小いわしの刺身の主な伝承地域は、広島県呉市音戸町、倉橋町になります。主な使用食材は小いわし、醤油、生姜です。
広島県で「小いわし」と呼ばれるのは、カタクチイワシのことです。
この地域では昔から親しまれてきた魚で、広島湾はプランクトンが豊富なため、大きく成長した小いわしが多く漁獲されます。
実際に、広島県で獲れる魚の約70%がカタクチイワシであると言われています(農林水産省「令和2年漁業・養殖業生産統計」より)。
漁法としては「いわし船びき網」が使われます。
この網の形状が男性の下着に似ていることから、地元では「パッチ網漁」とも呼ばれています。かつては、行商人が新鮮な小いわしを売り歩く光景がよく見られ、安価で美味しい庶民の味として親しまれてきました。
小いわしは水洗いすることでうろこが自然に落ち、独特の臭みも和らぎます。
刺身では醤油とおろし生姜を合わせていただくのが一般的で、その身の引き締まった美味しさは鯛にも匹敵するとされ、「鰯七度洗えば鯛の味」ということわざがあるほどです。
旬は6月から8月で、新鮮さが求められるため、漁場に近い広島では刺身用の小いわしが市場や鮮魚店に並びます。特に広島では、スプーンや荷造り用のテープ(PPバンド)を使って手早くさばく方法が一般的です。
刺身以外の食べ方としては、塩ゆでして乾燥させた「いりこ」や稚魚を加工した「ちりめん」も広く利用されています。いりこは主に西日本で出汁に使われることが多いです。
6月から8月が小いわしの旬で、梅雨に入るころにはスーパーや鮮魚店に並びます。この時期、多くの家庭で小いわしをさばき、様々な料理で楽しむ習慣があります。
広島では、小いわしを素早くさばくためにスプーンやPPバンドを使う人が多いです。
刺身としては醤油とおろし生姜で食べるのが主流ですが、天ぷらや、米ぬかを塗って焼く「ぬか焼き」といった調理法も親しまれています。
旬になると市場や鮮魚店に新鮮な小いわしが並び、広島の夏を象徴する存在として知られています。
また、この時期には飲食店でも提供され、地域の食文化として受け継がれています。SNSの活用や商品化など、現代的な手法も取り入れられています。
小いわし刺身の作り方と必要な材料
材料(2人分)
小いわし(カタクチイワシ) 1パック(約30匹)
生姜(すりおろし) 適量
塩 適量
作り方
1:新鮮な小いわしを選ぶ。
透明感のある目をしているものを選ぶと新鮮です。
2:塩水で洗う。
冷水に塩を加えて塩水を作り、小いわしをその中に入れます。優しく擦るようにして洗うと、鱗がある程度取れます。
3:スプーンで身を外す
小いわしの肩部分にスプーンを差し込み、背骨に沿わせるように滑らせて身を外します。
4:再度洗浄
冷やした塩水で小いわしを丁寧にすすぎ、残った鱗や内臓を取り除きます。
5:塩水を取り替える
使用した塩水を新しいものに替えて再び小いわしを洗います。
6:7回繰り返す
この洗浄を7回繰り返すことで、小いわし特有の臭みが取れ、鯛のような上品な味わいに仕上がります。
7:水気を取る
洗い終えた小いわしをキッチンペーパーで包み、しっかりと水気を拭き取ります。
8:盛り付け
お皿に盛り付けた小いわしに、お好みでおろし生姜を添え、完成です。
カタクチイワシについて紹介
カタクチイワシ(Engraulis japonicus)は、ニシン目カタクチイワシ科に属する魚で、いわゆるイワシの一種です。この魚は、人間の食文化だけでなく、海洋生態系においても重要な役割を果たしています。
カタクチイワシはマイワシやウルメイワシと同じ「イワシ」の仲間ですが、頭部の構造に特徴があります。
目が前方に寄っており、口は頭の下面に広がり、目の後ろまで大きく開くのが特徴です。この形状が名前の由来となっています。また、体は他のイワシよりも細長く、分類上もニシン科ではなくカタクチイワシ科に属します。
カタクチイワシは西太平洋を中心に広く分布しており、日本近海では北海道南部から九州まで、さらには台湾や中国沿岸にも生息しています。内湾や沿岸部で大きな群れを作り、海面近くを回遊する姿が見られます。
成魚は全長18cm程度まで成長し、体重は約45gになります。
細長い円筒形の体を持ち、背側は青灰色、腹側は銀白色です。鱗は剥がれやすい円鱗を持ち、漁獲時には鱗が取れることがよくあります。
沿岸部から沖合にかけて表層を泳ぎながら、植物プランクトンや動物プランクトンを口に含み、鰓で濾過して摂取します。天敵は多岐にわたり、海鳥やサメ、カツオ、クジラ、人間などが含まれます。
天敵から身を守るため、カタクチイワシは群れを形成し、同調して泳ぐことで捕食を回避します。一方、天敵は群れを分散させて狙いを定める戦略を取ります。
ほぼ一年中産卵しますが、春と秋に集中する傾向があります。卵は楕円形の浮遊卵で、水中を漂いながら発生が進みます。孵化した稚魚は急速に成長し、1年以内に繁殖可能になります。寿命は2~3年ほどです。
カタクチイワシの食用利用
カタクチイワシは日本国内で最も多く漁獲される魚の一つで、さまざまな形で利用されています。
生食: 鮮度の良いものは刺身として味わうことができます。特に新鮮なものは絶品とされますが、アニサキスのリスクがあるため注意が必要です。
干物: 煮干しやシラス干し、たたみいわしなど、多様な干物に加工されます。鮮度が仕上がりを左右するため、加工場では迅速な作業が求められます。
調味料: 魚醤や発酵食品の原料として利用されます。
郷土料理: 広島の小いわし料理や、長崎の「エタリの塩辛」など、地域ごとの名物として親しまれています。
その他: カツオ釣りの餌や農業用肥料としても活用されていますが、近年は漁獲量の減少により使用量が減っています。
広島では小いわし料理が牡蠣やお好み焼きと並ぶ名物料理として愛され、地域の食文化の一翼を担っています。また、加工品や伝統料理として全国で広く利用されていることも、この魚の重要性を物語っています。
まとめ
小いわしの刺身は、広島県を中心とした地域で親しまれている伝統的な料理です。
小いわしは、カタクチイワシのことを指し、広島湾では豊富なプランクトンを餌に育つため、大ぶりで脂がのった新鮮な個体が多く水揚げされます。
この新鮮な小いわしを刺身にすることで、独特の旨みとしっかり引き締まった身の食感を楽しむことができます。
刺身にする際には、まず小いわしを塩水で丁寧に洗い、鱗や内臓を取り除きます。
新鮮さが重要なため、漁場が近い広島ではスーパーや鮮魚店でも高鮮度のものが手に入ります。
洗浄を数回繰り返すと、魚の臭みが取り除かれ、さらに美味しく仕上がります。「鰯七度洗えば鯛の味」という言葉があるほど、丁寧な処理が味を引き立てるポイントです。
薬味には生姜をすりおろしたものがよく使われ、醤油でシンプルに味わいます。
小いわしの旬は6月から8月で、脂がのり、最も美味しい時期です。刺身の他にも、天ぷらや塩焼きなど様々な料理に使われますが、刺身はその鮮度をダイレクトに味わえる特別な一品です。