広島県の郷土料理八寸とは?

八寸の伝承地域は、広島県の熊野町や安芸高田市を中心とした地域になります。主な材料として、鶏肉、魚のあら、里芋、れんこん、にんじん、大根、ごぼう、干ししいたけ、こんにゃく、豆腐、厚揚げです・

八寸は、山の幸と海の幸を取り入れた煮物で、広島県西部の浄土真宗が盛んな地域で特に親しまれてきました。

名前の由来としては、盛り付けに使う漆器が直径約24センチ(八寸)である説や、8種類以上の材料を使うことに由来する説があります。「お八寸」と呼ばれることもあります。

昔は、祭りや正月、法事など多くの人が集まる行事の際、魚屋を招いて刺身を準備する風習があり、その際に魚のあらと自家製の野菜を煮込んだ料理が「八寸」の起源とされています。

祝儀や不祝儀によって具材や器の使い方に違いがあり、例えば祝いの席では奇数の具材を使い朱色の器を使用し、葬儀や法事では偶数の具材を黒い器に盛り、動物性の食材を避ける場合があるなどの工夫がされています。

なお、会席料理や懐石料理における「八寸」とは異なり、広島の郷土料理としての「八寸」は独自の調理法と文化を持ちます。

同地域で伝わる「煮ごめ」とも比較されますが、「煮ごめ」は精進料理で小豆を使用するのに対し、「八寸」では鶏肉や魚介を加え、小豆を使わないのが特徴です。

かつては冠婚葬祭や正月など人が集まる機会に振る舞われることが多かったものの、近年は家庭での行事が減少したこともあり、正月以外ではあまり作られなくなっています。ただし、特に高齢者のいる家庭では今も作られることがあります。

八寸の作り方は、鶏肉や干ししいたけ(戻したもの)、れんこん、こんにゃく、ごぼう、にんじん、里芋などを適当な大きさに切り、下処理を行います。それらを鍋で炒め、水、しょうゆ、酒、みりん、砂糖で味付けし、あくを取りながら煮込みます。

地域のイベントや学校給食で提供されるなど、伝統の保存や次世代への継承が図られています。また、SNSを通じた情報発信や商品化の取り組みも見られます。

八寸の作り方と必要な材料

材料(4人分)

鶏もも肉:200g
干ししいたけ:3枚
ごぼう:30g
れんこん:100g
にんじん:50g
こんにゃく:50g
厚揚げ:50g
里芋:3個
きぬさや:8枚
水:400ml

調味料

しょうゆ:40ml
酒:大さじ3
砂糖:大さじ2
みりん:大さじ3

作り方

1:下ごしらえをする
鶏もも肉を食べやすいサイズに切り、下味として酒(分量外)をふる。
干ししいたけは水で戻し、れんこんと一緒にいちょう切りにする。
こんにゃくは乱切りし、下ゆでして臭みを取る。
ごぼうは乱切りにして水にさらし、あく抜きする。
にんじんは乱切り、里芋は一口大に切り、下ゆでしてぬめりを取る。
厚揚げは熱湯で油抜きしてから食べやすい大きさに切る。
きぬさやは塩ゆでしておく。

2:煮込む
鍋に油を熱し、1で準備した材料(きぬさや以外)を軽く炒める。
水と調味料を加え、最初は強火で煮る。沸騰したら中火にし、あくを取りながら煮含める。
仕上げにきぬさやを散らして彩りを添える。

これで完成です。

懐石料理と郷土料理の八寸の違いとは?

懐石料理の「八寸」と広島県の郷土料理「八寸」は、名前は同じですが、その内容や役割、背景には大きな違いがあります。

懐石料理の「八寸」の特徴

懐石料理や会席料理で提供される料理の一種。

主に酒の肴(つまみ)として提供される料理で、動物性と植物性の食材を組み合わせた2~3品が盛り付けられる。

懐石料理の「八寸」由来

元々は直径八寸(約24cm)の木製の折敷(おしき)という器に盛られたことに由来します。

懐石料理の「八寸」内容

季節感を大切にした軽い料理。

盛り付けが芸術的で、料理そのものが目でも楽しむ要素として重要。

主に前菜として提供されることが多く、「前八寸」とも呼ばれる。

懐石料理の「八寸」文化的背景

茶道の影響を受けた繊細で儀礼的な食文化の一部。

広島県の郷土料理「八寸」の特徴

広島県西部地方で親しまれる伝統的な煮物料理。

冠婚葬祭やお正月などの特別な場面で振る舞われる家庭料理。

広島県の郷土料理「八寸」由来

直径八寸(約24cm)の器を使ったこと、または8種類以上の多様な具材を使うことから名付けられたとされます。

広島県の郷土料理「八寸」内容

鶏肉や魚のあらと、里芋やごぼう、こんにゃくなど山海の食材を煮込む素朴な料理。

葬儀や法事では動物性食材を避けるなど、用途によって具材や器の色(朱色、黒)を使い分ける。

広島県の郷土料理「八寸」文化的背景

地元の豊かな自然や食材を生かした実用的で温かみのある料理。

家族や地域のつながりを重視する文化を反映。

まとめ

広島県の郷土料理「八寸」は、山の幸と海の幸を組み合わせた煮物料理で、主に広島県西部の熊野町や安芸高田市で伝承されています。

名前の由来は、八寸(約24センチ)の器を使うことや、多種類の食材を用いることに由来するとされています。

かつては祭りや正月、法事など冠婚葬祭の際に、家族や地域の人々が集まる場で振る舞われる特別な料理でした。

具材には鶏肉や魚のあら、里芋、ごぼう、こんにゃく、干ししいたけ、にんじん、厚揚げなどが使われ、しょうゆや酒、みりん、砂糖で味付けします。

具材や器には用途に応じた決まりがあり、例えば祝いの席では具材を奇数にし朱色の器を用いる一方、葬儀では偶数の具材を黒い器に盛るなどのルールが存在します。

この料理は、地域の豊かな自然や食文化を反映しており、山海の食材を活用した素朴ながらも手間のかかった一品です。

近年では家庭での冠婚葬祭が減少したことから、正月以外で作られる機会は少なくなっていますが、地元のイベントや学校給食で提供されるなど、伝統の保存や次世代への継承が進められています。