切磋琢磨とは、古い表現の一つで、故事成語や四字熟語の一つです。
もともとは、『詩経』の「衛風・淇奥(きいく)」の部分で使われた言葉で、衛の武公の自己啓発を表現したものです。
「切・磋・琢・磨」は、もともとそれぞれ材料を加工する作業を表す言葉で、
「切」は骨を切り加工することを指します。
「磋」は象牙を研いで加工することを指します。
「琢」は玉(ぎょく)を打って加工することを指します。
「磨」は石を磨いて加工することを指します。
という意味ですが、上記の『詩経』の用法から、「自己啓発」を意味するようになり、学問や道徳、また技芸などを磨き上げることを指す言葉ともなりました。学問も独自の研究などで、努力を重ねることで将来へつながる基盤を作ることができます。
日本語でも好んで用いられる四字熟語であり、特に「琢磨(たくま)」は男性の名前としてもよく使われます。
切磋琢磨の由来とは?
切磋琢磨の起源は、孔子が編纂した中国の詩歌集である『詩経』にあります。
『詩経』の中の「衛風淇奧」という篇に、「如切如磋、如琢如磨」という一節があります。
読み方は、「切(せっ)するように、磋(さ)するように、琢(たく)するように、磨(ま)するように」となります。
「切する」とは切り刻むこと、「磋する」は研ぐこと、「琢する」は打つこと、「磨する」は磨くことを指します。
象牙や石などに精巧な加工を施して工芸品を作ることを表しています。
「衛風淇奧」では、衛の国の武公が優れた工芸品に例えて称賛される場面で、「切磋琢磨」の由来となる言葉が使われています。
武公は90歳という高齢になっても、徳を修めるために自己鍛錬を怠りませんでした。
武功を称える逸話から「琢磨」という言葉が生まれたのです。
詩経とは?
詩経(しきょう)は、古代中国の詩歌集であり、中国古典文学の中でも極めて重要な位置を占めています。孔子の弟子やその後の儒家学者たちによって編纂されたとされています。
『詩経』は、「風」と「雅」の二つの部分に分けられます。
「風」(ふう)部は、主に民間の感情や日常生活を歌った詩で構成されています。
これらの詩は、地域ごとに異なる「風」と呼ばれる篇に分けられており、作者や成立時期は不明です。代表的な風には、「衛風」や「鄭風」などがあります。
「雅」(が)部は、宮廷や貴族の生活、儀式などを題材とした詩で構成されています。
これらの詩は、その多くが周や商の時代にさかのぼります。作者は主に周の王や貴族とされています。
『詩経』には約305の詩が含まれており、古代中国の社会や文化、価値観などを知る上で貴重な資料となっています。
また、その詩の多くは後世の文学や思想にも影響を与え、儒教や道教、仏教などの中国の伝統的な思想や価値観の形成に大きな影響を与えました。
切磋琢磨を使った例文を紹介
切磋琢磨は、努力や修練を重ねることを表す言葉であり、主に学問や技芸の分野で使用されます。以下に、この言葉を使った例文を解説付きでいくつか紹介します。
彼らは切磋琢磨の精神で、プロジェクトを完了させた。
この例文では、「切磋琢磨」が努力と向上心を意味し、チームが協力してプロジェクトを完成させる姿勢を示しています。
彼女は毎日のように切磋琢磨し、ピアノの腕前を向上させた。
ここでの「切磋琢磨」は、日々の努力や練習を通じてスキルや技術を磨き上げることを指します。彼女はコツコツと練習を重ね、ピアノの腕前を向上させました。
彼は学業において切磋琢磨の精神を示し、優秀な成績を収めた。
この文では、「切磋琢磨」が学問における努力や精進を意味し、彼がその精神で学業に取り組み、優れた成績を得たことを示しています。
困難な状況に直面しても、彼らは切磋琢磨の姿勢を崩さず、成功を勝ち取った。
この文では、「切磋琢磨」が困難に立ち向かうための努力や粘り強さを指し、困難な状況にもめげずに頑張り続け、最終的に成功を収めたことを表しています。
