きなこむすびの主な地域は広島県の北広島町になります。主要食材は、米、きなこ、梅干し、煮豆、塩昆布です。
きなこむすびは、梅干しや細く切った塩昆布などを包み込んだ丸いおむすびに、きなこをたっぷりとまぶしたものです。
この料理は、田植え作業の合間や、作業の終わりを意味する広島の方言「代みて」の際に、ばら寿司や焼きさばのちしゃもみと一緒に食べられてきました。
丸く握るのは、秋に実る稲の苗が豊かに育つことを祈る意味が込められています。
中国地方では、太鼓や笛の音に合わせて大勢で田植えを行う「はやし田」や「田ばやし」といった行事が行われており、これらは中世から続く稲作の儀式であり、参加者の労をねぎらう意味も持っています。
特に北広島町の壬生では、「はやし田」が華やかな祭りとして知られ、装飾を施した牛や早乙女たちによる苗植えの光景が印象的です。
この行事の際には、今でも「きなこむすび」が振る舞われ、「さんばい」や「さんばい飯」とも呼ばれています。「さんばい」とは、田の神やおはやしの指揮者を意味します。
きなこむすびは、田植え作業の途中や、作業が終わることを意味する「代みて」の時期に食べられます。主に5月の終わりから6月の初めにかけての田植え時期に食べられます。
きなこむすびは、丸いおむすびの中に梅干しや細切りの塩昆布を入れ、きなこをたっぷりまぶします。
形は一般的に丸型ですが、「新庄のはやし田」では文化伝承の一環として、黒豆を混ぜた俵型のおむすびが提供されることもあります。田植え作業中でも食べやすいように、きなこをしっかりとまぶすことが大切です。
壬生の花田植は、かつて途絶えた時期もありましたが、地域の保存活動によって復活し、現在では国の重要無形民俗文化財やユネスコの無形文化遺産に登録されています。この行事とともに、「きなこむすび」を食べる習慣も引き継がれています。
きなこむすびのレシピと材料
材料(作りやすい分量)
白米:3合
きなこ:140~150g(市販のきなこ1袋分)
砂糖:90~105g(きなこの量やお好みに合わせて調整)
塩:ひとつまみ~小さじ2/3(塩を少し多めに入れると味が引き立ちます)
作り方
1:白米をいつも通りの水加減で炊きます。
2:大きな皿にきなこ、砂糖、塩を入れてよく混ぜます。
3:炊きたての白米をおひつやボウルに移し、少し冷まします。その後、丸い形におにぎりを握ります。
4:握ったおにぎりを2のきなこミックスに入れ、転がして全体にまぶします。
きな粉について紹介
きな粉(きなこ)は、大豆を炒めて皮をむき、挽いて粉状にしたものです。加熱することで、大豆特有の臭みがなくなり、香ばしい風味が引き立ちます。名前の由来は「黄なる粉」で、別名「黄な粉」とも書かれます。
実際にはすべてが黄色い粉ではなく、黄大豆を使ったきな粉は黄褐色、一方で青大豆を使ったものは淡い緑色になります。
そのため、「青きな粉」や「うぐいすきな粉」とも呼ばれることがあります。
きな粉を使った料理 きな粉は、餅にまぶして食べたり、和菓子の材料として使われます。
また、ご飯に砂糖を混ぜてふりかけとして食べることもあります。きな粉を使った和菓子には、州浜やきなこねじりがあります。
さらに、牛乳や豆乳に混ぜて飲むほか、アイスクリームの材料としても使用されるようになりました。
代表的なきな粉を使った食品として、安倍川もち、きな粉飴、わらびもち、ぼたもち、葛餅、鶯餅、桔梗信玄餅、二軒茶屋餅、こくせん、五家宝、きなこ棒等があります。
きな粉の栄養
きな粉は、豊富なタンパク質を含んでいます。また、大豆オリゴ糖が善玉菌を増やし、食物繊維も豊富で、便を軟化させる効果があるため、便秘解消に役立ちます。
粉末にすることで消化が良くなり、大豆の栄養素を効率よく摂取できます。
そのほかにも、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、鉄分などのミネラルも多く含まれています。
オリゴ糖の効果を高めるために、乳製品(特にヨーグルト)と一緒に摂るとより効果的です。このため、プロスポーツ選手が牛乳に溶かして飲むことが多くなっています。
また、2012年頃から健康食品ブームの一環で、黒豆を使ったきな粉が人気を集めています。
黒豆には抗酸化作用があるアントシアンが含まれており、活性酸素を吸収し還元する働きが期待されています。
しかし、ガンや糖尿病予防などの効果については、医学的な証拠はありません。最近では、黒ゴマや抹茶を加えたきな粉なども販売されています。
まとめ
きなこむすびは、広島県の伝統的な郷土料理の一つで、特に田植えの時期に食べられることが多いおむすびです。
主に白米にきなこをまぶし、梅干しや細切りの塩昆布を包み込んだ丸い形をしたおむすびです。
丸い形には、秋に実る稲の苗が豊かに育つことを願う意味が込められています。また、田植え作業の合間や、作業が終わる「代みて」の際に、地域の人々に振る舞われてきました。
この料理は、田植えにまつわる行事「はやし田」や「田ばやし」と深い関わりがあります。
これらの行事では、太鼓や笛を鳴らしながら大勢で田植えを行い、稲作の豊穣を祈る儀式として伝統的に行われてきました。
特に北広島町壬生の「はやし田」では、華やかな祭りとして知られており、この際に「きなこむすび」も食べられます。
現代では、これらの行事で食べられる「きなこむすび」は「さんばい」や「さんばい飯」とも呼ばれ、地元の人々に親しまれています。
きなこむすびは、シンプルながら栄養価が高く、特に食物繊維やタンパク質が豊富な大豆を使ったきなこが特徴です。
地域の伝統や季節の行事に密接に関わりながら、今もなお広島の食文化の一部として親しまれています。