皮と革の違いとは?

皮とは、手の皮やみかんの皮など、動植物の外側を覆う膜のことです。

また、「餃子の皮」や「饅頭の皮」など、物を包むためのものも指します。

さらに、「化けの皮」や「欲の皮」といった表現では、物事の本質を覆っている象徴として使われます。

一方、革とは、動物の皮をなめし加工によって腐敗や硬化を防ぐために処理したものです。

「牛革の靴」や「蛇革の財布」などが例です。なめし加工された皮は「毛皮」と異なり、毛を剥いでいないため「毛革」とは呼ばれません。

一般的に、「皮」と「革」は区別されていますが、なめし加工された革も元は動物の皮であるため、「皮」という表現が使われることもあります。

ただし、「みかんの皮」を「みかんの革」と表現するのは誤りであり、「餃子の皮」を「餃子の革」と表現するのも間違いです。これらは革の意味には当てはまらない表現です。

ちなみに、「皮革」とは動物の皮を加工した製品の総称であり、「皮革製品」や「皮革商」「皮革工業」などの言葉で使われることが一般的ですが、日常会話ではあまり使われません。

皮革についての概要を紹介

皮革とは、動物の皮を加工して得られる素材であり、皮と革の総称です。毛皮は毛を残したままなめし加工されるものであり、広義には皮革に含まれます。

人工的に作られた人造皮革(合成皮革)と区別するため、動物の皮膚をなめして得られるものを天然皮革や本革と呼ぶこともあります。

皮革の中でも体毛まで利用するものは毛皮として知られています。

皮は生物の表面を覆う組織であり、人類は古くから動物の皮を利用してきました。

皮は乾燥させることで硬くなりますが、柔らかさを保つためには乾燥中に繰り返し揉んだりほぐしたりする加工が必要です。

ただし、皮は高温多湿の環境では腐敗しやすいという欠点があります。このため、腐らないように鞣して加工したものが革です。革は動物の皮を加工して得られる製品であり、両手でピンと張った状態を表す文字でもあります。

英語では皮は”skin”、革は”leather”と表されます。原皮は大きさによって”skin”と”hide”に分けられ、例えば牛の場合は中牛までの大きさを”skin”、それ以上の大きさを”hide”と呼びます。

皮革の歴史について紹介

古代、人類の祖先は小動物の皮、例えばネズミやウサギの皮を最初に利用し始めました。

最初期の皮革利用は主に毛皮であり、有機物である皮は埋蔵されると崩壊してしまうため、古代の遺物として残される例は少ないです。

考古学的には、遺物や壁画、文献から古代の皮革についての研究が行われています。

例えば、約5300年前のミイラであるアイスマンの例では、革製のコート、レギンス、毛皮の帽子、干し草を詰めた靴が見つかっています。

これらの衣類はそれぞれ、異なる動物の皮が用いられており、なめし加工は動物性脂肪に漬けた後に土に埋める方法が採用されていました。

これにより、撥水性に優れた性能が得られたという研究結果もあります。

プラスチックが発明されるまでは、皮革は人類が利用できる最も強靭な素材でした。

日本でも、日中戦争の激化に伴い、1938年7月1日から牛革の流通が制限されました。

この期間中、靴店などは在庫がある限り販売を続けましたが、戦後の混乱期に至るまで、ウマやヒツジ、ブタ、クジラ、サメなどの代替品が使用されました。

皮革の原材料と種類

革に加工可能な皮を原皮と呼びますが、これは脊椎動物の皮に限られます。また、実用的な皮革を製品化するためには、コラーゲン線維が十分に絡み合っており、一定の厚みや硬さを持っている必要があります。

例えば、食用に適するように品種改良されたニワトリの皮はこの要件を満たさないため、革製品の材料としては不適です。また、革製品を安定して供給するためには、適切な素材であることも重要です。

動物の皮革とその種類

一般的な革であり、革靴などに広く使用されています。成牛の背中から脇までの皮が主に利用され、カウやブルなどの品種に分けられます。エンボス加工を施すことで、オーストリッチやワニ、ヘビなどの模造も可能です。

