広島県の郷土料理鯛めしとは?

鯛めしの主な伝承地域は、広島県の福山市、尾道市、大崎上島町など、瀬戸内海沿岸のエリアになります。主な材料は、米、鯛、塩、だし汁になります。

瀬戸内海沿岸で親しまれてきた「鯛めし」は、鯛を丸ごと炊き込む独特の調理法が特徴の郷土料理です。

その起源は江戸時代に遡り、特に福山市の鞆の浦では、伝統的な鯛漁が地域の生活に根付いています。

真鯛が豊富に獲れる瀬戸内海は、古くから漁業が盛んで、一本釣りや網漁など様々な漁法が伝承されています。

中でも鞆の浦で行われていた「鯛しばり網漁法」は約380年前に始まり、現在も文化財として大切に守られています。

また、初夏には漁の体験イベントも行われており、地域の観光資源にもなっています。近年では「海洋牧場」や「港内飼い付け」といった技術を活用し、鯛の栽培漁業も盛んになっています。

この料理は一年中楽しむことができますが、特に3月から5月の鯛の旬には美味しさが際立ちます。

もともと漁師たちが作っていた料理ですが、今では飲食店で提供されることが主流です。

鯛は下処理をして丸ごと使用し、しょうゆや酒、みりん、塩で味付けをして米と一緒に炊き上げます。時にはごぼうやにんじんなどの野菜を加えることもあります。

福山市の鞆の浦を中心に、鯛料理を扱う飲食店が数多く立ち並び、地域の名物として広く知られています。学校給食での提供や、家庭で作りやすいレトルト製品の販売など、現代的な手法で保存と普及が進められています。

鯛めしのレシピと材料

材料(4人分)

お米:2合
水:450ml
鯛:1尾
にんじん:20g
ごぼう:20g

調味料

薄口しょうゆ:大さじ1
塩:小さじ1/3
酒:大さじ1
昆布:10cm四方
刻みのり:適量

作り方

1:鯛の下ごしらえ
鱗と内臓を丁寧に取り除き、きれいに洗います。

2:野菜の準備
にんじんは細切りに、ごぼうはささがきにして水にさらし、アクを抜きます。

3:炊飯の準備
洗ったお米に水と2で用意した野菜、調味料を加えます。鍋の底に昆布を敷き、その上に鯛をのせて炊きます。

4:仕上げ
炊きあがったら鯛の身をほぐして全体を混ぜます。

5:盛り付け
器に盛り付け、仕上げに刻みのりを乗せたら完成です。

瀬戸内海について紹介

瀬戸内海は、本州の西部、四国、九州に囲まれた日本最大の内海で、面積はおよそ23,203平方キロメートルに及びます。この海域は、閉鎖性水域の一つとして知られています。

700以上の島々が点在する多島海であり、海岸線の総延長は約7,230キロメートルにも達します。

海に面している県は、山口県、広島県、岡山県、兵庫県、大阪府、和歌山県、徳島県、香川県、愛媛県、大分県、福岡県で、これらの沿岸地域に住む人々の人口は2023年時点で約2,900万人、全国人口の4分の1を占めています。

この地域は「瀬戸内」とも呼ばれますが、その名称は「瀬戸の内海」を意味する瀬戸内海の名前とは直接関係していません。

古くから、近畿地方と九州を結ぶ西日本の主要な航路として利用されてきました。周辺の気候は瀬戸内海特有の穏やかで乾燥した気候が特徴で、雨が少なく温暖な環境が続きます。

瀬戸内海の東西の長さは約450キロメートル、南北は15~55キロメートルと幅広い範囲を持ちます。

平均水深は約38メートルで、最も深い地点では約105メートルに達します。この海域には数多くの島々があり、豊かな自然環境と生態系を誇ります。

19世紀には、日本を訪れた外国人たちからもその景観が絶賛されており、特にドイツの地理学者フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンが「世界に類を見ない美しさ」として紹介しました。

