雹と霰は、空から降る氷の粒ですが、大きな違いがあります。
ひょうは直径5mm以上の大きな粒を指し、一方、霰は直径5mm未満のものです。
1917年に現在の熊谷市に降った直径29.6cmのものが世界最大の雹とされています。
霰には、「雪あられ」と「氷あられ」の2つの種類があります。
氷あられは、ひょうと同じ原理で発生する直径5mm未満のもので、ひょうと雪あられでは発生メカニズムに違いがあります。
ひょうは、積乱雲などの不安定な層の中で形成された氷の塊が落ちてくるものです。
一方、雪あられは、雪に少量の水滴が付着し、白色で不透明で柔らかい粒として降ります。氷あられは、白色半透明または不透明で硬い氷の粒で、気温が0度より高い時に積乱雲から降り始めることが多いです。
雹とは?
雹とは、積乱雲から降る氷の粒で、直径5ミリメートル以上の球状や塊状をしています。落下する雹は衝撃を与え、人や農作物、家畜、建物などに被害を及ぼすことがあります。
これらは、対流のある積乱雲の中で発生し、強い上昇気流によって支えられますが、大きくなりすぎたり気流が弱まると落下します。通常、強い雷と共に現れます。
氷霰と雹は、どちらも透明または半透明の氷の粒で、大きく成長したものが雹とされます。大きさによって分けられ、直径5 mm未満のものは霰と呼ばれます。
雹の大きさは、通常5 mmから50 mm程度で、頻繁には10 mm以下です。
しかし、まれに大きなものが降ることもあり、また大きな雹同士が融合して不規則な形状の塊を形成することもあります。
大きな雹の落下速度は50 km/h以上であり、5 cm以上の巨大な雹には100 km/hにも達するものがあります。
雹が降る際には、小さなものでもパタパタ、パラパラと音を立てます。
大量に降った場合、雨と混じって非常に大きな音を発し、周囲の音をかき消すこともあります。
雹の降下時間は通常短く、15分を超えることはまれです。
その範囲は一般的に数キロメートル幅で、長さは約10 km程度ですが、稀に100 km以上に広がることもあります。
雹が発生するのは、高度が約6,000 mを超えるような発達した積乱雲です。
どの積乱雲が雹に発展するかはまだ研究途中ですが、上昇流と下降流が分離して持続するスーパーセル型の雷雨では特に強い雹が発生しやすいことが知られています。
雹の成長と層構造
雹は、強い上昇気流を持つ雲の中で、0℃以下の層と0℃以上の層(融解層)を行き来しながら成長します。
0℃以下の層では、過冷却の水滴(雲粒)が多く存在し、これに大きな氷晶が通過すると周囲の粒を捕捉して成長します。
一方、0℃以上の層では、氷塊の表面が融解して膜状に付着し、再び凍結すると透明な氷の層となります。
雹を断面で観察すると、透明な層と半透明な層が交互に重なる層構造が見られます。
この構造から、雹の成長過程を推測することができます。しかし、時には透明・不透明な氷のみで構成されたものもあります。
半透明な部分は、低温下で雹の核に雲粒が付着し、すぐに凍結して空気が残る状態です。
透明な部分は、比較的高い温度で雲粒が融解し、空気が抜けた後に凍結します。これらの成長過程は、乾燥成長と湿潤成長と呼ばれます。
雹の核は通常、数mmから1cm程度で、ほとんどが中心からずれています(偏芯)。
積層は5層以下が一般的ですが、巨大な雹では20層以上も観察されることがあります。
雹の密度は比較的大きく、0.85 g/cm3から0.92 g/cm3程度です。空気を多く含む場合は、やや低い値になります。
積乱雲付近に乾燥した空気が流入すると、蒸発による冷却効果が増大し、雹の発生と成長が容易になります。
気温が-30℃を下回るような低温層では、過冷却水滴が少なく、雹の成長はほとんどありません。
世界で記録されている最大の雹は、1917年に埼玉県熊谷市に降った29.6cmの雹で、その重さは3.4kgでした。
また、アメリカ合衆国ネブラスカ州では2003年に直径17.8cmの雹が降りました。
雹が積もる珍しい事例もあります。2019年には、メキシコのグアダラハラでは最大2mもの雹が積もり、丘陵地帯では50台以上の車が氷の濁流に押し流されました。
雹と気候・季節
雷雨は熱帯地域で最も頻繁ですが、雹の発生は中緯度の内陸部で最も多い傾向があります。
これは、熱帯地域では高い高度まで暖かい空気があるためと考えられ、雹は主に標高の高い地域で見られます。雹の発生には、気温0℃の高度が3,500mまたは4,000m以下であることが重要です。
山岳地域では平地よりも雹が多い傾向があります。
これは、地形的な上昇気流が雷雲の形成に貢献することや、標高が高いため地表に達するまでの時間が短いことが原因です。インドやバングラデシュの山岳地帯は雹の被害が多く、中国のチベット高原やアルプス、ピレネー山脈も雹の多い地域です。
中国内陸部やヨーロッパの一部地域では雹の被害がよく報告されています。
北アメリカでは、ロッキー山脈周辺が雹の多い地域であり、アメリカのコロラド州やネブラスカ州、ワイオミング州は特に雹の多い地域として知られています。
雹の発生頻度は地域によって異なりますが、世界的な分布を示す資料もあります。
ただし、これらのデータは緻密な観測に基づいているわけではなく、地域によっては報告件数が偏っている可能性があります。地中海周辺部では秋に雹が最も多い地域もあります。
