広島県の郷土料理ねぶとの唐揚げとは?

ねぶとの唐揚げの主な伝承地域は、広島県福山市です。主な材料は、ねぶと、片栗粉、油、塩になります。

「ねぶと」とは、瀬戸内海で獲れる3~5cmほどの小さな白身魚で、一般にはテンジクダイとして知られています。

この魚は頭が硬いため、「いしもち」や「いしかべり」といった呼び名もあります。

耳石という骨が発達しているため、頭を取り除いて食べるのが一般的です。

5月から9月に旬を迎えるこの魚は、広島県備後地域(三原市、尾道市、福山市)や岡山県笠岡市などで親しまれており、地元の漁師たちが選定した「備後フィッシュ」のひとつに数えられます。

「ねぶとの唐揚げ」は、ねぶとに片栗粉をまぶして揚げたシンプルな一品で、軽いスナック感覚で楽しめます。

おやつとしても、また酒のつまみとしても広く親しまれており、その香ばしい味わいが魅力です。2021年に福山市が開催した「福つまみ総選挙」では、「ねぶとの南蛮漬け」が4位にランクインし、その知名度と人気をさらに高めました。

ねぶとは5月から9月が美味しい時期で、この季節には唐揚げや天ぷら、南蛮漬けなどさまざまな料理で楽しまれます。

特に唐揚げは、子どもから大人まで好まれる一品で、手軽にスナックとして食べられるのが特徴です。

頭と内臓を除いて塩水で洗ったねぶとに片栗粉をまぶし、中温の油でカラリと揚げます。仕上げに塩をふりかけると、香ばしさが引き立ちます。

地元では「備後の地魚応援団」が主体となり、ねぶとを含む地魚の魅力を広める活動が行われています。

この団体は若い世代への伝承を目的に、ねぶとの新しい調理方法として「ネブカツ(テンジクダイのフライ)」を提案しています。

また、市内では「ねぶとふりかけ」や「ねぶとせんべい」といった商品化も進められており、小学校や幼稚園の給食でも提供されています。

さらに、「福つまみ総選挙」をはじめとするイベントやSNSを活用した広報活動を通じて、ねぶとの魅力が幅広い層に伝えられています。市内の飲食店やスーパーマーケットでも提供され、地域の味として愛されています。

ねぶとの唐揚げ 作り方と必要な材料

材料(4人分)

ねぶと(テンジクダイ):160g
塩:少々
小麦粉:適量
片栗粉:適量
揚げ油:適量

手順

1:ねぶとの頭を取り除き、塩水で丁寧に洗う。

2:小麦粉と片栗粉を同じ分量で混ぜ、ねぶとに薄くまぶす。

3:中温に熱した油で揚げる。

4:揚げたてのねぶとに塩を振りかけて仕上げる。

テンジクダイ(通称「ねぶと」)について紹介

テンジクダイ(学名: Apogon lineatus)は、スズキ目テンジクダイ科に属する小型の魚で、地域によって「ねぶと」や「いしもち」、「めぶと」など様々な名前で呼ばれています。

特に関西や広島・岡山の備後地方では「ねぶと」として知られています。

生息域と特徴

テンジクダイは主に日本を含む北西太平洋に分布し、北海道の噴火湾以南から台湾、中国、フィリピンにかけて広がっています。

この魚は内湾の砂泥底に生息し、水深100メートル付近の沖合を好むため、一般的には浅瀬や漁港付近ではあまり見られません。

大群で回遊していることが多く、特に東京湾では漁獲されることもありますが、普段の生活で目にする機会は少ない魚種です。

体長は最大で約10センチメートル。淡い黄色の体色に加え、体側には暗色の細い横帯が10本ほどあります。同じテンジクダイ科のネンブツダイに比べて地味な外見で、人々に知られることが少ない魚でもあります。

生態と習性

テンジクダイは夜行性で、親魚が口内で受精卵を保護する「マウスブルーディング」という特徴的な繁殖行動を持っています。この保護行動は主に雄が行うと考えられています。

食用としての利用

日本では底引き網漁で捕獲されることが多く、瀬戸内海や関西地方では食材として親しまれています。

テンジクダイは唐揚げや天ぷら、南蛮漬けとして調理されるほか、愛媛県では「じゃこ天」として加工されることもあります。その独特な風味と食感が地域の食文化に溶け込んでいます。

まとめ

ねぶとの唐揚げは、瀬戸内海沿岸地域、特に広島県や岡山県で親しまれる郷土料理の一つです。

「ねぶと」とは、テンジクダイ科の小型魚で、5月から9月に旬を迎える白身魚です。

この魚は頭が硬く、頭部を取り除いて調理するのが一般的です。地元では「備後フィッシュ」のひとつとしても選ばれ、特産品として親しまれています。

ねぶとの唐揚げは、シンプルながらも香ばしい味わいが特徴です。

下処理したねぶとに片栗粉をまぶし、中温の油でカラリと揚げることで、外はサクサク、中はふっくらした食感が楽しめます。

揚げたてに塩を振るだけで、素材の味を引き立てる一品になります。軽いスナック感覚で食べられるため、子どものおやつやお酒のつまみとして人気があります。また、天ぷらや南蛮漬けなど、唐揚げ以外の調理方法でも楽しまれています。

地域では「備後の地魚応援団」などの団体が、地元の魚食文化を次世代へ広める活動を行い、ねぶとの唐揚げもその一環として注目されています。

地元の飲食店やスーパーで手軽に購入できるほか、イベントや商品化を通じて認知度が向上し、地域を代表する味として広がりつつあります。