島根県の郷土料理鯉の糸造りとは?

島根県の郷土料理鯉の糸造りの主な伝承地域は松江市になります。主な使用食材はコイ、コイの卵などです。

宍道湖は、島根県と鳥取県にまたがり、淡水と海水が混ざり合う汽水湖です。

ここでは多くの魚介類が獲れます。

特に、ヤマトシジミ、アマサギ(ワカサギ)、シラウオ、スズキ、モロゲエビ(ヨシエビ)、コイ、うなぎの7種類は、「宍道湖七珍」として有名です。

宍道湖は塩分が薄いため、淡水魚のコイも多く獲れます。大きなものでは、20kg近くになるコイもいます。

一般的には、「鯉こく(みそ汁)」や刺身として食べられます。

「鯉の糸造り」は、鎌倉時代から明治時代にかけての天皇や将軍が召し上がっていた御前料理であり、現在では松江市の冬の郷土料理として知られています。

コイを三枚におろし、細長く切ったものに煎ったコイの卵(真子)をまぶします。

この料理の作り方は、平安時代から続く日本料理の流派「四条流」から伝わったとされています。

細長く切ったコイの刺身の上に、煎ったコイの卵をまぶして提供されます。

コイは、12月から3月にかけての寒い時期によく獲れます。

産卵期の4月や5月は、体に栄養を蓄えており、美味しいと言われています。

それ以降は身が痩せて味が落ちるとされています。コイを食べると、産婦の乳の出が良くなるという言い伝えもあります。

コイを三枚におろし、腹骨や隠し骨を取り除き、身の方から縦に切れ目を入れます。

さらに横に薄くすくうように切り、細長い糸状にします。

コイの刺身にまぶす卵は、塩もみした後に水洗いし、鍋でいります。

コイの卵が手に入らない場合は、数の子や炒り卵で代用することもあります。

特徴的なタレは、「煎り酒」です。昔は地伝酒が使われましたが、現在は入手が難しいため、酒、みりん、醤油、塩、その他の調味料を調合して煎り酒を再現します。

調理には高度な技術が必要なため、家庭で作ることは少なく、松江市内の料亭やレストランで祝いの席で提供されています。

鯉の糸造りのレシピと材料

鯉の糸造りの材料

コイ 半身
真子(もしくは卵黄 / 数の子でも可) 適量

みりん
醤油

米 適量
梅干し 1個
カツオ節 適量

鯉の糸造りの作り方

1:コイの鱗を取り除き、頭と内臓を取り除き、三枚におろす。

2:おろしたコイの皮を下にして、2mmほどの厚さで細くすり、縦に切って糸状にする。

3:コイの真子をボウルに入れて塩をもみ込み、水で洗って塩抜きをし、湯がいて茹でる。

4:茹でた後、水を切り、乾煎りして水分を飛ばした真子を、糸づくりしたコイに和える。

5:すりおろした皮を強火で茹で、細かく切って糸づくりの横に添える。

6:<煎り酒の作り方> 酒、みりん、醤油、塩を合わせ、炒った米と焼いた梅干しをガーゼに包み、沈めて全体の2割程度を煮詰める。火を止める直前にカツオ節を入れ、こす。

レシピのアレンジ

真子がなければ、炒り卵(もしくは卵黄)や数の子で代用可能。 ※画像は「炒り卵」を使用

※レシピは地域や家庭によって異なる場合があります。

鯉の生態について紹介

鯉は外見が同じ亜科のフナに似ていますが、頭や目は体に比べて小さい特徴があります。

吻(口)はフナよりも長く伸ばすことができ、上顎後方や口角には触覚や味覚を感知する口ひげがあります。

体長は約60センチメートルで、130センチメートル以上にも達することがあります。

飼育された個体は体高が高く、動きも遅い傾向がありますが、野生の個体は体高が低くて体つきが細身で、動きが比較的速いです。

雌雄の見分けは難しいですが、雌は体が大きく、雄は頭が大きく、体はやや細くて胸鰭が大きく角張っているなどの特徴があります。

また、雌の胸鰭は丸い形状をしています。

鯉の食性は雑食で、水草、貝類、イトミミズなどを食べます。

その他にも昆虫、甲殻類、他の魚の卵や小魚、米粒、トウモロコシ、芋、麩、パン、カステラ、うどん、カエルなど、口に入るものならほとんど何でも食べます。

口に歯はありませんが、喉には硬い貝殻などを砕き割って飲み込むための咽頭歯があります。

さらに、口を開けると下を向いて湖底の餌を採りやすくなっています。鯉には胃がありませんが、ウェーバー器官を持ち、音に敏感であり、髭には匂いや味を感じる器官が集まっています。

