黒田せりとほうれんそうのおひたしの主な伝承地域は松江市で、主な使用食材は黒田せりとほうれんそうになります。
黒田せりは、江戸時代から伝わる島根県松江市の郷土野菜で、「黒田」は、黒田町という古い地名に由来します。
黒田町一帯は沼地で、野生のせりが育っていました。松江藩主である松平宜維は、せりの品種改良を奨励し、本格的な栽培が始まりました。
この地域は清らかな水を供給する水源地であり、その環境がせりづくりを支えました。
収穫作業は厳寒期に行われ、非常に過酷でしたが、時代が進むにつれて作業が改善されました。
現在では、黒田せり農家は数軒にまで減少しています。黒田せりは独特の香りがあり、アクが少なく、食感が良いです。北大路魯山人から「日本一」と評され、多くの料理に活用されます。
特に、「黒田せりとほうれんそうのおひたし」は広く親しまれています。
収穫は11月から3月初めまで行われます。地元では「正月セリ」として風邪予防に食べられ、出荷のピークは年末から正月初めにかけてです。
松江市の冬の食卓では、黒田せりがおひたしや鍋などに使われ、健康野菜として愛されています。
黒田せりの独特の香りや風味、シャキシャキとした歯ごたえを楽しむには、和え物や椀物などのシンプルな料理が適しています。
ほうれん草との相性も良く、「黒田せりとほうれんそうのおひたし」は家庭料理として親しまれています。ほうれん草の割合を多めにすると良いでしょう。
せりは冷蔵保存で約1週間持ちます。せりが手に入らない場合は、三つ葉を代用することもできます。ゆでる際はシャキシャキ感が残るように注意し、鍋では煮過ぎないようにします。
黒田せりの生産量が減少しているため、ほとんどが県内で消費されています。松江市では伝統野菜の保護のため、新たな栽培者を育成する取り組みを進めています。
黒田せりとほうれんそうのおひたしの手順と材料
黒田せりとほうれんそうのおひたしの材料
黒田せり(市販のものでも可) 60g
ほうれんそう 140g
だし汁 90cc
みりん 15cc
淡口醤油 15cc
黒田せりとほうれんそうのおひたしのレシピ
1:せりとほうれん草の根を切り、軽く洗って4〜5cmに切る。
2:沸騰した湯に入れた鍋でせりとほうれん草をゆで、冷水または流水で粗熱を取り、水気を絞る。
3:出汁に調味料を混ぜ、せりとほうれん草を一晩漬ける。
黒田せりが手に入りにくい場合は市販のせりを代用しても構いません。
※レシピは地域や家庭によって異なることがあります。
黒田セリとは?
黒田セリの「黒田」とは、江戸時代の黒田村の地名に由来します。
明治39年に出版された「法吉名勝案内」には、「昔、大字黒田、未次の平地は宍道湖より続く一帯の沼沢にして、これに繁茂する野生の芹夛かりしを取りて栽培せしに始まり其期源凡そ今を距ること170余年以前に在り」と記されています。
さかのぼると、松江藩第5代藩主松平宜維の時代であり、宜維は有用植物の奨励をはかり、「宜維の助言により、野生種のセリを改良栽培し今日も黒田セリとして有名である。」とあります。
宝歴年間に著わされた「雲陽大数録」には、各地の名産として、薦津芹、岡本牛房、大井芹などが挙げられており、薦津芹が黒田芹のことと言われています。
島根県立農事試験場臨時要報第14号には、「小林金太郎、森善太郎両氏の祖先卒先して栽培を試みたり、然れども当時、他の農家は冬季厳寒の候水田に入りて採収するは生命を短縮するもの、として久しく両家の他栽培するものなかりしと云う」とあります。
藩政時代には、限られた栽培面積であり、一般に広まったのは明治維新以降とされています。
藩政時代のセリ栽培は、品種改良の努力に加え、収穫作業は非常に厳しいものでした。
地区内の大井戸から水を汲み、素手素足での作業が行われましたが、明治初期には木製の田靴、明治末期には空の肥桶が利用され、大正初期にはセリ田靴や湯沸かし桶が登場し、作業は楽になりました。ゴム製の長靴は昭和6年頃から使用され、近年まで湯沸桶を使いながらの作業が行われてきました。
おいしい食べ方としては、鍋に入れたり、ゆでてごま和えにしたりすることが主流です。セリは香りが良く、血液の流れを良くする効果があり、健康食品としても知られています。
まとめ
黒田せりとほうれんそうのおひたしは、島根県松江市の伝統的な郷土料理であり、地元の食文化を象徴する一品です。
黒田せりの特徴
黒田せりは、島根県松江市の伝統野菜であり、江戸時代から栽培されています。
松江藩第5代藩主である松平宜維の時代に、せりの品種改良が行われ、黒田せりとして栽培されるようになりました。
地元の生育環境や清らかな水が、せりの育成に適した条件を提供しています。
黒田せりはクセのある香りが特徴であり、アクが少なく、食感が良いです。
ほうれんそうの特徴
ほうれんそうも地元の食材であり、黒田せりと組み合わせておひたしにすることが一般的です。
栄養価が高く、ビタミンやミネラルが豊富であり、健康に良い食材として知られています。
おひたしの作り方
黒田せりとほうれんそうを洗って根を切り、適切な大きさに切る。
沸騰した湯でせりとほうれんそうをさっと茹で、冷水で粗熱を取ります。
出汁にみりんや淡口醤油を加え、一晩漬け込みます。
食べ方のアレンジ
黒田せりが手に入りにくい場合は市販のせりを代用しても構いません。
おひたし以外にも、鍋物に入れたり、ゴマ和えにしても美味しく食べることができます。
地域の食文化への貢献
黒田せりとほうれんそうのおひたしは、地域の食文化や伝統を守り、次世代に継承する大切な料理として位置付けられています。
地元の食材や伝統料理を活用することで、地域経済の活性化や観光の振興にも寄与しています。
黒田せりとほうれんそうのおひたしは、島根県松江市の郷土料理であり、地元の食文化や伝統を象徴する一品です。
地域の特産物である黒田せりやほうれんそうを使ったこの料理は、健康的で栄養価が高く、地域の食材や文化を大切にする姿勢を示しています。