煮ごめの主な伝承地域は、広島県西部、特に府中町周辺になります。主な材料として、小豆、大根、にんじん、干ししいたけ、ごぼう、れんこん、里芋、油揚げ、こんにゃくがあります。
小豆や様々な野菜をさいの目に切り、一緒に煮込んだ料理で、だしや具材に肉や魚を使わない精進料理です。
この地域では昔から浄土真宗の信徒が多く、その影響が強く見られます。毎年1月16日は浄土真宗の開祖の命日にあたり、その前夜から行われる「御逮夜(おたんや)」に関連する料理として伝えられています。
起源としては、開祖が病床にあった際、弟子たちが身近にあった野菜と好物の小豆を煮込んで作った料理が由来と言われています。
その後、この料理は命日を迎える行事に欠かせない精進料理として定着しました。
特に御逮夜の期間中、漁業者は漁を休み、市場も閉まる「市止まり」という風習がありました。この習慣は江戸時代から長く続きましたが、平成に入って廃れています。
煮ごめは一度に多く作り、行事期間中は何度も温め直して食べられました。しょうゆを基調としたシンプルな味付けで、小豆が入る点が特徴的です。
1月16日を中心とした「御逮夜」の期間に食べられる行事食で、体を温めてから寺へ参拝するのが地域の習慣でした。また、行事の際には寺院でも参列者に振る舞われました。
現在、「おたんやの市止まり」で御逮夜に煮ごめを食べる習慣は薄れつつありますが、地域の伝統を守るため、学校給食のメニューに取り入れるなどの試みが行われています。
また、SNSを活用した情報発信や商品化など、現代的なアプローチによる保存活動も進められています。
煮ごめの作り方と必要な材料
材料(4人分)
小豆:50g
大根:1/4本(約250g)
ごぼう:1/2本(約75g)
にんじん:1/2本(約80g)
里芋:2個(約140g)
れんこん:100g
干ししいたけ:2~3枚(約6g)
油揚げ:1/2枚(約16g)
こんにゃく:1/2枚(約100g)
しょうゆ:50ml
砂糖:大さじ1/2
作り方
1:小豆の準備
前日に水に浸しておいた小豆を、軽くゆでておきます。
2:材料を切る
すべての材料を約1cmの角切りにします。
3:あく抜き
ごぼうとれんこんは水にさらしてあくを抜きます。
4:煮込み開始
鍋に里芋以外の材料をすべて入れ、たっぷりのだし汁(分量外)を加えて火にかけます。
5:アクを取る
煮ている間に出てくるアクを丁寧に取りながら、小豆がやわらかくなるまで煮込みます。
6:仕上げ
小豆が煮えたら、里芋、しょうゆ、砂糖を加え、味を調えながら煮詰めます。このとき、煮汁が多めに残る程度に仕上げ、薄めの味付けにすると良いです。
おたんやの市止まりについて紹介
おたんやの市止まりとは、浄土真宗の開祖である親鸞聖人の命日に合わせた伝統的な風習で、魚市場や肉市場が営業を休止し、漁業も一時停止されていた慣習です。
「おたんや」という名称は、本来「大逮夜(おおたいや)」と呼ばれていたものが訛ったもので、「逮夜」とは命日の前夜を意味します。
親鸞聖人が1月16日に亡くなったことから、1月15日の夜には特別なお勤めが行われ、「おたんや」として地域の行事となっていました。
広島県西部に位置する安芸地方では、浄土真宗を信仰する人々が多く、この時期には肉や魚を避けた精進料理「煮ごめ」が食されていました。
煮ごめは小豆、大根、にんじん、ごぼう、れんこんなどの根菜類や油揚げを小さく切り、だしを使わずに煮込んだ料理で、動物性の食材は一切使われません。
まとめ
煮ごめは、広島県西部を中心に伝わる精進料理で、主に浄土真宗の行事「御逮夜(おたんや)」の際に食べられてきた郷土料理です。
主な材料は、小豆、大根、にんじん、ごぼう、れんこん、里芋、油揚げ、干ししいたけ、こんにゃくなどで、すべての具材を小さく切り、だし汁で煮込みます。
特徴的なのは、動物性食材を一切使用しないことと、小豆が入る点です。味付けは主にしょうゆでシンプルに仕上げられ、素材の味を引き立てる優しい味わいが特徴です。
この料理は、親鸞聖人の命日にあたる1月16日を前にした「おたんや」の期間中に、地域の人々が精進を意識しながら食べる伝統がありました。
もともと親鸞聖人が病床にあった際、弟子たちが身近な材料で作った料理が起源とされています。
かつては、この期間中に魚市場や漁業が休業する「おたんやの市止まり」という風習もありましたが、1995年を最後に途絶えています。
現在では煮ごめを食べる習慣は減少しつつありますが、学校給食や地域行事で提供されるなど、伝統を守る取り組みが行われています。