夫婦と夫妻の違いとは?

「夫婦」と「夫妻」はどちらも結婚している男女を指す言葉で、意味自体に違いはありませんが、使い方に若干の差異があります。

「夫婦」は自分たちにも他人にも使えますが、「夫妻」は基本的に他人に対してのみ使用されます。そのため、「私たち夫婦」とは言いますが、「私たち夫妻」とは言いません。

他人に対しては両方とも使うことができますが、「夫妻」はより改まった表現ですので、上司や目上の人に対して使うのが一般的です。例えば、「◯◯(ご)夫妻」といった形で使うことが多いです。

ただし、「夫婦喧嘩」や「夫婦別姓」など、固定された表現や名詞がある場合には、敬意を払う相手であっても「夫妻」は使いません。また、親族や友人、または犯人など、敬意を必要としない人物に対しては「夫婦」が用いられるのが普通です。

一方、普段から上品な言葉遣いを好む人や、相手との距離を意識したい場合には、「夫妻」を使うこともあります。さらに、一般的な婚姻関係について語る際には、「夫妻」ではなく「夫婦」が使われることが一般的です。

辞典でも、「夫妻」は「夫婦」より改まった表現とされていますが、この違いが定着したのは比較的近年のことです。

また、「容疑者夫妻」という表現は少し不自然に感じるかもしれませんが、使用を避けなければならないほどではありません。

「妻」と「婦」には「ほうき」が含まれている

「夫婦」と「夫妻」の違いを考える際、男女平等の観点から「婦」という漢字に注目する人もいます。

「婦」の右側には「箒(ほうき)」が含まれ、家事を担当する女性を表す意味があります。

しかし、「妻」という字も同様に、上半分に「ほうき」を持つ様子が描かれており、家事を行う妻を意味します。したがって、「夫妻」の方が平等という主張は、漢字の成り立ちだけを根拠にするのは難しいでしょう。

とはいえ、「婦」という字が昔の男性優位の社会で使われてきたことは事実です。「夫唱婦随」(夫が言い、妻が従う)や「婦女子」(女性と子供を指す)などの言葉がその例です。この歴史を踏まえて、「夫妻」の方が平等に感じるという人もいるかもしれませんが、それは少数派です。

日常的には「夫婦」が主流

中村明氏の「語感の辞典」によれば、「夫婦」はカジュアルな会話からフォーマルな文章まで幅広く使われる表現です。

一方、「夫妻」は改まった場面で使われることが多く、使用頻度も「夫婦」の方が高いです。慣用表現としては「似たもの夫婦」や「おしどり夫婦」といった言葉もあり、「夫婦」は日常的で親しみやすい印象があります。

「容疑者夫妻」などの表現は少しよそよそしく感じられるかもしれませんが、完全に間違っているわけではないため、慎重に使い分ける必要があるでしょう。

結局のところ、「夫婦」と「夫妻」のどちらを使うべきかは状況によります。特に明確なルールがあるわけではなく、言葉の選択は場面や相手によって変わります。

夫婦の言葉を使った類語を紹介

夫婦愛(ふうふあい)

意味: 夫と妻の間の愛情を指す言葉です。一般的に、長年連れ添った夫婦間の深い愛情を表す場合に使われます。

解説: 「愛」という言葉が付いているため、感情面に焦点が当てられており、ただ婚姻関係にあるだけでなく、互いに愛し合い、支え合う関係を強調します。

夫婦喧嘩(ふうふげんか)

意味: 夫婦の間でのケンカを指す言葉で、日常的に使われます。

解説: 夫婦の間で起こる口論や言い争いを指しますが、一般的には「夫婦喧嘩は犬も食わない」というように、些細な争いであり、すぐに解決するものだと捉えられています。

夫婦別姓(ふうふべっせい)

意味: 夫婦がそれぞれ結婚前の姓(苗字)を維持する制度や状態を指します。

解説: 伝統的な夫婦同姓とは対照的な概念で、特に現代社会において、ジェンダー平等や個人のアイデンティティを尊重する観点から話題になることが多いです。

仮面夫婦(かめんふうふ)

意味: 外見上は夫婦としての体裁を保っているものの、実際には愛情や信頼関係が冷めている状態を指します。

解説: 「仮面」をかぶっているという比喩で、夫婦の実態とは異なる姿を見せていることを強調します。表面的には仲が良いように見えても、実際は冷え切った関係という意味合いが強いです。