これらの例文からわかるように、「切磋琢磨」は様々な場面で使われ、努力や成長を象徴する言葉として広く用いられています。
友達と切磋琢磨している時の例文を紹介
私たちは友達同士で切磋琢磨しながら、大学入試に向けて勉強しています。
この文では、友達同士がお互いに切磋琢磨し合いながら、大学入試の準備をしている様子が描かれています。お互いに刺激を受けながら、目標に向かって努力を重ねている様子が伝わります。
彼らは仲間と切磋琢磨して、スポーツの技術を向上させています。
ここでの「切磋琢磨」は、仲間たちと共に努力してスポーツの技術を向上させることを指します。お互いが競い合いながら、成長しようとする姿勢が示されています。
友達との競争心が切磋琢磨の原動力となって、新しいアイデアを生み出しました。
この文では、友達との競争心がお互いを刺激し、切磋琢磨の原動力となって新しいアイデアを生み出したことが述べられています。お互いが切磋琢磨し合うことで、創造性が高まり、良い成果を生み出すことができました。
グループでのプロジェクトでは、友達と切磋琢磨して、より良い結果を目指しています。
この例文では、グループでのプロジェクトにおいて、友達同士が切磋琢磨し合って、より良い結果を目指していることが述べられています。お互いに刺激を受けながら、目標に向かって努力する姿勢が描かれています。
これらの例文からわかるように、友達同士で切磋琢磨することは、お互いに成長や向上を促す素晴らしい関係を築くことができます。
切磋琢磨の類義語を紹介
「切磋琢磨」には、努力や研鑽、向上心を表す類義語がいくつかあります。以下にいくつかの類義語を解説付きで紹介します。
精進(しょうじん)
「精進」は、仏教用語であり、修行や努力を意味します。日常生活や宗教修行において精進をすることで、心身を鍛え、成長や向上を図るという意味があります。
励精(れいせい)
「励精」は、精進や努力することを意味します。精神を奮い立たせ、努力を重ねることで、目標や志を達成しようとする意志を示します。
鍛錬(たんれん)
「鍛錬」は、体や心を鍛えることを指します。主に体力や技術、能力などを向上させるために、継続的な訓練や修行を行うことを意味します。
修練(しゅうれん)
「修練」は、技術や能力を磨き上げることを指します。日々の練習や試行錯誤を通じて、自己のスキルや能力を高めることを意味します。
奮闘(ふんとう)
「奮闘」は、困難や苦難に立ち向かって努力することを指します。逆境や挑戦に対して、精一杯努力して立ち向かう姿勢を表します。
これらの類義語は、それぞれ微妙なニュアンスの違いがありますが、いずれも努力や成長、向上心を表す言葉として用いられます。
まとめ
切磋琢磨(せっさたくま)は、努力や研鑽を重ねることを意味する四字熟語であり、主に学問や技芸の分野で使用されます。この言葉は、元々は中国の詩歌集『詩経』に由来しています。『詩経』の中の「衛風淇奧」篇に「如切如磋、如琢如磨」という一節があり、これが後に「切磋琢磨」という言葉として広く知られるようになりました。
「切磋」とは、骨を切る、象牙を研ぐ、玉を打つ、石を磨くという意味の四つの作業を指し、「琢磨」とは、材料を磨いて美しく仕上げることを意味します。この言葉は、個々の努力や研鑽を重ねることで、自己の能力や技術を向上させる姿勢を表しています。
切磋琢磨の精神は、個人だけでなく、友人や仲間と共に努力を重ねることも含みます。友人や仲間と切磋琢磨しながら、お互いに刺激を受けながら成長し、目標を達成することができます。
この言葉は、努力や向上心を称えるだけでなく、困難に立ち向かう精神や、目標に向かって努力する姿勢を称賛する際にも用いられます。人々が切磋琢磨の精神を持ち続けることで、個人の成長や社会全体の発展に貢献することができます。