現在、瀬戸内海は瀬戸内海国立公園に指定され、美しい風景を求めて多くの人々が訪れる観光地となっています。

瀬戸内海の生物多様性

瀬戸内海には、多くの貴重な生物が生息しています。その中でも、天然記念物に指定されているカブトガニや、スナメリ、ハセイルカなどの海洋生物が知られています。

また、アユをはじめとする400~500種類以上の魚類が確認されています。特に広島県の有竜島ではナメクジウオが生息し、竹原市の高崎町阿波島周辺は「スナメリクジラ回遊海面」として登録されるなど、珍しい生物の保護が進められています。

ナメクジウオは昭和30年代の採砂事業の影響で一時姿を消しましたが、1990年代に再発見され、近年では保護活動の効果もあり徐々に回復傾向が見られています。

一方で、阿波島ではスナメリを利用したスズキ漁が行われていましたが、現在はスナメリの減少により廃止されています。スナメリは一時減少しましたが、最近では周防灘や伊予灘、大阪湾周辺で群れが確認されるなど、生息域の回復が期待されています。

鳥類ではカンムリウミスズメが注目されており、現在でも広範囲で観察可能です。

海底にはアマモの藻場が広がり、生態系の重要な一部を形成していますが、1960年代の広範な分布に比べて大幅に減少しました。それでも、芸予諸島には良好な藻場が残されています。

2015年には、新種のカタツムリ「アキラマイマイ」が発見されるなど、瀬戸内海では固有種の存在も明らかになっています。

また、ヤシマイシン近似種やセトウチイトカケといった希少な貝類も確認されており、特にナガシマツボやエタジマホンヤドカリなど新種として認定されたものも存在します。防予諸島ではニホンアワサンゴの群生地が発見されており、世界的にも重要な地域となっています。

大型生物の歴史

現在の瀬戸内海ではあまり見られませんが、かつては大型生物が数多く生息していました。

セミクジラやコククジラ、ナガスクジラ、ニホンアシカ、ニホンカワウソ、ウバザメ、ジンベイザメ、マンタ、マンボウなどの動物がこの海域に見られ、漁業や開発の影響を受ける前は豊かな海洋生態系を形成していました。これらの多くは現在では絶滅危惧種、または絶滅種とされています。

歴史的には、瀬戸内海ではクジラの回遊が一般的でした。例えば、関門海峡や豊後水道では大型鯨類が確認されており、広島県の「鯨島」などはその名残を示しています。

現在でもザトウクジラやカツオクジラが迷い込むことがあり、将来的には回遊が復活する可能性が指摘されています。また、近年ではハンドウイルカやミナミハンドウイルカが目撃されることもあります。

ニホンアシカやアカウミガメ、アオウミガメはかつて瀬戸内海でよく見られましたが、現在では激減しました。

それでも、アカウミガメは明石市沿岸などで産卵が確認されており、わずかながら生息が続いています。さらに、クロマグロや大型サメ類なども稀に目撃されるなど、瀬戸内海には今なお自然の多様性が息づいています。

まとめ

鯛めし(たいめし)は、日本料理の一つで、鯛を使った炊き込みご飯や混ぜご飯を指します。その地域や調理方法によって大きく二つのスタイルに分かれます。

一つ目は瀬戸内地方や愛媛県などで見られる「炊き込みタイプ」です。これは、鯛を丸ごと、または切り身を米と一緒に炊き込む方法で、鯛の旨味がご飯全体に染み込み、香ばしい風味を楽しめます。

調味料として、だし、醤油、みりんなどを加え、シンプルながら深い味わいが特徴です。鯛の骨も炊き込むことで、さらに豊かな風味が引き出されます。

二つ目は愛媛県宇和島地方を代表する「刺身タイプ」です。こちらは、新鮮な鯛の刺身を炊き立てのご飯にのせ、特製のたれをかけて食べるスタイルです。

たれには、だしや醤油、みりん、卵黄が使われることが多く、鯛の生の食感と濃厚なたれの相性が抜群です。

いずれのスタイルも、鯛の新鮮さと質が重要で、地域ごとの特産品を活かした一品として親しまれています。鯛めしはお祝い事や特別な日にふさわしい豪華な料理としても愛されています。