イギス豆腐の主要な伝承地域は、広島県内では三原市、尾道市、大崎上島町、呉市などです。主な材料として、イギス、きな粉状の大豆粉、だし汁、大葉、みょうが、味噌、酢があります。
イギス豆腐は、海藻のイギスと大豆粉を煮詰め、寒天のように固めた伝統的な料理である。
寒天やところてんと同じ原理で、凝固剤を使わず自然に固まるのが特徴。
特にお盆や祭りなど、人が集う行事で頻繁に作られ、夏の家庭料理としても親しまれてきた。地域や家庭によって具材や味付けに違いがあり、冷やして食べるのが一般的である。
イギスは「えごのり」とも呼ばれる海藻で、赤茶色をした糸状の形状が特徴。
春から夏にかけて浅瀬に漂着するものを採取し、洗浄と乾燥を繰り返して保存される。
古くから健康食品として知られ、低カロリーで食物繊維やミネラルが豊富で、長寿を支える食材として重宝されてきた。
飛鳥時代には朝廷に献上された記録があるとされるが、近年では採取量が減少し希少な食材となりつつある。同様の料理は、鳥取県や愛媛県、新潟県など他県でも見られる。
昭和30年代頃までは、お盆や祭りなど親族が集まる際に頻繁に作られていた。特に暑い夏の時期に多く食べられていた地域がある。
乾燥させたイギスを丁寧に洗い、大豆粉とともに水で溶かして煮詰める。その後、四角い容器に流し込んで冷やし固め、適当な大きさに切り分けて食べる。
具材を加えないシンプルなもののほか、人参やごぼう、海老を混ぜたり、米ぬか水を加えるアレンジもある。食べる際には、酢味噌やいりこ味噌、たで味噌、柚子味噌、しょうが醤油などをつけて楽しむ。
道の駅や産直市場で販売されているが、イギスの収穫量減少に伴い、作る家庭は減少傾向にある。それでも一部では家庭で作る文化が残り、地域での保存活動や商品化など、現代的な取り組みが進められている。
イギス豆腐の作り方と必要な材料
材料(4人分)
イギス:12g
だし汁(1回目):2と1/2カップ
大豆粉:80g
だし汁(2回目):2/3カップ
大葉:4枚
みょうが:2個
調味料
白味噌:大さじ2
酢:大さじ1
砂糖:大さじ1
作り方
1:イギスを戻す
イギスを水で戻して軽く絞り、だし汁(1回目)に入れて煮溶かす。完全に溶けたら、だし汁(2回目)と混ぜた大豆粉を加え、焦げないように注意しながら約2分間煮る。
2:冷やし固める
煮たものを型に流し入れ、冷やして固める。
3:盛り付ける
固まったものを器に盛り付け、調味料を合わせて酢味噌を作る。大葉やみょうがを添えて完成。
いぎす草について紹介
いぎすは、鳥取県中部地方で親しまれている伝統料理である。いぎす草という海藻(テングサの一種)を煮溶かし、容器に流し込んで固めたもので、その見た目は羊羹に似ている。
鳥取県中部の地域では、乾燥させた「いぎす草」がスーパーマーケットで販売されることもあるが、県内の東部や西部、また島根県ではあまり食べられていない。
このいぎす草は、古くは飛鳥時代や奈良時代に献上品として朝廷にも届けられたと伝えられている。主に夏から秋にかけて成長し、鳥取県の中部や西部の漁港で収穫される。採取された海藻は、夏の日差しの下で乾燥させ、何度も水洗いや天日干しを繰り返した後に保存される。
いぎす草は、寒天やところてんと同じように、凝固剤を使わなくても自然に固まる性質がある。そのため、いぎす草を煮溶かして固めた郷土料理は、鳥取だけでなく全国各地にも存在する。例えば、愛媛県の「いぎす豆腐」、北陸地方や佐渡島での「いごねり」、福岡県の「おきゅうと」などが挙げられる。
いぎすは、正月や祭り、節句、冠婚葬祭といった特別な行事で提供されることが多い。食べ方としては、酢味噌や辛子醤油、生姜醤油をかけたり、ゴマを振りかけて食べるのが一般的だが、ドレッシングや黒蜜を使ったアレンジもある。
なお、いぎすそのものにはほのかな磯の香りがあるものの、味自体はほとんどなく、使用する調味料や添え物の風味がそのまま味わいとなる。
まとめ
イギス豆腐は、イギスと呼ばれる海藻を使った日本の伝統料理で、特に瀬戸内地方や鳥取県中部地域で親しまれています。
イギスはテングサの一種で、夏から秋にかけて収穫される赤茶色の海藻です。この海藻を煮溶かし、大豆粉やだし汁と混ぜ合わせたものを冷やして固めることで作られます。
凝固剤を使用せず、寒天やところてんと同じ原理で自然に固まるのが特徴です。
イギス豆腐は、低カロリーで食物繊維やミネラルが豊富で、健康的な食品として古くから親しまれています。
味自体はほとんどなく、酢味噌や醤油、しょうがなどの調味料をつけて食べることで、さっぱりとした味わいを楽しめます。地域や家庭ごとに具材や味付けが異なり、人参や海老を加えるアレンジも見られます。
かつてはお盆や祭り、冠婚葬祭などで頻繁に作られ、家族や親戚が集う場での定番料理でしたが、近年ではその文化も減少しつつあります。
それでも、一部の地域では家庭で手作りされるほか、道の駅などで販売されることもあり、地域の伝統料理として継承されています。