ハラコ

胎児から生後間もない仔牛の革で、ほとんど市場に出回りません。過去には10kgまでの子牛を含むこともありました。

ベビーカーフ

タンニンなめしで加工された、胎児から生後3か月までの仔牛の革です。傷が少なく、しなやかで高級品とされます。

カーフ

生後約6か月までの仔牛から得られる革で、柔らかくて傷が少ないのが特徴です。

キップ

生後6か月から2年程度の牛の革です。欧米では小型のコブ牛も含まれます。

ステアハイド

生後2年以上経過した去勢された雄牛から得られる、最も一般的な革です。

カウハイド

生後2年程度経過している雌牛から得られる革で、一般的にはステアハイドよりも薄く柔らかいです。

ブル

去勢されていない雄牛が3年以上経過した革で、分厚くて強度があります。

内地物

国内で消費される牛から得られる革で、一毛和牛やホルスタインなどがあります。

ブライドルレザー

カウハイドに数か月かけてタンニンなめしを施し、蝋を染み込ませた頑丈な革です。

非常に柔らかく、半透明にもできる革で、摩耗に強いためランドセルや靴の内革に使用されます。近年はデザイン性を活かした衣料品にも利用されるようになっています。

臀部以外の柔らかい部分は靴の内革に多く使用されます。コードバンやポニー、ホースフロントなどがあります。

シープスキンは柔らかく、断熱効果が高いため防寒着に使用されます。ムートンは羊の毛がそのまま残った毛皮で、防寒性に優れます。

山羊

ゴートレザーは強くやや硬い革で、耐摩耗性があります。古典的なカメラの蛇腹にも使われます。

カンガルー

軽量で丈夫な革であり、スポーツ用具や衣料品に広く使用されています。

ワニ

最高級の皮革とされ、クロコダイルとアリゲーターの種類があります。クロコダイルは特にイリエワニが有名で、鱗の模様によって柔らかい「玉符」と硬い「竹符」があります。

ヘビ

美しい鱗が特徴ですが、耐久性にはやや劣ります。ニシキヘビやパイソンが代表的です。

トカゲ

リング縞模様のオーバルなど、さまざまな種類があります。ジャワのリザードが有名で、リングマークトカゲも高級品です。

ダチョウ

牛革よりも丈夫で、摩擦に強いとされています。表面には羽毛を抜いた跡のクイルマークが特徴です。オーストリッチに次ぐ高価な素材です。

エミュー

オーストリッチに似ていますが、突起が小さいのが特徴です。

サメ

非常に頑丈で、水に強い皮革です。鮫肌と呼ばれるウロコ部分は加工されています。ワサビ用おろし器などにも使用されます。

エイ

サメに近縁で、皮革としても非常に頑丈で水に強い性質があります。独特の模様を持つガルーシャとしても知られ、日本刀の柄やおろし器としても使用されます。

サケ

北海道特産のわずかな流通しかありませんが、アイヌやナナイなどの少数民族がサケの皮を利用しています。

コイ

美しい模様を持ちますが、革の大きさが小さいため実用性は低いです。

ヌタウナギ

韓国特産の皮革で、滑らかで柔らかく、革特有の臭いがありません。イールスキンとして注目されています。

皮革製品の利用

皮革は、一般的に衣料品や装身具などに広く使用されます。特に、コート、パンツ、ライディングウェア、消防士の防火服、飛行服、潜水艦乗組員の装備、戦車兵の制服などの耐摩擦性や耐火性が求められる用途に多く使われます。また、革靴、鞄、ベルト、椅子の表面材などにも広く用いられています。

高級スポーツカーや高級車では、シートやダッシュボードなどが全て皮革製のものが見られます。一方で、一般的な自動車でもステアリングやシフトノブには皮革が使われることがあります。ただし、「本革」と表示されているものには公的な定義がなく、樹脂塗膜を施したものも存在します。

かつては鎧や兜、楯などの防具にも広く使用されていました。また、刀や剣の柄巻き、スポーツ用品の柄、オートバイのハンドルグリップ、小銃や拳銃のホルスターなどにも利用されていました。合成ゴムが普及する前は、手動ポンプや空気銃のパッキンなどの工業製品にも皮革が使われていました。

また、鮫皮を使ったワサビおろし器やビリヤードのキューのティップなど、皮革の特性を利用した製品も多くあります。さらに、太鼓や三味線、三線などの楽器にも皮革が利用されています。

一般的な皮革製品は、なめしの際に染色されたり、塗装時に染料や顔料で着色されたりすることが一般的です。

まとめ

皮(かわ)

動物の表皮や皮膚を指す一般的な用語。

生物学的には、動物の体表を覆う組織であり、皮膚の外層。

用途

食用として利用されることもある(例:牛皮、豚皮など)。

伝統的な工芸品や装飾品にも使用される(例:皮細工、革細工)。

加工方法

脱脂や洗浄、染色などの処理が施されることがある。

食品や工芸品の製造過程で使用される。

革(かわ)

皮をなめして加工した後の製品。

耐久性があり、衣料品や装身具、工業製品などに利用される強靭な素材。

製造過程

なめし(たんし)と呼ばれる工程で、皮を保存・柔軟化し耐久性を向上させる。

染色や仕上げ工程を経て、特定の用途に応じた品質や外観が与えられる。

主な用途

衣料品(革靴、皮ジャケットなど)、装身具(ベルト、バッグ)、家具の表皮、自動車内装、スポーツ用品(野球のグローブ、サッカーのボール)、工業製品(ホースやベルトの補強)など幅広い分野で使用される。

種類

牛革、豚革、羊革、鹿革など、動物の種類や部位によって異なる特性や用途がある。

エキゾチックレザーとして、ワニ革やヘビ革などもある。

共通点

皮と革はどちらも動物由来の素材であり、加工によってさまざまな製品に利用される。

なめし加工が必要であり、特定の品質基準を満たす必要がある。

相違点

皮は生の動物の表皮であり、革はなめし加工を施した後の製品。

革は耐久性や柔軟性が高く、幅広い用途に使われる一方、皮は主に食品や工芸品に利用される傾向がある。

このように、皮と革はそれぞれの特性と用途に応じて異なる役割を果たしています。