「汽水湖」と呼ばれる、海水と淡水の中間の湖沼があります。
その中の1つが、島根県と鳥取県にまたがる「中海(なかうみ)」です。中海では、赤貝がよく知られています。
これは「サルボウガイ」と呼ばれ、一般的なアカガイとは異なります。見た目は似ていますが、サルボウガイの殻には約32本の溝があり、アカガイの殻には約42本の溝があります。
古事記には、皮をはがれた因幡の白兎の傷を癒したのがこの赤貝だとされています。
昭和30年代まで、中海は赤貝の最大の産地でした。しかし、干拓事業や水質の悪化などの影響で水揚げ量が減少し、昭和50年代には出荷が途絶えるほどまで追い込まれました。
平成10年代には養殖事業が進み、平成25年に出荷が再開されました。
正月料理の定番としても親しまれています。
昔は、赤貝漁は中海の漁師たちの冬と春の主な仕事でした。庶民は赤貝を食べるのを楽しみにしており、大根島の漁師が毎日売りに来るほどでした。
昭和30年代には、1000トン以上の水揚げがありましたが、干拓事業や汚水のせいで一時期漁ができなくなりました。近年は資源再生の取り組みが行われ、再び食べられるようになっています。
鍋に水、酒、醤油、砂糖などを入れ、煮立ったら赤貝を加えます。
赤貝が開いて味が馴染んだら食べごろです。火の通り過ぎには注意し、手早く調理することが大切です。また、直火で焼いても美味しく食べられます。
中海に面する松江市の観光施設では、赤貝の煮付けや酒蒸しを提供しています。
また、出荷基準外の貝を使った加工品も開発され、炊き込みごはんやうま煮が商品化されています。
赤貝のがらん蒸しの作り方と材料
赤貝がらん蒸しの材料(2人分)
赤貝(サルボウガイ) 250g
出汁 400cc
みりん 40cc
淡口醤油 40cc
赤貝がらん蒸しの作り方
1:赤貝をこすりながら洗います。
2:鍋にみりん、出汁、醤油を加えて沸騰させ、その後赤貝をすべて入れ、蓋をして再び沸騰したら蓋を取り、ゆすってみりんと出汁が混ざるようにし、再び蓋をして火を消し、30秒ほど置きます。
3:蓋を取り、開いた赤貝を箸で取り出します。
4:煮汁は汚れるので、一緒にお皿に取りません。
※レシピは地域や家庭によって異なる場合があります。
赤貝の特徴と生息環境について
赤貝(学名Anadara broughtonii、英名Bloody clam)は、フネガイ目フネガイ科に属する二枚貝の一種です。
主に内湾の潮間帯や浅海の砂泥底に生息し、殻には約42本前後の放射肋があります。
赤貝は、血液が赤いのが特徴で、これが名前の由来です。血液中にA型肝炎ウイルスを保有する個体がいるため、多くの国々で赤貝の輸入が禁止されています。
成体の殻長は約12cmで、約42から43本の放射肋を持ちます。
主な分布域はピョートル大帝湾から黄海にかけての地域で、日本、朝鮮半島、中国、台湾、極東ロシアの水深0から60mの砂泥底に生息します。
食用としては、寿司や刺身に主に利用されます。日本の市場で販売されている「赤貝の缶詰」には、サルボウガイ(Anadara kagoshimensis)が使用されています。
しかし、生食する場合はA型肝炎ウイルスのリスクがあるため、加熱処理が不十分な場合は避けるべきです。
歴史的には、『古事記』において、赤貝の殻の粉が薬として用いられた記録があります。
また、赤貝の殻粉を蛤汁に混ぜて火傷に塗布するなど、食用だけでなく医薬品としても利用されていました。
まとめ
赤貝のがらん蒸しは、日本の島根県やその周辺地域で親しまれている伝統的な料理です。以下に赤貝のがらん蒸しについてまとめます。
調理方法
赤貝を殻のまま蒸す料理であり、シンプルながらも素材の旨みを活かした調理法です。
赤貝を丁寧に洗い、蒸し器や鍋などにみりんや出汁、醤油などの調味料を加えて火にかけます。赤貝を加え、蓋をして蒸し、火を止めてからしばらく蒸らします。
主な材料
赤貝(サルボウガイ)が主な材料です。
出汁やみりん、醤油などが調味料として使用されます。
特徴
赤貝の鮮味と旨みが凝縮された、繊細で風味豊かな料理です。
蒸し上がった赤貝は、やわらかくてジューシーであり、調味料との相性も良いです。
食べ方
蒸し上がった赤貝は、殻から取り出して食べます。調味料の香りと赤貝の風味が口いっぱいに広がります。
通常は箸やスプーンで食べますが、直接殻から食べることもあります。
地域性
島根県やその周辺地域で特に親しまれていますが、日本全国の一部地域でも楽しむことができます。
地域ごとに微妙な味の違いや調理法の変化が見られることもあります。
保存と継承
地域の伝統料理として大切にされ、各家庭や料理店で受け継がれています。
観光地やイベントなどで、地域の特産品として提供されることもあります。
赤貝のがらん蒸しは、地域の風土や素材を活かした伝統料理であり、その繊細な味わいと歴史的な背景から、多くの人々に愛されています。