遺跡と史跡の違いとは?

古代の遺産とは、昔の人々の活動が残された場所や、古い建物や歴史的な出来事があった場所など、広い意味で使われる言葉です。

その範囲は非常に広く、日本全国に46万カ所以上の遺跡があり、その中には3千カ所以上の貝塚、15万カ所以上の古墳や横穴墓が含まれています。

一方、歴史的な場所や建物、遺構を指すのが「史跡」です。

文化財保護法では、特に歴史的価値が高いと見なされ、国や地方自治体によって保護されるべきと認められた史跡が指定されます。

国が指定する史跡の数は1,694件で、貝塚遺跡の数よりも少ないです。

さらに、特に重要で日本文化の象徴とされる史跡は、特別史跡として指定されます。

現在、日本には61件の特別史跡が指定されています。

遺跡とはなにか?

遺跡(いせき)とは、過去の人々の活動の跡がまとまって地面に残っているもの、または個々の工作物、建築物、土木構造物の痕跡、施設の痕跡、またはこれらが集まって一つのまとまりとなっているものを指します。

具体的には、お互いに関連する遺構の集まりや、遺構とそれに関連する遺物が一つになって残っているものを指します。

かつては「遺蹟」とも表記されました。遺跡は考古学の主要な研究対象であり、特に考古遺跡と呼ばれることもあります。

遺跡には、住居跡や墳墓、貝塚、城跡など、土地と一体化していて動かせないものが遺構と呼ばれ、石器や土器、装飾品、獣骨、人骨など、動かせるものが遺物と呼ばれます。

言い換えれば、遺跡の不動産的な部分が遺構であり、動産的な部分が遺物です。

日本の考古学では、遺跡と遺構の区別が30年ほど前から始まりました。

日本では、文化財保護法に基づき、遺跡は一般的に「埋蔵文化財包蔵地」とも呼ばれます。

文化庁によると、貝塚や古墳、城跡、都城などの遺跡(埋蔵文化財包蔵地)は全国に約46万箇所存在し、年間約9000件の発掘調査が行われています。

遺物が散布している場合、遺跡(埋蔵文化財包蔵地)の存在が推定されますが、遺物が単独で発見された場合は通常、考古学的に有意な遺跡とは見なされません。

したがって、遺跡の本体を形成するのは遺構であり、遺構やその集合体を遺跡と呼ぶことがあります。

地表に遺物の散布が見られる場合、その性格がはっきりしない場合があります。

そのような場合、遺物散布地と呼ばれることがあります。

遺構がない場合、実際には重要な意味を持つかもしれませんが、土地が移動して遺物が散布した可能性もあるため、注意が必要です。このような場合、出土状況や土層観察によって、堆積土なのか客土なのかを判断する必要があります。

遺跡の種類と調査

過去の人々の活動が痕跡として残る場所が遺跡であり、その種類はその活動の性質によって分類されます。

人々が居住していた場所(集落遺跡、都市遺跡、貝塚)

祭祀が行われた場所(祭祀遺跡、配石遺跡)

宗教施設の跡(寺院、神社、神殿の遺跡)

物を生産した場所(製塩遺跡、製鉄遺跡、水田遺跡、窯跡)

道や港の跡(交通遺跡)

亡くなった人々の埋葬場所(墓地遺跡、古墳)

墓以外に埋められたものの跡(経塚、銅鐸埋納遺跡など)

軍事施設の跡(砦跡、城跡)

洪水対策の土手や排水路の跡(土塁・盛土、堀)

遺跡の調査によって、遺構や関連する遺物が確認され、発見された状況や他の類似事例との比較・検討を通じて、当時の文化や生活、社会の特徴、人々の価値観や世界観などが推定され、復元されます。