産卵期は春から初夏にかけてで、この時期には大きな鯉が浅瀬に集まって産卵や放精を行います。

一度の産卵数は20万から60万にも達することがあります。卵は水草などに付着し、水温が20度以上あれば4から5日で孵化します。

稚魚はしばらく浅い水域で過ごしますが、成長に伴い深い場所に移動します。

鯉の寿命は15から20年で、長寿の部類に入ります。鯉は汚れた水にも耐える能力が高く、水から上げてもしばらく生き延びることができます。

川の中流や下流、池、湖などの淡水域に生息しています。

鯉は食べられる?その食用文化について紹介

日本の場合

鯉は世界各地で漁や養殖が盛んであり、食材として幅広く利用されています。

日本では、福島県が最も多くの鯉を出荷しており、鯉こくやうま煮、甘露煮などの料理が一般的です。鯉の鱗を唐揚げにしたり、洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べることもあります。ただし、生食や十分に加熱されていない状態での摂取は、寄生虫病のリスクがあるため、注意が必要です。捕獲した鯉は、調理前に清潔な水で数日間泥臭さを抜くために浸けられます。

また、鯉の肉や皮膚には藍藻から生成されるゲオスミンが含まれ、泥臭さの原因となりますが、酸性の調味料を使うことでこれを抑えることができます。

古くから鯉は貴重なタンパク源として重宝され、将軍や天皇にも供される正式な料理としても知られています。内陸地域では、かつてサケやブリが入手困難であったため、鯉が御節料理などで利用されてきました。現在の養殖では、農業用の溜め池や稲作用水田が利用されていますが、需要の減少により生産量は減少しています。

中華人民共和国の場合

中華料理では、山東省で鯉を丸ごと揚げて甘酢あんをかけた「糖醋鯉魚」(タンツウリイユィ)があり、日本でも宴会の代表的なメニューの1つとして親しまれています。

中国では、年始の供え物や食事に川魚を使うことが一般的であり、その中でもっともポピュラーなのが鯉です。

ヨーロッパの場合

鯉は中欧や東欧で古くから広く食べられています。

特にスラヴ人にとっては、鯉は聖なる食材と見なされ、ウクライナ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ドイツ、ベラルーシなどでは、伝統的なクリスマス・イヴの夕食に欠かせないものとされています。

東欧系ユダヤ教徒も安息日に食べる魚料理「ゲフィルテ・フィッシュ」の素材として、鯉がよく利用されました。

しかし、北米では、鯉は水底でえさをあさるために泥臭いとされ、釣りの対象としてはされても食材として扱われることはほとんどありません。

ヨーロッパでは、食用に改良された鯉である革鯉(Leather carp)が使われています。

鯉はそのまま食べると食中毒になる?

コイの胆嚢(苦玉)には苦みがあり、解体時にこれを潰すと身に苦味が広がります。

胆嚢にはコイ毒(毒性物質は胆汁酸の5-αチブリノールとスルフェノール)が含まれていることがあり、これを摂取すると下痢や嘔吐、腎不全、肝機能障害、痙攣、麻痺、意識不明などの症状が現れることがあります。

稀には死亡例も報告されています。

一方で、視力低下やかすみ目などに効果があるとされ、鯉胆(りたん)という生薬名でこの胆嚢の成分を錠剤にして販売されています。

まとめ

鯉の糸造りは、鯉を使った伝統的な日本料理の一つです。

材料:鯉のうろこ、半身、真子(卵黄や数の子でも代用可)、酒、みりん、醤油、塩、米、梅干し、カツオ節。

作り方

1:鯉のうろこを取り除き、頭とはらわたを取り除いて三枚におろす。

2:おろした鯉の皮を紙状にし、縦に切って糸状にする。

3:鯉の真子を塩もみして水で洗い、塩抜きをして湯がく。

4:湯がいた真子を糸状にした鯉に和える。

5:鯉の皮を湯がいて細かく切り、糸状の横に添える。

6:煎り酒を作り、炒った米と梅干しを包んで煮詰め、火を止めてカツオ節を加えてこす。

鯉は食用としても広く利用されています。

食文化:日本では、鯉はさまざまな料理に使われており、鯉こくやうま煮、甘露煮などが代表的です。また、洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べることもあります。

食中毒:鯉の胆嚢にはコイ毒が含まれており、解体時に潰すと身に苦味が広がります。生食や加熱不完全な調理状態の鯉を摂取すると、下痢や嘔吐などの食中毒の危険があります。