慎むと謹むの違いとは?

日本語には「慎む」と「謹む」という、どちらも「つつしむ」と読む言葉がありますが、その意味や使い方は異なります。

同じ発音でも違う意味を持つこれらの言葉を正確に使い分けることは、特にビジネスやフォーマルな場面では重要です。

冠婚葬祭やビジネスシーンで見かける「慎む」と「謹む」。

一見すると似ていますが、どのように使い分けるべきか迷う人も多いでしょう。それぞれの意味を押さえて、状況に応じた使い方を確認しましょう。

「慎む」と「謹む」の意味

慎むは、自己管理や注意を促すときに使うのが適切です。謹むは、礼儀や感謝の意を表すための言葉で、対人関係におけるフォーマルな表現に向いています。

辞書の定義を参考に、2つの言葉の意味を見ていきます。

「慎む」について

意味

「慎む」には次のような意味があります。

軽率な行動を避け、注意深く振る舞うこと。
節度を守り、控えめに行動すること。
(古典的な意味として)神事などの際に身を清め、飲食や言動を慎むこと。

慎むを使った例文を紹介

言動に注意する場合

会議中は、不要な発言を慎むよう心掛けてください。

人前では、不用意な行動を慎むことが大切です。

些細な言葉でも相手を傷つけることがあるので、発言を慎む必要があります。

冗談が過ぎると誤解を招くことがあるので、態度を慎むべきだと思います。

子供たちに公共の場では騒ぎを慎むよう教えました。

控えめにする場合

健康診断の結果を受けて、食事の量を慎むことにしました。

最近体調が優れないので、飲酒を慎んでいます。

経済的な理由から、出費を慎む生活を送っています。

減量のために甘いものを慎む努力をしています。

年末年始の過ごし方として、無駄な外出を慎むことを決めました。

古典的・宗教的な文脈での使用

祭事の前には、特定の食材を口にすることを慎む習慣があります。

神事の期間中、俗世間の行動を慎むよう求められます。

『源氏物語』には、物忌みのために慎む姿が描かれています。

祈願成就のために、一定期間沐浴を行い、行動を慎むことがあります。

他者への注意や助言として

新しい環境では、初対面の人に対して言葉を慎むのが賢明です。

不必要な争いを避けるために、感情的な発言を慎んでください。

無用なトラブルを招かないよう、態度を慎むことが重要です。

学校で注意されたから、もう少し行動を慎んだほうがいいよ。

「謹む」について

意味

「謹む」には以下のような意味があります。

相手に対して敬意を払い、謙虚で礼儀正しい態度を取ること。

謹むを使った例文を紹介

お礼を伝える場面

この度はご助力を賜り、謹んで感謝申し上げます。

ご指導いただきましたことを謹んでお礼申し上げます。

温かいお心遣いに対し、謹んで御礼を申し上げます。

お詫びをする場面

このたびのご迷惑に対し、謹んでお詫び申し上げます。

過日の不手際について、謹んでお詫び申し上げます。

私の不注意によりご不快な思いをさせたことを、謹んでお詫びいたします。

挨拶や挨拶状での使用

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

謹啓、貴社ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。

謹んで春の訪れをお祝い申し上げます。

弔辞や哀悼の場面

ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。

故人のご冥福をお祈りするとともに、謹んで哀悼の意を表します。

この度のご不幸に際し、謹んでお悔やみ申し上げます。

フォーマルな場面での表現

謹んで申し上げますが、本日はこれにて失礼いたします。

貴重なご意見をいただきましたことに対し、謹んで感謝申し上げます。

弊社の取り組みをご紹介できる機会をいただき、謹んで御礼申し上げます。

まとめ

慎むと謹むはどちらも「つつしむ」と読む日本語の言葉ですが、その意味や使い方は異なります。

「慎む」は、自分や他者の行動を注意深く制御し、過剰や軽率な行為を避けることを指します。

例えば、「言葉を慎む」や「飲酒を慎む」のように、言動や生活習慣を控える、節度を保つ場面で用いられます。

また、古典的な意味として、神事の際に行動や飲食を慎むことで心身を清める意味も含まれています。対象は主に自分自身や他者の行動であり、日常的な文脈で頻繁に使われる言葉です。

一方、「謹む」は、相手に対して敬意を示し、謙虚で礼儀正しい態度を取ることを意味します。

「謹んでお礼申し上げます」や「謹んで哀悼の意を表します」など、フォーマルな挨拶や書面で用いられることが多いです。対象は相手であり、特に改まった場面や儀礼的な場面で使われます。

このように、「慎む」は自分の行動の制御に関する言葉であり、「謹む」は相手への敬意を示す言葉という違いがあります。用途や場面に応じて使い分けることが重要です。