遺跡の分布調査や発掘調査、史跡保存事業などが行われた後、自治体や民間企業などがまとめた調査報告書が発行され、一般公開されます。

これらの報告書はかつては大学図書館や自治体の図書館、博物館などで閲覧できましたが、最近ではインターネットの普及により、データ化され無料で公開されるサイトが多く開設され、より多くの人々が広範囲かつ多様な資料にアクセスできるようになりました。

過去の人々の生活が残した痕跡が遺跡であり、その種類は様々です。

岩の洞窟や岩の陰など、過去の生活が堆積した場所(岩陰遺跡、洞窟)
動物を狩猟して解体した場所(キルサイト)
近現代の建築物や工作物の跡(近現代の遺跡)
岩陰遺跡では、しばしば壁画が見られ、先史時代の生活や考え方を知る手がかりになります。

近現代の遺跡は、歴史家や建築史家によって研究されることが一般的ですが、場合によっては文化財保護法に基づいて調査されることもあります。たとえば、第二次世界大戦の遺跡や被災施設などは、「戦争遺跡」として調査されることがあります。これらの遺跡は地下に埋蔵されていることもあり、必要に応じて発掘調査が行われます。

日本では、文化財保護法によって重要な遺跡が史跡や特別史跡として指定され、その他の遺跡についても適切な保護が行われるよう法律で定められています。しかし、緊急発掘調査が多いため、遺跡の保存についての懸念があります。

遺構のない遺跡

過去の人々の生活の痕跡が、遺跡として認められる場所が存在します。

遺構が顕著に現れない場合でも、岩陰遺跡や洞穴のような場所には、堆積層によって過去の人類の生活の痕跡が見られることがあります。

また、キルサイトと呼ばれる動物の狩猟や解体が行われた場所も、過去の人々の活動の痕跡が残っています。これらの場所では、建築物が存在しなくても岩陰や洞穴が住居として使用されていたことが分かるため、遺跡として認識されます。

キルサイトでは、動物の化石や狩猟に使用された石器などが発見されます。地元で発見された化石や遺物が、解体の痕跡がある場合や石器に使用痕がある場合には、キルサイトと認識され、遺跡として扱われます。

岩陰遺跡には、しばしば壁画が存在し、先史時代の人々の生活や価値観を知る手がかりとなります。

また、近現代の遺跡もあります。お互いに関連する近現代の建築物や土木構造物が集まっている場合、それらも遺跡として認識されます。このような場合、歴史家や建築史家が研究の対象とし、考古学者の役割は限定的です。

しかし、必要に応じて、近現代の工作物や建築物、土木構造物などを調査する場合もあります。

例えば、第二次世界大戦の戦争遺跡や地下に埋蔵された軍事施設などは、地表からはわからない場合もあります。そのような場合、発掘調査が行われ、遺跡として認識されます。

日本では、学術的に重要な遺跡については文化財保護法によって指定され、その他の遺跡についても民間開発の際には適切な手続きが求められます。

遺跡の調査や報告は、この法律に基づいて行われますが、現状保存の規定はありません。そのため、多くの場合、遺跡は保存されずに破壊されることがあります。

史跡とは

史跡(しせき、非常用漢字:史蹟)とは、貝塚や集落跡、城跡、古墳などの遺跡の中で、歴史的または学術的な価値が高いものを指します。

これらは国や自治体によって指定され、法的に保護されます。

一般的に、「史跡」という言葉は遺跡全般を指すことがありますが、日本では1919年に史蹟名勝天然紀念物保存法が制定されて以来、法律で指定保護される遺跡を特に指すようになりました。

現在、狭義の「史跡」は文化財の一種として規定されています。

日本の文化遺産保護制度における「史跡」は、記念物の一部であり、貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅などの遺跡のうち、歴史的または学術的に重要で保護が必要なものが国によって指定されます。

