服の入れ替えを行う季節の変わり目は天候も不安定であり、あまり早いと寒い日が戻って体調を崩す可能性もあります。また、洗濯や服のしまい方にも気を使う必要があります。
では、具体的に服の入れ替えはいつがベストなのでしょうか。今回は服の入れ替えにまつわる歴史も踏まえて解説します。
通常、1年に2回、春と秋に服の入れ替えが行われます。具体的な時期はいつがベストなのでしょうか。アンケート調査の結果と歴史的な背景を考慮して説明します。
一般的には6月1日と10月1日
日本が四季に恵まれているため、服の入れ替えが一般的な習慣と言えますが、最近では春と秋の期間が短くなり、夏服から冬服へ、冬服から夏服への入れ替えが主流になっています。
もともと、服の入れ替えの時期は冬服から夏服へは6月1日、夏服から冬服へは10月1日に行われることが慣習でした。
これは、学校の制服の入れ替えがこの時期に合わせて行われていることに由来しています。ただし、最近では5月や11月に、2週間から1ヶ月ほどの移行期間を設けている学校も増えているようです。
会社でも、クールビズなどネクタイを外す時期を、通常の6月よりも5月に早めるところが増えているかもしれません。
ただ、近年は、地球温暖化の影響か、夏の入れ替えが早まる傾向があります。
日本は南北に広がっており、地域によって気候が異なります。そのため、実際の入れ替えは各地域に合った時期に行うのが良いでしょう。
夏の入れ替えに関しては、最高気温が20度を超える日が続き始めたときが適切とされており、地域や年によっては4月の時点で20度を超えることもあります。
衣替えの由来と歴史
服の入れ替えの習慣は、いつごろどのように始まったのか。歴史的な背景と共に、その由来を見ていきましょう。
平安時代に中国から伝わる
衣の入れ替え習慣は、遠い古代から中世にかけて始まりました。平安時代の宮中で、中国の慣習に倣い、旧暦の4月1日と10月1日に夏服と冬服を着替えることが定められました。これを「更衣(こうい)」と呼びました。
しかし、女官たちが天皇の着替えを担当する更衣という職名もあり、後に女官で女御(にょうご)に次ぐ者を指すようになったため、一般では「更衣」と呼ばずに「衣替え」と呼ぶようになりました。
季節ごとの入れ替えは、衣服だけでなく、女房が持つ扇も冬は桧扇(ひおうぎ=ヒノキ製)、夏は蝙蝠(かわほり=紙と竹製の扇)というように、他の道具にも影響を与えていました。
最初はこの行事を「更衣(こうい)」と呼んでいましたが、女官の着替えの役割も更衣であったため、行事については「衣替え(衣更え)」と呼ばれるようになりました。
今でも「更衣」という言葉が残っているのは、その名残りでしょう。
これが平安時代に日本に伝わり、4月と10月に行われるようになったとされています。
江戸時代は年4回
平安時代に2回だった服の入れ替えは、江戸時代になると幕府の命令により武士の間で年4回行われるようになりました。
武士の制服は、旧暦の4月1日から5月4日が袷(あわせ=裏地がついた着物)、5月5日から8月末日が帷子(かたびら=裏地のない着物)、9月1日から9月8日が袷、9月9日から翌年3月末日が綿入れ(表布と裏布の間に綿を入れた着物)とされ、一般庶民もこれに従いました。
明治以降は年2回
明治時代になると、和服から洋服への移行が進み、洋服も夏物と冬物が出るようになりました。
また、明治政府は洋服を役人・軍人・警察官の制服に指定し、夏服と冬服の衣替えの時期も規定しました。
役人や警察官、軍人の制服も洋装化し、衣替えの時期は新暦の6月1日と10月1日に定められました。
1873年(明治6年)1月1日から新暦(太陽暦)が採用され、太陽暦の6月1日から9月30日が夏服、10月1日から翌年5月31日が冬服と定められました。
これが学生服にも広まり、徐々に一般の人々にも浸透し、官公庁・企業・学校が毎年6月1日と10月1日に衣替えを行う習慣が確立されました。
学校制度の拡充とともに、学生の制服にも採用され、現在では企業も衣替えを行うようになっています。
衣替えの意義
衣替えは家族全員の服を洗濯し、入れ替え、保管するなど手間がかかりますが、その手間をかける理由はいくつかあります。
一つには、服のメンテナンスと合理的な収納が挙げられます。衣替えは、夏場の薄手の服から冬の厚手の服への移行であり、その際に服を洗濯してメンテナンスする良い機会です。
また、要らない服を処分できる機会でもあり、洋服を長持ちさせる効果があります。
衣替えの日本文化的な側面
服の入れ替えには、合理的な側面だけでなく、文化的な要素も含まれています。
一斉に洋服を切り替えることで、季節の変化をより身近に感じることができます。
また、季節に先駆けて特定の服を着用することで「粋」な印象を与える一方で、春にもかかわらず冬服を継続している人は「野暮」に見られることがあり、これは日本独特の感性です。
季節感を演出するためには、まだその季節にふさわしい色を取り入れるなどの工夫も可能です。
服の入れ替えは子どもの情操教育にも寄与することがあります。
子どもと一緒に服の入れ替えを行うことで、サイズが合わなくなった服を新調する早い段階での行動に繋がります。
また、服のたたみ方やしまい方を教える良い機会にもなり、丁寧に服を扱うことでものを大切にする考えを養うことができます。
子供がいる家庭では、家族の一環としてこの行事に取り組むことも良いでしょう。
学生の制服の衣替えはいつ?
