わけぎのぬたの主な伝承地域は、広島県の尾道市、三原市、呉市になります。主な材料として、わけぎ、白みそ、砂糖、酢、みりんです。
わけぎはユリ科に属し、ねぎとエシャロットの交配種で、独特の香りを持つ野菜です。
種子ではなく球根が分裂して増える性質があり、1つの球根が半年で50以上に増えることもあります。
この特徴から「子宝に恵まれる」とされ、桃の節句の縁起物として親しまれてきました。「分かれた葱(ねぎ)」を意味する名前がつけられたのも、この性質に由来します。
瀬戸内海沿岸は温暖な気候でわけぎ栽培に適しており、特に尾道市は国内でも生産量が最も多い地域です。
この地域で育ったわけぎは、クセがなく甘みと優しい香りが特徴です。大正時代からすでに産地として知られ、昭和初期には早出し栽培の技術が確立されました。
ビニールハウスの普及によって、厳寒期でも安定的な収穫が可能になり、現在では一年を通して生産が行われています。特に12月から3月にかけて市場で多く出回り、2月末から3月初旬のものが最も美味しいとされています。
「わけぎのぬた」は、ゆでたわけぎを白みそ、砂糖、酢、みりんで作るタレで和えた料理です。
辛子酢みそを加えることもあります。わけぎには、カルシウムや鉄分、ビタミンA、B2、Cが豊富に含まれるほか、硫化アリルが含まれ、食欲増進効果が期待できます。
一年中食べられるものの、2月末から3月上旬が特に旬です。関西では、桃の節句に子孫繁栄の象徴としてよく食べられます。
わけぎは3cm程度に切ってゆで、白みそをベースに砂糖、酢、みりんを混ぜたタレで和えます。
たこやあさり、油揚げ、練り物を加える家庭もあります。ぬた以外にも、炒め物や餃子、サラダ、卵焼きなど、さまざまな料理に活用されています。
学校給食では、郷土料理を学ぶ一環として「わけぎのぬた」が提供されています。
また、JA尾道市では新規栽培者を支援する講習会を開催しています。さらに、加工食品として「わけぎ餃子」を開発したり、消費地との交流イベントを行ったり、宿泊施設や飲食店にわけぎを取り入れたメニューを提案するなど、多様な普及活動を展開しています。
わけぎのぬたの材料と作り方
材料(4人分)
わけぎ:1束
ゆでだこ:40g
和え衣
白みそ:大さじ2
砂糖:大さじ2
酢:大さじ2
みりん:小さじ1
作り方
1:わけぎを3cmの長さに切る。
2:根元から順に熱湯でゆで、ざるに取り出して冷ました後、水気をしっかり絞る。
3:ゆでだこを一口サイズに切る。
4:【和え衣】の材料をすべて混ぜ合わせ、わけぎとたこを加えてよく和える。
わけぎについて紹介
わけぎは、ユリ科ネギ属の野菜で、ネギとエシャロットの交雑種とされています。
わけぎの特徴
外観と香り
青々とした葉と白い根元が特徴で、香りはネギに似ていますが、よりまろやかで優しい風味を持っています。
増え方
わけぎは種子を作らず、球根が分裂して増える性質があります。この特性から、1つの球根が短期間で多数に増えることができます。
由来
「分葱(わけぎ)」という名前は、「根元が分かれて増えるネギ」という意味からきています。
栽培環境
温暖な気候での栽培が適しており、日本では瀬戸内海沿岸の地域が主な産地です。特に広島県尾道市は全国的に生産量が多いことで知られています。
旬の時期
通年栽培されているものの、2月から3月にかけてが特に美味しい旬の時期とされています。
栄養価
ビタミン類:A、B2、Cが豊富で、免疫力向上や疲労回復に効果が期待されます。
ミネラル:カルシウムや鉄分を多く含み、骨の健康や貧血予防に役立ちます。
硫化アリル:ネギ類に共通する成分で、血行促進や食欲増進効果があります。
わけぎを使った料理
わけぎはその風味や食感が豊かで、さまざまな料理に活用できる食材です。以下に、わけぎを使った料理とその解説をいくつか紹介します。
わけぎのぬた
わけぎをゆでて、白みそ、砂糖、酢、みりんなどで作ったタレで和えるシンプルな料理です。特に関西地方で好まれ、桃の節句(ひな祭り)に食べることが多いです。わけぎのシャキシャキした食感と、甘酢っぱいタレの相性が絶妙です。
わけぎの炒め物