文化財保護法では、日本国にとって歴史的または学術的に重要な貝塚や古墳などの遺跡に対し、文部科学大臣が「史跡」と「特別史跡」として指定できると規定されています。

地方公共団体も、国の指定を受けていない遺跡に対し、「○○県史跡」や「○○町指定史跡」などの名称で指定します。

地方公共団体の制度は一般的に国の制度に準拠していますが、独自の考え方に基づいた制度も存在し、例えば東京都では「旧跡」、横浜市では「地域文化財」という名称が使用されます。

文化財とは

文化財とは、人類の歴史や文化を物語る遺物や場所のことです。その保存と保護は、人類の過去を理解し、未来に伝えるために極めて重要です。

文化財保護法によって指定される文化財は、貝塚、古墳、都城跡、旧宅など、学術的に価値が認められた遺跡のことです。

文化財の条件

文化財の指定条件には、学術的な価値の存在や国や地方自治体での認定が必要です。また、特に重要な文化財は「特別史跡」として指定されることもあります。

学術的価値の存在

文化財の指定条件の一つには、学術的な価値があります。これは、将来的にさらなる研究が可能であるという意味を持ちます。

国や地方自治体での認定

文化財は国や地方自治体によって認定されます。国では文部科学大臣が、「史跡」という名称で指定し、地方自治体では条例に基づいて指定されることが一般的です。

特別史跡

特に重要とされる文化財は、「特別史跡」として指定されます。これは、文化財保護法109条第2項によって定められています。

史跡と遺跡の違い

史跡と遺跡はしばしば混同されますが、法律での保護の有無が大きな違いです。遺跡は法的に保護されていないものの、貝塚や古墳など、当時の人々の生活の痕跡を示す重要な場所です。

世界の有名な遺跡

世界中には多くの有名な遺跡が存在します。その例を挙げると、

アンコールワット(カンボジア)
コロッセオ(イタリア)
マチュピチュの歴史保護区(ペルー)
フォロロマーノ(イタリア)

日本の有名な遺跡

また、日本にも多くの有名な遺跡があります。

岩宿遺跡(群馬県みどり市)
山内丸山遺跡(青森県青森市)
大森貝塚(東京都品川区、大田区)
吉野ケ里遺跡(佐賀県吉野ヶ里町)

史跡のようで史跡でないもの

史跡のように見えるものでも、実際には史跡ではないものも存在します。例えば、

宇地泊西原丘陵古墳群(沖縄県宜野湾市)
菊名貝塚(神奈川県横浜市)
津久井城(神奈川県相模原市)
庭園や橋梁、渓谷などの名勝地

さらに、庭園や橋梁、渓谷なども名勝地として指定されることがあります。

動物・植物・地質鉱物等の天然記念物

最後に、動植物や地質鉱物など自然に関連したものも、天然記念物として指定されることがあります。

まとめ

遺跡と史跡は、両方とも人類の歴史や文化を物語る場所や遺物を指しますが、いくつかの違いがあります。

遺跡

定義: 遺跡は、過去の人々の生活の痕跡が残された場所や遺物のことを指します。

特徴: 貝塚、古墳、集落跡、城跡などが含まれます。

法的保護: 一般的に、法律で直接的に保護されることはありません。

研究対象: 考古学や歴史学の研究対象として重要です。

代表的な遺跡: アンコールワット(カンボジア)、マチュピチュ(ペルー)、岩宿遺跡(日本)など。

史跡

定義: 史跡は、歴史的または学術的な価値の高い遺跡であり、国や自治体によって指定された文化財の一種です。

特徴: 貝塚、古墳、都城跡、旧宅などが含まれ、その歴史的・学術的価値が認められています。

法的保護: 文化財保護法によって直接的に保護されます。

研究対象: 歴史的・学術的価値が高く、国や地域社会の歴史や文化を理解するための重要な資料です。

代表的な史跡: 平城京跡(日本)、五稜郭痕(日本)、コロッセオ(イタリア)など。

両者は共通点もありますが、史跡はその歴史的・学術的価値が高いとして、法的に保護される一方、遺跡は法的保護はされないものの、重要な歴史的資料として研究の対象となります。