いもぼたの主な伝承地域は鳥取県の弓浜半島です。主な材料は、さつまいも、もち米、あんこになります。
いもぼたは、弓浜半島で昔から親しまれてきた郷土料理で、さつまいもを使ったぼたもちです。
この地域は砂地が多く、米作りには適さない土地でしたが、江戸時代の中頃、井戸平左衛門が薩摩国からさつまいもの種芋を取り寄せたことがきっかけで、さつまいもの栽培が広まりました。
明治時代に入ると、さつまいもが主要な作物となり、もち米の代わりにさつまいもを使ったぼたもちが誕生しました。
見た目は普通のぼたもちに似ていますが、あんこの間からほんのり黄色いさつまいもが見え、食べるとさつまいもの甘みが広がります。
かつては日常の食事やおやつとして親しまれていましたが、現在では作る家庭が減少しているようです。特に秋から冬にかけて、さつまいもの収穫時期に多く作られ、近所に配られることもありました。
各家庭でさつまいもともち米の割合が異なるため、食感や甘みの違いが楽しめます。
いもぼたの調理法は、さつまいもを切って炊飯器に敷き、その上にもち米をのせて炊きます。
炊き上がったら、熱いうちに砂糖と塩を加えてつぶし、丸めます。お正月のもちの残りとさつまいもを使うこともあります。
最近では、きな粉や青のり、あんこなどをまぶして色付けし、アレンジされた「三色いもぼた」も作られるようになっています。
鳥取県ではさつまいもの栽培面積と収穫量が時代とともに減少してきましたが、健康食品として再評価され、弓浜地域では新たなアレンジ料理や加工品が生まれています。
「浜かんしょ」という名称で親しまれるこの地域のさつまいもは、家庭だけでなく学校給食にも取り入れられています。また、米子市内の子ども園や放課後児童クラブでも「いもぼた」が提供されるなど、地域全体で伝統を守り続けています。
いもぼたのレシピと材料
材料(15~18個分)
さつまいも:600g
もち米:200g
水:200ml
砂糖:50g
塩:ひとつまみ
きな粉:適量
青のり:適量
あんこ:適量
作り方
1:さつまいもを5mmの厚さに輪切りし、水にしばらく浸けておく。
2:もち米は洗ってから30分以上水に浸し、ザルにあげて水気を切る。
3:炊飯器にさつまいもを敷き、その上にもち米を広げ、水を加えて炊く。
4:炊き上がったら10分ほど蒸らし、熱いうちに砂糖と塩を加えて、すりこぎでつぶす。15~18個に分けて丸める。
5:最後に、お好みできな粉、青のり、あんこをまぶす。
※地域や家庭ごとに異なるレシピもあります。
鳥取県の弓ヶ浜半島について紹介
弓ヶ浜半島は、本州の日本海沿岸に位置し、鳥取県の西端に伸びる細長い半島です。別名として弓浜半島や夜見ヶ浜半島、五里ヶ浜半島とも呼ばれています。
この半島は、美保湾と中海を隔てる約17kmの長さと約4kmの幅を持ち、中国山地から流れる日野川が運ぶ土砂や潮流の影響で形成されました。
主に日本海側に広がる砂洲ですが、中海側は砂洲とは異なり、全体的に標高が低く山もほとんどありません。
海岸沿いには護岸工事や干拓によって人工的な部分も多い一方で、半島の付け根付近には自然の砂浜が残り、弓ヶ浜海岸や夜見ヶ浜として知られています。
さらに、境水道によって中海と日本海が結ばれており、付近には台場公園や検潮所があります。
観光業
この地域には、山陰地方で初めて鉄道が開通した境線が通っており、境港市が漫画家・水木しげるの出身地であることから、妖怪をテーマにしたラッピング列車が運行されています。
境港駅からは「水木しげるロード」が延び、特別な住民票や消印が発行されるなど、観光資源を活用した地域振興が行われています。さらに、米子空港には「米子鬼太郎空港」という愛称も付けられ、観光客を惹きつけています。
また、米子市側には皆生温泉があり、塩化物泉で知られるこの温泉地は、鳥取県全体の温泉水の約4分の1を占めるほどの湧出量を誇ります。
皆生温泉付近の海岸は「皆生温泉海遊ビーチ」としても知られていますが、1985年に建設された離岸堤によって海岸浸食を防いでいます。
半島には国道431号が通り、弓ヶ浜展望パーキングエリアも設置されています。防風林として松が植えられたこの地域は、「白砂青松100選」に選ばれています。また、米子市側の中海側には米子城跡や米子水鳥公園などもあります。
歴史
古くは「夜見島」として島だったとされ、日野川の土砂が堆積して現在の半島が形成されました。
平安時代にはすでに弓ヶ浜半島が存在していた記録があり、戦国時代には尼子氏や毛利氏などの争奪の舞台にもなりました。江戸時代に入ると、北前船の寄港地として繁栄し、漁業も盛んでした。
また、農業用水の確保が困難だったこの地域では、1700年に米村所平の提案で用水路が建設され、米川と名付けられました。
この水路は、米作だけでなく、木綿の生産を支え、弓浜絣という特産品が発展しました。
しかし、明治以降、外国産の安価な木綿の輸入により、木綿産業は衰退し、代わりに桑の栽培と養蚕が主流となりましたが、戦争の影響で養蚕も終焉を迎えました。
20世紀に入ると、皆生温泉が開湯されましたが、海岸侵食や鳥取県西部地震による液状化現象に悩まされました。それでも、この地域の発展は続き、現在も観光業や農業が重要な役割を果たしています。
まとめ
「いもぼた」とは、主に鳥取県弓浜半島で伝統的に作られている郷土料理です。さつまいもを使ったぼたもちで、地域の食文化に深く根付いています。
主要な材料はさつまいも、もち米、あんこです。さつまいもは甘みがあり、もち米と組み合わせることで、独特の風味が生まれます。
いもぼたの見た目は一見すると通常のぼたもちに似ていますが、さつまいもを使用しているため、中身が黄色みを帯びています。あんこの隙間からさつまいもが見えることがあります。
またぼたもち特有のもち米の存在感よりも、さつまいもの甘みが強調され、ふわっとした食感が楽しめます。
地域での伝統が続けられており、現代的なアレンジや加工品としても人気があります。鳥取県のさつまいもは「浜かんしょ」と呼ばれ、家庭や学校給食でも利用されています。また、地域の子ども園や放課後児童クラブなどでも「いもぼた」が提供されています。
「いもぼた」は、地域の文化や食生活を伝える重要な料理であり、鳥取県の郷土料理として親しまれています