わけぎをベーコンや豚肉、きのこ類と一緒に炒める料理です。わけぎの甘みと香りが肉やきのこの旨みと絡み合い、風味豊かな一品に仕上がります。家庭料理として人気があり、さっと炒めるだけで美味しく仕上がるため、忙しい時にもぴったりです。
わけぎの卵焼き
わけぎを細かく刻んで、卵液に混ぜて焼く卵焼きです。わけぎの甘さと卵のまろやかさが調和し、ほっとする味わいになります。わけぎが加わることで、卵焼きに食感とアクセントが加わり、普段の卵焼きよりも深みのある味わいが楽しめます。
わけぎの餃子
わけぎを餃子の具に加えることで、さっぱりとした香りとシャキシャキ感が加わります。豚ひき肉やニラ、しょうがなどと一緒に包んで焼くことで、わけぎの風味がしっかりと引き立ちます。餃子を食べるときに新しい食感と香りが楽しめる、ちょっと変わり種の餃子です。
わけぎと豆腐のサラダ
わけぎを生で使ったサラダです。豆腐やきゅうりと一緒に和え、ごま油や醤油、みりんで味付けをします。わけぎのシャキシャキ感と豆腐の滑らかさが絶妙にマッチし、ヘルシーで軽やかなサラダになります。簡単に作れるので、夏の食欲がない時にもぴったりです。
わけぎの味噌汁
わけぎを味噌汁の具として使うと、だしの旨みとわけぎの風味が溶け込んで、やさしい味わいになります。わけぎは他の野菜と同様に、煮てもシャキシャキ感が残るため、食べ応えがあります。家庭的で、あたたかい食事としておすすめです。
わけぎのピクルス
わけぎを酢と砂糖で漬け込んだピクルスです。酢の酸味がわけぎの香りを引き立て、爽やかな味わいが楽しめます。唐辛子やにんにくを加えると、ピリッとしたアクセントが効いて、箸休めやおつまみとしても人気です。
わけぎと鶏肉の照り焼き
わけぎを鶏肉と一緒に照り焼きにする料理です。鶏肉のジューシーさとわけぎの甘さが相性抜群で、照り焼きソースが絡んだわけぎが食欲をそそります。シンプルですが、味わい深いメインディッシュになります。
わけぎときのこのスープ
わけぎときのこ(しめじや椎茸など)を使ったスープです。わけぎときのこがだしを吸い、旨みがしっかりとスープに染み込みます。軽い味付けでわけぎの風味を活かし、ヘルシーで体が温まる一品になります。
わけぎのリゾット
わけぎをリゾットの具として使う料理です。チーズやクリームで仕上げることで、まろやかでコクのあるリゾットにわけぎのアクセントが加わり、一味違った風味を楽しめます。イタリアンな気分を味わいたいときにおすすめの料理です。
わけぎはその独特の香りと食感を活かし、様々な料理に使うことができます。生で使うこともできますし、加熱しても美味しくいただけるため、炒め物やスープ、サラダ、和え物など、バリエーション豊かな料理に応用が利きます。特に旬の時期には、わけぎを使った料理をぜひ楽しんでみてください。
まとめ
わけぎのぬたは、広島県の郷土料理の一つで、特に尾道市や三原市、呉市などの地域で親しまれています。
この料理は、わけぎを主役にしたシンプルで美味しい和え物で、わけぎのシャキシャキとした食感と、甘酢っぱい味わいが特徴です。
わけぎはユリ科のネギ属に属する野菜で、ネギとエシャロットが交雑してできた品種です。
わけぎの特長は、通常のネギに比べて香りがまろやかで、味も甘みがあり、クセが少ないことです。
また、わけぎは球根が分裂して増えるため、春先に新鮮なものが出回ります。特に尾道はわけぎの生産量が多く、その優れた風味と食感が評価されています。
「わけぎのぬた」の作り方は非常に簡単で、まずわけぎを湯がいてから、白みそ、砂糖、酢、みりんを合わせたタレで和えます。
地域によっては、からし酢みそを使うこともあります。このタレがわけぎの味を引き立て、甘さと酸味のバランスが絶妙です。また、わけぎはカルシウムや鉄分、ビタミンA、B2、Cが豊富で、健康にも良い食材です。
「わけぎのぬた」は、特に春の訪れを感じさせる一品で、ひな祭り(桃の節句)などの行事食としても人気があります。
また、わけぎには「子宝に恵まれる」とされる縁起物の意味が込められており、お祝いの席で食されることも多いです。
この料理は、家庭で手軽に作れるため、地域の食文化としても長年親しまれています。