季節の変化が訪れると、気になるのが学生服の衣替えですよね。学生服の衣替えは通常、学校ごとに定められた時期に行われます。
学生服の衣替えの時期は、多くの場合、学校によって定められています。
一般的には、6月上旬に冬服から夏服へ、10月上旬に夏服から冬服へと移行します。
多くの学校では、衣替え前に夏服と冬服のどちらでも良い期間や、1週間から2週間の移行期間を設定しています。
ただし、地域や学校によって時期や移行期間が異なるため、学校からのお知らせを確認することが重要です。
また、体調や気温に合わせた柔軟な対応を重視する学校では、衣替え期間が設定されていない場合や、移行期間が長い場合もあります。
学校から衣替えや移行期間に関するお知らせがあれば、準備を始めましょう。
しまっていた学生服を取り出し、サイズが変わっていないか、汚れや虫食いがないかを確認します。必要に応じて新調が必要かどうかも早めに確認することが大切です。
衣替えの時期は気温が不安定で、前日との気温差が大きいことや、朝晩と日中で気温差があることがあります。
その日の天気や気温に合わせて学生服を調整できるよう、重ね着ができるスクールニットを用意したり、シャツは長袖と半袖を両方用意したりすると安心です。学校によっては、合服(中間服)が指定されている場合もあるかもしれません。
また、シーズンオフの学生服をクリーニングに出す場合は、気温が安定して衣替えの移行が完了してからが良いでしょう。
制服の衣替え移行期間はどんな服装?
制服の衣替え期間では、夏服と冬服のどちらでも着用が許されていますので、体調やその日の気温に応じて選びましょう。
特に朝晩と日中で気温差がある場合、脱ぎ着しやすいボタン付きのカーディガンは調整に便利です。
袖のないベストは、シャツだけではやや肌寒い時に活躍し、コーディネートにもアクセントを加えます。
スカートやスラックスは通年使用可能な素材もありますが、夏仕様として薄手の素材も考えられます。
学校によっては、着こなしの規定が異なるので、ルールを確認し、その範囲内で快適に過ごすための工夫をしましょう。
制服のクリーニングと収納については、衣替え後に必ず洗濯またはクリーニングを行ってから収納しましょう。
見えない汚れがシミやカビ、虫食いの原因になる可能性があります。
制服が家庭で洗濯可能かどうかは、ケアラベル(絵表示タグ)を確認してください。また、糸のほつれやボタンが取れていないかも確認し、必要に応じて修理を行いましょう。
収納時にはほこりを避けるためにカバーをかけ、クローゼットにしまってください。クリーニングに出した場合は、ビニールカバーを外して風通しを良くしてからしまうように心掛けましょう。
衣替えに地域差はあるの?
一般的には、多くの地域で衣替えは6月1日と10月1日に行われますが、寒冷な北海道では比較的遅く、6月15日と9月15日に行われることが一般的です。
出雲地方では、6月初旬の出雲大社の「凉殿祭」をもって伝統的な衣替えの時期としています。
また、南西諸島の温暖な気候では、衣替えが毎年5月1日と11月1日に行われ、夏服や合服を着用する期間が本土よりも2か月長いことがあります。
中学校や高等学校では、新入生が4月から合服や夏服を着用するところもあります。
衣替えの効率的なやり方を紹介
白いブラウスを久しぶりに取り出した際、首のまわりが黄色く変色していてがっかりしたことはありませんか?
