島根県の郷土料理出雲そばを紹介

出雲地方の代表的な蕎麦であり、岩手県の「わんこ蕎麦」と長野県の「戸隠蕎麦」と並んで、日本三大蕎麦の一つに数えられます。

江戸時代初期に、松江藩の初代藩主である松平直政公が信州松本藩から移ってきた際に、蕎麦職人を連れてきたことから、出雲地方に蕎麦が広まったとされています。

「出雲の蕎麦」は、一般的な蕎麦と比べて黒味がかっています。

蕎麦粉を製粉する際は、一番粉から三番粉の三種類に分類されるのが一般的です。

出雲の蕎麦は、粉の選別を行わず、玄蕎麦(殻のついた蕎麦の実)をそのまま挽き込む「挽きぐるみ」と呼ばれる製粉方法で作られます。

これにより、栄養価と香りが高く、風味と食感の良い蕎麦になります。また、つなぎに使われる小麦粉も約2割程度であり、少ないのも特徴の一つです。

蕎麦の実はやせた土地の山畑でも栽培できるため、奥出雲地方では平安時代から蕎麦を食べる習慣が定着しています。

現在は通年で流通していますが、秋にとれたばかりの蕎麦の実を使った新蕎麦が旬とされます。

地元では、「出雲の蕎麦」は、冷たい「割子蕎麦」と温かい「釜揚げ蕎麦」で食べられています。

「割子蕎麦」は、円柱状の丸い重箱「割子」に入った蕎麦で、冷たいつゆをかけて食べます。

「釜揚げ蕎麦」は、出雲大社などの神社周辺が発祥とされています。旧暦の10月に行われる「神在祭」では、温かい釜揚げで新蕎麦が振る舞われます。

地元の蕎麦屋などの飲食店で提供されています。同じ「出雲の蕎麦」でも、各店舗に個性やこだわりがあり、食べ歩きを楽しむ観光客も多いです。

出雲そばのレシピと材料

出雲そばの材料(2人分)

そば粉:400g
水:450cc
打ち粉:200g

出雲そばの作り方

1:そば粉をふるいにかけ、水の7割を入れて指先で水を回し、残りの2割を加えて混ぜます。状態を見ながら必要に応じて水を追加し、ほろほろ状になるまで練ります。生地を一つにまとめ、時計回りに生地の中に親指を当ててしっかりこね、空気を抜くためにこね棒の端に当てながら三角すいを作ります。

2:のべ板に打ち粉を振り、生地を上から押して平らにし、生地の上に打ち粉を振りかけ、手で中心から回しながら更に平らにします。打ち粉を振り、麺棒で中央から手前に向かって押し出すように生地を伸ばします。この作業を繰り返します。

3:打ち粉を振り、麺棒に巻きつけて生地を伸ばし、ある程度の大きさになったら広げ、打ち粉を振り、厚さが約2mmになるように伸ばします。打ち粉を振り、生地を横半分、縦半分に折ります。

4:打ち粉を振り、こま板に手を添えながら約2mmの厚さに切り分け、くっつかないように手でほぐしながら容器に並べます。たっぷりの熱湯でゆでます。

5:ゆであがったら水で洗い、冷水でしめます。器に盛り付け、薬味とだし汁をかけて召し上がれ。

出雲そばのレシピ提供:島根県食生活改善推進協議会

※地域や家庭によってレシピは異なる場合があります。

出雲そばの特徴とは?

出雲そばは、島根県の出雲地方で親しまれている地元料理の一つであり、日本三大蕎麦の一つとして知られています。

江戸時代初期、信濃国(現在の長野県)松本藩の城主であった松平直政が、出雲国松江藩への国替えを命じられ、そば職人を伴って出雲地方に移り住んだことから、出雲地方にそば文化が根付いたと言われています。

これが1638年(寛永15年)の出来事であり、出雲市と松江市のそば組合は、この日を記念して「出雲そばの日」として、2022年に日本記念日協会に登録されました。

出雲地方がそば処となった理由は、奥出雲地方の寒さに強く、栽培期間が短く、痩せた土地でも栽培できる蕎麦の栽培が盛んだったからです。

また、江戸時代後期には松江藩主の松平治郷が蕎麦好きであり、夜には屋台で蕎麦を食べることもあったと伝えられています。

出雲地方では、奥の院詣りの際に門前町のそば屋で蕎麦を楽しむことが庶民の楽しみでした。

また、神在月に行われる神在祭の際には、神社の周りにそば屋の屋台が並び、釜揚げそばを食べる風習もありました。

出雲そばの製法では、蕎麦粉を作る際に蕎麦の実を皮ごと石臼で挽くため、蕎麦の色は濃く、香りも強いです。また、「割子そば」や「釜揚げそば」といった独特の食べ方や、薬味として青ねぎや海苔、鰹節、大根おろしなどを使うことも特徴です。

2022年には文化庁から「伝統の100年フード」に認定されました。

出雲そばの日について紹介

出雲そばの日は、日本の祝日や記念日としては特別な日ではなく、地域の記念日として登録された日です。この日は、島根県の出雲地方において、出雲そばの歴史や文化を記念するために設定されました。

1638年(寛永15年)2月11日に、信濃国(現在の長野県)松本藩の城主であった松平直政が、江戸幕府第3代将軍徳川家光から出雲国松江藩への国替えを命じられ、その際にそば職人を伴って出雲地方に移り住んだという歴史的な出来事が関係しています。

