以降に使われ始めた比較的新しい言葉で、現代では日常会話や文章で最もよく用いられる形です。「お金が足りない」「材料が足りない」など、親しみやすく平易な表現として広く使われています。
一方、「足らない」は動詞「足る」の否定形です。
「足る」は五段活用の動詞で、古くから使われている表現です。
「足る」は「語るに足る」など、文語調ややや硬い表現に用いられることが多い一方、否定形の「足らない」は現代でも使用される場面が少なくありません。
「時間が足らない」「経験が足らない」といった形で耳にすることも多く、口語では「足りない」とほぼ同じ意味で使われます。
全体として、「足りない」は現代的で汎用的な表現、「足らない」は少し古風ながらも親しみやすいニュアンスを含む表現と言えます。
どちらを選ぶかは、文脈や話し手の好みによりますが、いずれも意味的には誤りなく使うことが可能です。