衣類を数ヶ月から半年間しまっておくと、汗や食べこぼしの汚れが十分に落ちていないままシミとして現れることがあります。
思い出の衣類を着る前に、収納する前に洗濯やクリーニングでしっかりと汚れを落としておくことが大切です。
特に虫害が起こりやすいウールやシルクの衣類をしまう場合は、防虫剤を準備しておくと良いでしょう。
衣類のしまい方に工夫を
型崩れを防ぐために、各衣類に合った方法で収納しましょう。
ジャケットなどの上着は畳んで収納すると、肩や襟部分の形が損なわれてしまう可能性があるため、ハンガーにかけたまましまいましょう。
逆に、ニットなどはハンガーにかけてしまうと肩部分が伸びやすいので、畳んで収納するのが良いでしょう。シワが気にならない素材であれば、圧縮して省スペースでしまうこともできます。
ハンガーにかけたままの収納時にはカバーを使用すると、ホコリや汚れを防ぐことができます。透明なカバーを使用すれば、中身が見えるため取り出しやすく便利です。
次のシーズンに備えた収納方法
衣類を畳んで収納する際、重ねてしまうと次のシーズンにお目当てのアイテムが見つからないという問題が生じることがあります。
これを避けるために、引き出し式のケースにTシャツなどを畳んで立てて収納してみましょう。
引き出しを開けた時に全体が見渡せる状態が理想的です。手元にある衣類を把握することで、新たなアイテムを購入する際も検討しやすくなります。
洋服の種類によっては立てる収納が難しい場合もありますが、側面が透明な収納ケースを利用して重ねて収納した洋服が一目で見えるようにするなど、探しやすい収納方法を心掛けましょう。
効果的な衣替え手順と収納のテクニックを紹介
天気が良い日に行う
衣替えは湿度の低い晴れた日に行うのがおすすめです。風通しを良くして衣類や収納容器内のカビの発生を防ぐため、作業前には掃除機かけや拭き掃除を行い、清潔な状態を保ちましょう。
不要な衣類は手放す
家庭の収納スペースは限られています。来シーズンに着用しないであろう衣類は手放し、必要な衣類だけを収納しましょう。
どれを手放すか迷う場合は、ワンシーズン使用しなかったり、ヨレや着用感が出ているもの、サイズアウトしてしまったものを手放す目安にしてみてください。
種類別に収納
クローゼットやタンスの中身をアイテムごとに分けて収納することをおすすめします。
気温を目安に徐々に衣替えしていく場合、『カットソー』『カーディガン』『アウター』などを分類すると、来シーズンの衣替えがスムーズになります。
収納のコツ
着る服は余裕を持たせて、着ない服はコンパクトにしておきます。
オンシーズンの服は取り出しやすい収納を目指し、クローゼットの7~8割の収納量を確保しましょう。
衣類の数が多い場合は細めのハンガーを使用すると、収納スペースが広がります。引き出しの中ではオンシーズンとオフシーズンを分け、取り出しやすくする工夫が効果的です。
収納のゴールデンゾーンを活用
「収納のゴールデンゾーン」は、腰の高さから目線の高さまでの範囲を指します。
この範囲に頻繁にアクセスするため、オンシーズンの衣類を配置すると便利です。
オフシーズンの衣類はこの範囲外に収納し、クローゼットを整理してストレスのない使い勝手の良い空間にしましょう。
小物も同様にゴールデンゾーンに配置することで、毎日の身支度がスムーズになります。
衣替えの手間を省く手軽な収納方法とは?
手持ちの衣類を見極め、知恵を絞ると、衣替えはそれほど手間ではありません。
しかし、やはり時間がかかり、煩わしいと感じる方もいるでしょう。そんな方は、思い切って衣替え不要の収納方法を考えてみませんか。
衣類を厳選することが必要
すべての衣類をしまい込むのではなく、手持ちの衣類を一括して収納するためには、それなりのスペースが必要です。
これまでオンシーズンのものだけを掛けていたクローゼットに、オフシーズンのものも掛けるためには、衣類を選りすぐっておかないと、ギューギューと詰まったクローゼットになってしまいます。
通気性がないと湿気を吸ってカビが生じたり、害虫が発生するリスクも考えられます。
そのため、衣類を慎重に選び、1か所にまとめる工夫が必要です。
ただし、必ずしも1か所に収納する必要はありませんので、収まりきらない場合は、例えばダウンジャケットや厚手のコートだけを別の場所に収納するなど、お部屋の状況に応じたルールを作ると良いでしょう。
掛け収納をメインに
すべての衣類をハンガーにかける必要はありませんが、掛け収納をメインにすることで、衣類全体が見渡しやすくなり、毎日の服選びもスムーズになります。
クローゼットの扉を開けて一番取りやすい場所にオンシーズンのものを掛け、その他の衣類は洗濯ばさみなどで仕切ったり、季節やアイテムごとに異なる色のハンガーを使用することで、服選びがさらにしやすくなります。
また、ハンガーだけでなく、フックなどを使用すれば、洋服以外にもスカーフやバッグも一緒に収納できます。朝の忙しい時間にあちこち移動せず、一カ所で支度ができます。