中緯度地域では、雷雨の頻度と共に夏に雹が多くなる傾向があります。日本では、盛夏の8月よりも初夏の5月から6月にかけて雹が多い傾向があります。
また、日本海側では冬季にも季節風による積乱雲が発生し、雹が降ることがあります。
雹による被害
雹が降ることによる被害を雹害と呼びます。雹が落ちると、樹木の葉や農作物が傷つけられ、建物や自動車も特に屋根や窓ガラスが損傷しやすくなります。
強風と組み合わさって雹が傾いて落ちると、被害の状況が変わることもあります。屋外にいる動物も怪我を負ったり死亡したりすることがあります。
雹が大きい場合、人間も怪我をし、大きな雹が直撃すると致命傷になることもあります。
屋内に避難し、窓から離れることが安全策とされます。金属製の屋根の車内も比較的安全です。
雹害は局地的な現象であり、雲の通過経路に沿って被害が残ることがあります。
農作物は、雹が直接当たることによる被害の他に、時間が経ってから病気が広がることもあります。
果樹や一部の野菜は特に被害が多い傾向がありますが、水稲や根菜類は被害が比較的少ないです。
雹害を予防するためには、防雹ネットと呼ばれる網を使用する方法があります。これは果樹園やビニールハウスで使われ、特に棚仕立ての果樹に効果的です。
日本では、5月から8月にかけて関東地方や甲信地方、東北地方で雹害が多い傾向があります。特に関東地方や長野県などの農業地帯や山間部で、雹が多く降る地域があります。
例えば、東京都のあきる野市と八王子市の境に位置する雹留山がその一例です。
雹の大きさによって被害の程度が異なります。直径5mmの雹ではほとんど被害はありませんが、5mmを超えると植物に被害を与えることがあります。
20〜30mmでは農作物に深刻な被害が出ますし、自動車の車体塗装にも傷がつきます。
直径が40〜60mmになると、建物の瓦やガラスが破損し、人間も怪我をする危険が高まります。
最大直径が75〜100mmを超えると、人間が重傷を負ったり致命的な傷を負う可能性があります。
英語圏では、激しい雹を”hail storm(雹嵐)”と呼びます。
霰とは?
霰(あられ)とは、雲から降る直径5ミリメートル(mm)未満の氷の粒です。雪霰と氷霰の2種類があります。
雪霰(雪あられ、ゆきあられ)は白くて不透明な氷の粒で、形は球状や半円錐状です。
直径は2 mmから5 mmほどで、地面に落ちると跳ね返りやすく、割れやすい特徴があります。
覆われた氷の粒子の中心には氷晶があり、周囲の粒子は急速に凍結します。雪霰は隙間が多く、密度は0.8未満です。主に地表の気温が0℃前後のときに降り、雪と一緒に降ることがあります。
氷霰(氷あられ、こおりあられ)は半透明の氷の粒で、形は球状ですが、時には半円錐状の尖った部分があります。
直径は5 mmほどで、時にはそれ以上の大きさになります(その場合は雹と区別されます)。
地面に落ちると音を立てて跳ね返り、雪霰よりも密度が高く滑らかな表面を持ちます。
氷霰は全体または一部が薄い氷の殻で覆われています。隙間が比較的少なく、密度は0.8を超えることがあります。
氷霰は雪霰が雹に成長する過程にあり、強い上昇気流のある積乱雲や発達した積雲から降ることが多いです。
霰の観測と記録
天気予報では、雪霰は雪、氷霰は雨として扱われますが、実際には霰が降っても観測上は霰として記録され、雪や雨とは異なります。
積雪計は、霰を含む固形降水の深さを測定しますが、固形降水の判別は行わず、実際には雪が降っていなくても降雪や積雪が記録されることがあります。
日本では、気象庁の管区気象台などでは霰や雹、凍雨などの大気現象を目視観測し、記録しています。
自動気象観測装置では、天気の雨雪判別のみで、霰などの記録は行われていません。これは、機械による天気の自動判別が難しいためです。
国際気象通報式では、降水の強度や種類に応じて報告され、氷霰は特定の記号で示されます。
航空気象の通報式では、降水現象の欄であられを表す記号が用いられます。
霰の観測は、結晶表面に凍った霧の粒が付着していることが多く、小粒の霰を観測するのは困難です。
低温用のSEMを用いれば、結晶の表面を明確に観測できますが、霰は雪と異なり、複数の結晶形状が混在しているため、規則正しい結晶構造は観測されません。
まとめ
雹と霰は、どちらも大気中で形成される氷の粒子であり、降水現象の一種ですが、いくつかの違いがあります。
雹(ひょう)
直径が5ミリメートル以上の球状や塊状の氷の粒子である。
対流雲中で発生し、強い上昇気流に支えられている間に成長し、やがて地上に落下する。
主に積乱雲やスーパーセル型の雷雲から発生する。
落下速度が速く、大きな被害をもたらす可能性がある。
霰(あられ)
直径が5ミリメートル未満の氷の粒子である。
雲中の氷晶や氷の結晶核に付着した水滴が凍結して形成される。
雪霰と氷霰に分類され、それぞれの形態や特徴がある。
通常、積乱雲や寒冷前線によって形成される。
まとめると、雹は比較的大きな球状や塊状の氷の粒子であり、強い上昇気流によって形成されるのに対し、霰はより小さな氷の粒子であり、雲中の氷晶や氷の結晶核に付着した水滴が凍結して形成されます。
両者とも降水現象であり、天候や気象条件によって発生しますが、雹の方がより大きな被害をもたらす可能性が高いとされています。