この出来事を記念し、出雲市と松江市のそば組合が「出雲そばの日記念日登録実行委員会」を結成し、2022年に日本記念日協会に登録されました。

出雲そばの日は、地域のそば文化を称え、地元の人々や観光客にそばの魅力を伝える機会として位置づけられています。この日には、出雲地方でさまざまなイベントや記念行事が行われ、地域住民や観光客が出雲そばを楽しむことができます。

出雲そばの色々な食べ方

割子そば

割子そばは、蕎麦を重ねられた丸い漆器に盛り付けて提供されます。通常、一人前には三段重ねの漆器が使われ、薬味とだし汁の入った容器も添えられます。このスタイルは、江戸時代に松江の人々が野外でそばを楽しむために使われた弁当箱の形式を基にしています。出雲地方では昔から重箱を「割子」と呼び、1907年頃には丸形の漆器に変わりました。

割子そばの食べ方も独特で、他の地域では蕎麦をだしの中に入れるのに対し、割子そばではだし汁を別の器に入れて提供されます。その上には青ねぎや海苔、大根おろし、削り節などの薬味が載せられます。三段重ねの場合、最初は一番上の割子から蕎麦を食べ、次に残っただし汁を次の段にかけて食べるという風に、段々と上から順に食べ進んでいきます。

近年では、薬味が豊富に盛り付けられた割子そばや、大阪の食文化の影響を受けて卵などがトッピングされたものもありますが、これらは伝統的な割子そばとは異なります。

釜揚げそば

釜揚げそばとは、釜や鍋から茹でたそばをそば湯ごと器に盛り付け、客が自分でつゆ(割子そばと同様の濃い出し汁)を入れて濃度を調節し、青ねぎや海苔などの薬味をのせて食べるスタイルです。

見た目はかけそばに似ていますが、茹で上げた麺を水洗いせずそのまま提供される点が異なります。そのため、ぬめりが取れずのどごしが良くないですが、その分、そばの味や香りが直接味わえます。

玄丹そば

玄丹そばと呼ばれるそばが、松江市にあります。

このそばは、1997年以来、減反政策によって休耕されていた松江市郊外の田地(減反田)で育てられたものです。

基本的には、出雲そばを元にしています。その名前は、戊辰戦争の時に新政府軍に対して無血で松江藩を救った女性、玄丹お加代にちなんで名付けられました。

出雲の舞

出雲の舞と呼ばれるそばは、島根県で開発された品種です。

この地域では、古くから小さな粒の在来種である「小そば」が栽培されてきました。

特に、奥出雲町の「横田在来」は、出雲そばの特徴である濃い麺色と優れた風味を持っており、貴重な在来種として受け継がれてきました。

しかし、小さな粒のため、発芽や初期生育が不安定であり、成熟期が遅いため霜害や積雪のリスクが高いという問題があります。また、近年は他の品種との交雑により遺伝的な均一性が乱れています。

2000年代初頭以降、蕎麦の需要の増加に伴い、県外から種子が導入されました。

その中でも、「信濃1号」は成熟期が早く、広い地域に適応性があり、島根県でも栽培が増加しました。しかし、その一方で「出雲そば」に適した在来品種の栽培面積が減少しています。

このような状況から、地域特産品としての優位性を補強するために、島根県では独自の優良品種の開発が求められており、島根県農業試験場では新品種の育成が行われています。

その結果、北海道の古くからの品種である「牡丹そば」と「横田在来」を交配し、新しい品種である「出雲の舞」が育成されました。

「出雲の舞」は、2014年1月に品種登録が公表されました。

その名前は、島根県東部の方言で「旨い」を意味する「まい」を含み、舞い踊るほどに風味が濃くおいしいという意味も込められています。この品種は、平坦部から山間部に適していますが、耐湿性は強化されていないため、排水対策が必要です。

まとめ

出雲そばは、島根県の出雲地方で育まれてきた伝統的なそばの一種です。

出雲そばの起源と歴史

出雲そばは、江戸時代初期に松江藩初代藩主である松平直政によって広められたとされています。直政が信州松本藩から移る際にそば職人を連れてきたことで、出雲地方にそばが伝わったとされています。

出雲そばの特徴

出雲そばは、他のそばと比べて黒味がかっており、栄養価と香りが高いとされています。

また、出雲そばは一般的なそばと異なり、粉の選別を行わずに玄そばをそのまま挽き込む製粉方法で作られることが特徴です。

出雲そばの食べ方

地元では、出雲そばは冷たい「割子そば」と温かい「釜揚げそば」の2つのスタイルで食べられます。

割子そばは、円柱状の丸い重箱にそばを盛り、つゆをかけて食べます。一方、釜揚げそばは、茹でたそばをそば湯ごと器に盛り、客が自分でつゆを入れて食べるスタイルです。

出雲そばの地域の伝統

出雲地方では、奥出雲地方でそばを食べる習慣が古くからあります。特に神在祭などの地域の祭りでは、釜揚げそばが振る舞われることがあります。

出雲そばの保存と継承

出雲そばの保存と継承には、地元のそば屋や飲食店での提供が重要です。地元の飲食店では、それぞれに個性やこだわりを持った出雲そばが提供され、観光客も楽しんでいます。

出雲そばは、島根県の豊かな自然環境と歴史的な背景に根ざした、地域の食文化の一部として大切にされています。