ケースや収納用品も活用
丈の短いアイテムをハンガーに掛けて空いた下部スペースには、引き出しや収納ケースを設置してみましょう。小物類や伸びやすいニットなどを効果的に収納できます。
新しい収納ケースを購入する場合は、同じメーカーやシリーズで重ねて使用できるものがおすすめです。
季節によって重ねる順番を変えるだけで、取り出しやすさが向上し、配置変更や追加購入が必要な場合も対応しやすくなります。
また、クローゼットがない場合は、ハンガーラックの導入を検討してみましょう。サイズ展開も豊富で、カーテンやカバーがついた商品もあります。このような工夫により、クローゼット前のスペースを有効に使い、収納がより便利になります。
積み重ね可能なチェストなども使えば、クローゼットの空きスペースに合わせて配置できます。
フタが開いたままできるので、洗濯後の収納も簡単です。クローゼット前のスペースが狭くて引き出しだと開けにくい場合でも、このような収納ケースは便利です。
ライフスタイルに合わせた衣替えを
職業やライフスタイルによって必要な衣類の数は異なるため、理想のクローゼットも多岐にわたります。
衣替えがあってもなくても、毎日の服選びが楽しくなり、ストレスがないようにしましょう。ここで紹介したアイデアが参考になれば幸いです。
まとめ
衣替えは古代から行われており、特に四季のはっきりした気候を持つ地域では、季節ごとに異なる服装が必要とされてきました。
日本でも、江戸時代には「季節着物」があり、季節ごとに異なる柄や色が使われました。これが衣替えの文化の一環となり、現代に続いています。
気候への適応:衣替えは、気温や湿度の変化に合わせて適切な服装を用意するための行事として起源します。冬の寒さや夏の暑さに対応するため、季節ごとに服を切り替えることが一般的です。
自然のリズムと調和:衣替えは自然のサイクルと人間の生活を調和させるものとされています。四季の移り変わりに敏感である日本文化では、自然との一体感を感じるための儀式的要素も含まれます。
清潔と新生活の象徴:衣替えは季節ごとに新調することで清潔感を保ち、新しい季節や新しい生活への準備を象徴しています。特に春の衣替えは新しいスタートや新学期に向けての気持ちを表現する重要な行事となっています。
衣替えの様式
制服の衣替え:学生や一部の職場では、制服の衣替えが行われます。これは通常、春と秋の二度行われ、新しいシーズンに合った服装に切り替えます。
私服の衣替え:一般の人々も、季節の変化に応じて私服を衣替えすることがあります。これは、冬服から夏服へ、またはその逆への切り替えを指すことが一般的です。
現代の変遷
現代では、気象の変化やファッショントレンドに影響を受け、衣替えの概念も変化しています。一方で、季節ごとの衣替えが根付いている文化も多く、四季折々の自然を感じながら服を楽しむ機会となっています。
衣替えの文化的側面
衣替えには合理的な側面だけでなく、文化的な要素も存在する。
季節ごとに洋服を切り替えることで、季節の移り変わりを感じることができる。
日本独特の感性により、季節に合った服装が求められる。
子どもの情操教育になる
子どもと一緒に衣替えを行うことで、サイズの合わない服を新調するなど早めの行動が促される。
子どもに服の扱い方を教え、物を大切に使う考えを育む機会になる。
制服の衣替えの時期と準備
制服の衣替えは学校ごとに異なるが、一般的には6月上旬と10月上旬に行われることが多い。
衣替え前に服のサイズや状態を確認し、必要に応じて新調する。
気温の変動に備え、重ね着ができる服や調整しやすいアイテムを用意する。
制服の衣替え移行期間の服装
移行期間中は夏服・冬服どちらを着用しても良い。
温度差がある時期は、脱ぎ着しやすいカーディガンやベストを活用して調整する。
学校の着こなしのルールに留意しつつ、快適な服装を工夫する。
衣替えのやり方と収納のコツ
衣替えは湿度の低い晴れた日に行うことがおすすめ。作業前に清掃を行い、衣類や収納容器を清潔に保つ。
不要な衣類は手放し、必要なものだけを収納する。
衣類を種類別に収納し、掛け収納をメインにすることで一目で把握しやすくなる。
ゴールデンゾーンを活用して、頻繁に使用するアイテムを取りやすい位置に配置する。
収納ケースやハンガーラック、フックを利用して空間を有効活用し、使い勝手を向上させる。
衣替えをしなくてすむ収納方法
衣替えが億劫な場合は、通年で着ることができる衣類収納を検討する。
衣類を厳選し、掛け収納をメインにすることで、収納スペースを効果的に利用できる。
収納ケースやハンガーラックなどの収納アイテムを活用して、クローゼットの外でもスペースを有効に使う。
ライフスタイルに合わせた衣替え
個々の職業やライフスタイルによって必要な衣類は異なるため、自身の生活に合わせた衣替えを考える。
衣替えがストレスではなく楽しい瞬間になるよう、工夫やアイデアを取り入れながらライフスタイルに適したクローゼットを構築する。