広島県の郷土料理鯛そうめんとは?

鯛そうめんの主な地域は、広島県の瀬戸内海沿岸地域(尾道市、廿日市市など)になります。使用される主な材料は、真鯛、そうめん、木の芽、卵、しいたけです。

鯛そうめんは、茹でたそうめんを大皿に美しく波形に盛り付け、その上に煮た真鯛を丸ごと乗せ、彩りとして木の芽、きゅうり、錦糸卵、甘辛く煮たしいたけを添える料理です。

装飾として松の枝などが飾られることもあります。

この料理は、棟上げや長寿のお祝い、結婚式、新しい船の進水式などの特別な場で提供されるお祝いの定番料理として親しまれてきました。

真鯛は「めでたい」、そうめんは「長く続く」という意味が込められ、縁起の良い組み合わせとされています。招かれた人々は、真鯛の立派さや味わいを称え合い、その幸せがそうめんのように長く続くことを祈りながら楽しみます。

大皿から取り分ける際は、小皿に移し、鯛を煮た際にできた煮汁をかけていただきます。

薬味を加えることもできますが、シンプルに味わうことが一般的です。家庭では、真鯛以外にもメバルやイサキなどの魚を使うこともあり、行事の際は「鯛めん」、普段の食卓では「鯛そうめん」として呼び分けられます。

鯛を煮る際には崩れやすいため、わらや竹の皮を使って煮崩れを防ぐ工夫がされていました。この料理が生まれた背景には、瀬戸内海の豊かな海の幸があります。瀬戸内海は岩礁が多く、真鯛の産卵や生息に適した環境が整っており、古くから鯛漁が盛んでした。

棟上げや結婚式、長寿のお祝いなどのほか、盆や地域行事でも提供されることがありました。

特に、宮島の厳島神社で旧暦6月に行われる管絃祭では、地元の伝統的な料理として振る舞われることがあります。

しょうゆ、酒、みりん、砂糖などで味付けした鯛の姿煮を作り、大皿に波形に盛ったそうめんの上に乗せます。

付け合わせとして木の芽、錦糸卵、きゅうり、煮たしいたけなどが添えられます。鯛の煮汁をかけて味わうのが一般的です。

現在では、鯛めんを提供する飲食店もあり、地元の食文化として継承されています。また、地元の取り組みとして、尾道市では地元食材を活用したレシピ集の制作が行われており、その中でもこの料理が紹介されています。

このように、鯛そうめんは地域の文化や歴史を象徴する料理として、現代に至るまでその価値を伝え続けています。

鯛そうめんのレシピと材料

材料(4人分)

真鯛:1尾(約20cm)
そうめん:4束
木の芽:適量
卵:2個

調味液

水:1カップ
醤油:1/4カップ
酒:大さじ2
みりん:大さじ2

手順

1:真鯛のうろこと内臓を取り除き、丁寧に洗浄する。

2;【調味液】を鍋で沸騰させ、準備した真鯛を加え、崩れないように注意しながらじっくり煮る。

3:茹でたそうめんを大皿に波形に盛り付け、その上に煮込んだ真鯛を配置する(または、軽く焼いたり蒸したりした真鯛の身をほぐして乗せる方法でも良い)。

4:錦糸卵や木の芽などを添えて彩りよく仕上げる。

鯛について紹介

「タイ」は広くスズキ目タイ科の魚を指しますが、狭義ではその中のマダイを特に指すことが多いです。

日本ではタイは高級魚として知られています。タイ科にはマダイのほか、クロダイ、キダイ、チダイ、ヒレコダイ、タイワンダイなど多くの種類が含まれます。

また、分類上タイ科ではないものの、赤みを帯びた体色や白身を持つ魚には「○○ダイ」という名前が付けられることが多いです。例えば、アマダイ、キントキダイ、イシダイなどが挙げられます。

これらの魚はスズキ亜目に属していますが、エボシダイは別の亜目、キンメダイやアコウダイはさらに異なる分類に属しています。「タイ」の名が付いた魚は200種類以上存在すると言われています。

淡水魚のティラピアが「チカ鯛」や「イズミダイ」として販売されたこともあり、こうした命名は「縁起を担いだ名前」として揶揄されることもあります。

スズキ目の魚は知能が高いとされ、中でもイシダイは水族館でその存在感を示します。マダイの稚魚は好奇心が強く、ダイバーに近寄ってくることもあります。

地域と文化

千葉県ではタイ、愛媛県ではマダイがそれぞれ県の魚に指定されています。

また、ことわざには「海老で鯛を釣る」「腐っても鯛」など、タイが登場する表現が多く、タイが日本文化で特別視されていることが伺えます。「鯛やヒラメの舞い踊り」もその例です。

言葉の中のタイ

「タイ焼き」や「タイツリソウ(ケマンソウの別名)」など、タイに関連する言葉も多く、日本の暮らしや言葉に深く根付いています。

「鯛の鯛」と縁起物

タイの肩甲骨と烏口骨がつながった骨は「鯛の鯛」または「鯛中鯛」と呼ばれ、特にマダイのものは形が美しいとされて珍重されてきました。

この骨には金運をもたらすといった言い伝えもあり、縁起物として人気があります。また、「鯛の九つ道具」として他の特定の骨も含めて収集の対象になり、揃えると幸運や富が得られると言われています。

まとめ

鯛そうめんは、瀬戸内海沿岸地域で古くから親しまれている祝い料理で、特に広島県で有名です。

この料理は、茹でたそうめんを大皿に波形に美しく盛り、その上に煮付けた鯛を丸ごと載せ、木の芽、錦糸卵、きゅうり、甘辛く煮たしいたけなどを添えて彩り豊かに仕上げます。鯛の煮汁をかけながら食べるのが一般的で、シンプルながら鯛の旨味を存分に楽しむことができます。

鯛は「めでたい」という語呂合わせや、そうめんの細く長く続く形から縁起が良いとされ、結婚式、長寿のお祝い、新築の棟上げなど、特別な場で振る舞われてきました。

また、宮島の厳島神社に関連する伝統行事や盆の席でも提供されることがあります。

この料理には瀬戸内海の豊かな真鯛の漁獲が背景にあり、地域の海文化を象徴しています。

家庭では真鯛の代わりにメバルやイサキなどの魚を使うこともありますが、祝いの席では真鯛が用いられることが多いです。地域の伝統を今に伝える一品であり、近年では地元飲食店や観光の場でも提供されています