広島県の郷土料理あなご飯とは?

あなご飯の伝承地域は広島県廿日市市宮島町と広島市になります。主な材料は、あなご、ご飯、しょうゆ、みりんです。

あなごをかば焼きにしてそぎ切りにし、だしで炊いたご飯の上に載せた料理です。

蒸したあなごを使う場合もあります。

宮島町や広島市はあなごの漁獲が多く、古くから食されてきました。

江戸時代文政期の『芸藩通史』には、「阿奈吾(アナゴ)」が地元の魚として記載されています。

廿日市市の大野瀬戸周辺は潮流が速く、この地域のあなごは脂が乗り、風味と柔らかさに優れ、「瀬戸のあなご」として親しまれています。

うなぎよりも脂が少なくさっぱりとした味わいで、ビタミンAを多く含むため、夏バテ予防や疲れ目に効果があるとされています。

あなごは昼間は岩陰に隠れて過ごし、夜になると活動を始める夜行性の魚ですが、産卵場所や生態には不明な点が多く、養殖は行われていません。

あなご飯は、山陽鉄道開通後の明治34年に宮島口駅近くで駅弁として販売されたのが始まりです。

昭和30年代には観光客や修学旅行生の間で「バス弁」として人気を博し、その後、宮島周辺の飲食店で提供されるようになりました。現在では宮島名物として、参拝者の食事やお土産として広く知られています。

あなご飯は年間を通じて親しまれますが、特に7月から8月や、脂がのる11月が美味しいとされています。

もともとは駅弁として販売されていましたが、現在では宮島参拝の際の名物料理やお土産として人気があります。

あなごの内臓と骨を取り除き、しょうゆ、みりん、酒を使ってかば焼きにします。その後、そぎ切りにしたものをだしで炊いたご飯の上に並べます。

お好みで刻みのりを加えることもあります。その他にも、巻き寿司やばら寿司、照り焼き、白焼き、天ぷら、煮物、みそ汁、しゃぶしゃぶ、雑煮、茶わん蒸しなど、多様な調理法で楽しめます。地域によっては刺身としても食されています。

宮島周辺には多くの飲食店があり、店ごとに異なる味わいや調理法が楽しめます。

参拝時の食事やお土産として人気があり、お取り寄せでも楽しむことができます。また、給食にも登場するなど、地元に深く根付いた料理です。

あなご飯の作り方と材料

材料(4人前)

米:3カップ(約480g)
だし昆布:10cm四方
あなご:4尾
甘酢しょうが:40g
刻みのり:適量

【調味料A】しょうゆ:大さじ1弱
【調味料A】酒:大さじ1
【調味料A】塩:小さじ1/2
【調味料B】しょうゆ:大さじ3
【調味料B】酒:大さじ3
【調味料B】みりん:大さじ3

作り方

1:米を洗い、だし昆布と【調味料A】を加えて、通常通りに炊きます。

2:あなごの内臓と骨を取り除き、【調味料B】を塗りながら焼き上げます。

3:炊きあがったご飯を器に盛り、焼いたあなごを3cm幅に切ってご飯の上に並べ、残ったタレをかけます。

4:最後に甘酢しょうがと刻みのりを乗せて完成です。

あなご飯の由来と歴史

宮島周辺の海域では、昔からあなごが豊富に漁獲され、地域の人々に親しまれてきました。

宮島周辺は、瀬戸内海の中でも潮流が特に速く、この環境で育つあなごは風味が良く柔らかさに優れているため、「瀬戸のアナゴ」として高く評価されていました。

江戸時代1825年(文政8年)に編纂された『芸藩通志』にも、アナゴが地元の特産品として紹介されています。

明治時代中頃、米商を営んでいた上野他人吉が、宮島口駅近くに茶店を開き、そこで地元の漁師たちに親しまれていた「あなごどんぶり」にヒントを得て、あなごのアラで炊いたご飯を用いた醤油味の「あなごめし」を考案しました。

この料理は評判となり、1897年(明治30年)に山陽鉄道の宮嶋駅(現・宮島口駅)が開通すると、他人吉は駅弁として「あなごめし」を販売し始めました。1901年(明治34年)に宮島口駅で提供されたこの駅弁が、あなご飯の元祖とされています。

その後、あなご飯は山陽本線沿線で人気となり、昭和30年代には観光や修学旅行のバスで宮島口を訪れる人々に「バス弁」として知られるようになりました。

NHKがその様子を取材・放送したことで、更に注目を集め、他の飲食店でもあなご飯の提供が始まり、広島の名物料理として定着していきました。今では、宮島参拝の際の食事やお土産として、全国的に知られた一品となっています。

2017年時点で、宮島口には4軒、宮島には12軒のあなご飯を提供する店があり、それぞれの店で少しずつ異なる味を楽しめます。

元祖「あなごめしうえの」は、駅弁の種類を増やすことなく、創業時からの「あなごめし弁当」一本にこだわり続けています。

昔は地御前で一本釣りで獲れたあなごを直接漁師から仕入れていたそうです。

同店の「あなごめし弁当」は、駅弁の大会で日本一に選ばれた実績もあり、各地の駅弁イベントでも注目されています。この駅弁は、宮島口駅の他、広島駅、三原駅、岡山駅、高松駅、今治駅、姫路駅などで販売されたことがあります。また、姫路駅では明治21年創業の「まねき食品」が、昭和時代から「あなごめし」を提供しています。

まとめ

あなご飯(あなごめし)は、主に広島県の宮島周辺で親しまれている郷土料理で、あなご(穴子)を使ったご飯料理です。

この料理は、あなごをタレで焼き上げてからご飯の上に載せたシンプルながらも味わい深い一品です。宮島名物として知られており、地元の特産品や観光客に人気のあるお土産品にもなっています。

歴史と起源

あなご飯の起源は、1901年(明治34年)に遡ります。宮島口にある駅前で、上野他人吉(うえの たにきち)が経営する茶店で、あなご飯が駅弁として販売されたのが始まりとされています。

宮島の玄関口である宮島口駅(当時の宮嶋駅)の開業とともに、宮島参拝に訪れる人々への駅弁として人気が広がり、次第に名物料理となりました。

地域の背景

宮島周辺は、潮の流れが速い瀬戸内海に面しており、このため育ったあなごは風味が良く、脂が乗って柔らかいのが特徴です。この地域のあなごは「瀬戸のアナゴ」として珍重され、長く地元の人々に愛されてきました。

現在では、あなご飯は宮島周辺を訪れる観光客にとって、欠かせない名物料理です。

宮島口や宮島本島には、あなご飯を提供する飲食店が多数あり、それぞれが独自の味わいや調理法を提供しています。また、駅弁としても人気で、広島駅や宮島口駅などで購入することができます。

あなご飯は、地元の伝統と素材の良さを生かした料理であり、その歴史とともに地域の文化に深く根ざした一品です。