似た者夫婦(にたものふうふ)

意味: 性格や行動、趣味、考え方などがよく似ている夫婦を指します。

解説: 夫婦は長い時間を共に過ごす中で、似てくることが多いとされており、その様子を表した言葉です。見た目や性格がそっくりな夫婦に使われることもあります。

おしどり夫婦(おしどりふうふ)

意味: 非常に仲の良い夫婦を指します。

解説: おしどり(鳥類の一種)は、つがいになると一生添い遂げるとされ、その習性から仲睦まじい夫婦を表現する際に使われます。長く一緒にいる夫婦で、互いに深い愛情を持ち続けている場合に使われます。

夫婦円満(ふうふえんまん)

意味: 夫婦の関係が調和していて、問題がなく幸福である状態を指します。

解説: 「円満」という言葉が使われている通り、夫婦が互いに理解し合い、平和な関係を築いている様子を表します。家庭内の幸せを重視する言葉です。

夫婦の縁(ふうふのえん)

意味: 夫婦としてのつながり、関係性を指します。

解説: 「縁」という言葉は、縁起や運命的な結びつきを意味します。夫婦が結ばれたこと自体が運命的なものであるという考え方に基づきます。離婚などで「夫婦の縁が切れる」といった表現にも使われます。

夫唱婦随(ふしょうふずい)

意味: 夫が主導権を握り、妻がそれに従うという夫婦関係を表します。

解説: 古くからの価値観を反映した四字熟語で、夫が家庭のリーダーシップをとり、妻がそれを支えるという伝統的な夫婦像を表しています。現代では少し古風な表現と見なされることもあります。

内助の功(ないじょのこう)

意味: 妻が夫を助け、夫が外で成功を収めることを支えるという意味の言葉です。

解説: 昔から、夫が外で働き、妻が内で支えるという役割分担が一般的だった時代の考え方です。「内助の功」は、そのような妻の貢献を評価する言葉で、特に伝統的な家庭観の中で使われます。

共働き夫婦(ともばたらきふうふ)

意味: 夫婦がともに働き、収入を得ている状態を指します。

解説: 近年増えているライフスタイルで、夫婦が共に社会で働きながら家庭を築いていることを表します。共働き家庭の増加に伴い、家庭内の役割分担も多様化しています。

夫婦関係(ふうふかんけい)

意味: 夫婦間の絆や相互の関係を表す一般的な言葉です。

解説: 夫婦の関係全体を表す広範な概念で、結婚生活の中でどのように夫婦が付き合い、支え合うかを含んでいます。良好な関係も、困難な関係もこの言葉の範疇に入ります。

これらの「夫婦」に関連する言葉は、家庭内の状況や夫婦間の関係性をさまざまな視点から表現しています。各言葉には、その状況や背景に応じた使い方があるため、文脈に応じて適切な表現を選ぶことが重要です。

夫妻の言葉を使った類語を紹介

◯◯夫妻(ふさい)

意味: 夫と妻をセットで敬意を込めて表現する言い方。相手の姓を「◯◯」の部分に入れて使います(例:「鈴木夫妻」)。

解説: 一般的に、他人の夫婦に対して敬意を払う場面で使われます。「ご夫妻」と言うこともあり、特にビジネスや公的な場面、結婚式のスピーチなどで頻繁に使われます。

名士夫妻(めいしふさい)

意味: 社会的に名声のある人物とその妻(夫)を指す言葉です。

解説: 有名人や尊敬される人物の夫婦を指す際に使います。たとえば、著名な政治家や文化人に対して「名士夫妻」と表現することで、社会的地位を強調しながら、夫婦をまとめて指します。

名優夫妻(めいゆうふさい)

意味: 有名な俳優とその配偶者を表す言葉です。

解説: 特に映画や演劇の世界で活躍する俳優とその夫婦に対して使われます。メディアやインタビューの場面で使われることが多く、その際に尊敬や注目度を示す言葉として用いられます。

芸術家夫妻(げいじゅつかふさい)

意味: 芸術の分野で活動している夫婦、または片方が芸術家である夫婦を指します。

解説: 美術、音楽、文学など芸術活動に携わる夫妻に使われる表現で、芸術的な才能やクリエイティブな生活を共有していることを示唆します。

医師夫妻(いしふさい)

意味: 医師の夫婦、または夫婦のうちどちらかが医師であることを指す言葉です。

解説: 医療の専門家である夫婦に対して敬意を込めて使う表現です。医師という職業に対する尊敬の念を示しながら、夫妻として一緒に扱う言い方です。

敬愛する夫妻(けいあいするふさい)

意味: 敬意と愛情を持って接する対象となる夫婦を指します。

解説: 特に社会的な地位や人格に対して尊敬を感じる相手の夫婦に使われます。例えば、長年にわたって地域貢献をしている人物に対して、その夫婦関係も尊重して「敬愛する夫妻」と表現することがあります。

貴族夫妻(きぞくふさい)

意味: 貴族階級に属する夫婦を指します。

解説: 歴史や文学の中でよく使われる表現で、特に中世や近世の貴族社会を舞台にした物語や場面で「貴族夫妻」が登場します。現代でも、貴族制度が残っている国でこの表現が使われることがあります。

老夫妻(ろうふさい)

意味: 高齢の夫婦を指します。

解説: 年を重ねた夫婦に対して、敬意と親しみを込めた表現です。単に「老夫婦」と言うよりも、少し改まったニュアンスがあり、特に礼儀正しい場面や文章で使われます。

新婚夫妻(しんこんふさい)

意味: 結婚したばかりの夫婦を指す言葉です。

解説: 結婚直後の夫婦に対して、祝福や新しい生活の始まりを強調する際に使われます。「新婚夫婦」とも表現されますが、「夫妻」の方がやや改まった響きがあります。

殉職夫妻(じゅんしょくふさい)

意味: 職務中に亡くなった夫婦、もしくはどちらかが殉職した夫婦を指す表現です。

解説: 非常に敬意を込めた表現で、特に公務員や軍人、警察官などの公職に就いていた人々に対して使われます。夫婦のどちらかが職務中に亡くなった場合、その功績を讃えるために使うことがあります。

恩師夫妻(おんしふさい)

意味: 自分が尊敬している先生や指導者とその配偶者を指します。

解説: 特に、教育者や長年にわたって指導を受けた人物に対して、その夫婦全体を敬意を込めて表現する際に使います。例えば、卒業生が恩師を訪問する際などに使われることがあります。

王室夫妻(おうしつふさい)

意味: 王室に属する夫婦を指す言葉です。

解説: 王族や王室の中で、特に夫婦として紹介される際に使われます。「王族夫妻」とも言いますが、王室という格式ある立場に敬意を示して用いる言葉です。

功労者夫妻(こうろうしゃふさい)

意味: 社会的に大きな貢献をした人物とその配偶者を指します。

解説: 夫婦が共に社会的な貢献を果たしている場合や、どちらか一方が功績を残した場合に使います。賞や表彰を受ける場面で、「功労者夫妻」として紹介されることがあります。

弁護士夫妻(べんごしふさい)

意味: 弁護士の職業に就いている夫婦、または片方が弁護士である夫婦を指す言葉です。

解説: 弁護士としての地位や職業的な尊敬を込めて、夫婦をセットで呼ぶ表現です。法律の専門家として活動する夫婦に対して、改まった場面で使われることが多いです。

夫妻共演(ふさいきょうえん)

意味: 夫婦が一緒に舞台や映画などで共演することを指す言葉です。

解説: 特に芸能界や舞台芸術において、夫婦で同じ作品に出演することを表す際に使われます。「夫妻」が並んで何かを行うことを示す表現です。

まとめ

夫婦(ふうふ)と夫妻(ふさい)はどちらも、結婚している男女、つまり夫と妻のことを指しますが、それぞれの使い方には微妙な違いがあります。

夫婦と夫妻の使い分け

夫婦: 日常的な会話や、親しい関係の中で、自分や他人を問わず使えます。また、慣用表現としても使われることが多く、「夫婦愛」や「似た者夫婦」などの言葉も一般的です。

夫妻: 敬意を示す必要があるときに使われます。他人の夫婦を指す場合、特に公的な場面や上司・目上の人に対して適しています。

このように、「夫婦」は親しみを持った表現、「夫妻」は改まった場面や他人に敬意を示す際に使われる表現です。状況に応じて使い分けることが重要です。