春の彼岸は、春分の日を中心に前後3日間を含む7日間であり、この期間にさまざまな仏事が執り行われます。
最初の3日間は「彼岸の入り」と呼ばれ、その次が「彼岸の中日」、最後の3日間は「彼岸の明け」と呼ばれます。彼岸の中日にはお墓参りなどを通じてご先祖様へ感謝し、前後3日間は悟りの境地に至るための六波羅蜜を1日1つずつ修める日とされています。秋の彼岸も同様の考え方があります。
春の彼岸においては、「彼岸」とは文字通り「岸の向こう」を指し、悟りの世界を表します。浄土系の信仰では、死後に阿弥陀如来の導きによって彼岸に渡ることができるとされ、彼岸の仏事は私たちも安全にたどり着けるようにとの祈りを込めたものです。
寺院によっては、彼岸の一週間中に法要を続けたり、供養祭を行ったり、檀家の家を回って法事を執り行ったりすることがあります。
また、彼岸には牡丹餅(ぼたもち)を供えて食べる習慣があります。春の彼岸では季節の花である牡丹に由来する牡丹餅を用い、秋の彼岸では御萩(おはぎ)が一般的に見られます。
春の彼岸の2024年はいつ?
2024年の春分の日は3月20日(水曜日)であり、この日を中心に春の彼岸が7日間にわたっています。
春分の日は年によって異なるため、春の彼岸の日程もそれに合わせて変動します。
2024年の春の彼岸は、2024年3月17日から2024年3月23日までの期間になります。
この期間内で、3月17日が彼岸の入り、3月20日が春分の日、そして3月23日が彼岸の明けとなっています。
春の彼岸食べ物でなぜぼたもちを食べるか?その理由と意味
春の彼岸において、「ぼたもち」がなぜ食べられるのか、その理由と意味についてご紹介します。
春には「ぼたもち」、秋には「おはぎ」が食べられます。これらの呼び名は季節ごとに変わりますが、共通してもち米とあんこを使用した食べ物であり、春のものを「ぼたもち」とし、漢字で書くと「牡丹餅」、秋のものを「おはぎ」として漢字で書くと「御萩」となります。
これらの呼び名は、それぞれの季節に咲く花に由来しています。
「ぼたもち」と「おはぎ」の違いは、主に「あんこ」にあります。
春の「ぼたもち」は「こしあん」を使用し、秋の「おはぎ」は「つぶあん」を使用します。
また、形状にも違いがあり、春のものは大きくて丸く、牡丹の花のようであり、秋のものは小さくて上品な俵型で、萩の花の形を模しています。
あんこの種類の違いは、小豆の収穫時期に由来しています。小豆は春に種まきされ、秋に収穫されます。
したがって、春の「ぼたもち」では収穫直後の小豆を使用し、「こしあん」としているのに対し、秋の「おはぎ」では収穫後しばらく経った小豆を使用し、「つぶあん」としているのです。
「おはぎ」や「ぼたもち」がお彼岸に供えられる由来には複数の説がありますが、一つの説として、小豆の赤い色が魔除けの効果があると信じられており、これらの食べ物が邪気を払うものとしてご先祖様に供えられてきたとされます。
また、「もち米」と「あんこ」の2つの要素を「合わせる」という言葉の語呂により、ご先祖様の心と自分たちの心を結びつけ、調和を意味するとも言われています。
昔は甘いスイーツが一般的ではなく、特に砂糖が貴重であった時代に、これらの食べ物は特別な贈り物とされ、感謝の気持ちや祈りを伝える手段でした。時代は変わっても、ご先祖様への思いは変わらないことでしょう。
春のお彼岸で食べるおはぎの作り方
簡単でミスがない!「おはぎ」を手作りしてみましょう。
<材料>4人分
もち米 1合
市販の小豆(あんこ) 400g
塩 少々
きな粉 大さじ4
砂糖(きび糖) 大さじ3
塩 少々
<手順>
1.もち米をよく洗って炊飯器に入れ、炊飯器1合の目盛りより少し少ない水で通常の炊飯モードで炊きます。 ※水に浸さなくても問題ありません。
2.炊いたもち米をボウルに移し、塩を振りかけてめん棒でつぶします。
3.粒が残る程度につぶすのが重要です。
4.あんこと2のもち米を8等分に分け、丸めます。
5.手であんこを平らにつぶし、その上にもち米をのせて包みます。
きな粉をまぶすのもおすすめのアレンジ。その場合、材料Aを混ぜ合わせたものをまぶしてお召し上がりください。
もち米をつぶす際に、あまりつぶしすぎずに粒が残るようにすると、時間がたっても柔らかい食感が楽しめます。
逆にしっかりつぶしすぎると、固くなりすぎるので注意が必要です。もし固くなってしまった場合は、電子レンジで軽く温めてください。
炊飯器を使用すれば、意外と手軽にできる「おはぎ」。今年のお彼岸に手作りの「おはぎ」を試してみませんか? 子どもたちと一緒に丸めるのも楽しいので、ぜひ挑戦してみてください。
春の彼岸に咲く花
アイリス、カーネーション、キンセンカ、スターチス、トルコキキョウ、フリージア、ユリ、ラン、スイートピー、チューリップ。これらの花が春のお彼岸に咲く花になります。
お彼岸には、故人が好んでいた花やその季節の花をお供えすることがお勧めされます。花を仏前に供える行為は、「供花(きょうか/くげ)」または「仏花(ぶっか)」と呼ばれます。
お彼岸の期間中、墓前や仏壇に供える花には特に決まりがありません。「菊(キク)」などの仏花の伝統にとらわれず、故人が愛した花やその季節にふさわしい花を選んで供えることがおすすめです。
ただし、供花には避けるべき種類も存在します。お彼岸の供花には厳格な規定はないものの、トゲのある花やツル性の花、毒を持つ花などは避けるべきです。
具体的な例としては、トゲのある花にはバラ、アザミ、ボケ、ヒイラギなどが含まれます。ツル性の花にはスイートピー、クレマチス、ノウゼンカズラなどがあり、毒を持つ花にはシャクナゲ、スイセン、ヒガンバナ、スズランなどが挙げられます。
ただし、故人との関係が密であれば神経質になる必要はなく、故人が好きだった花を気軽にお供えすることが良いでしょう。例えば、故人がバラの花を好んでいた場合は、トゲを取り除いてから供えることがおすすめされます。
春のお彼岸でのぼたもちの食べ物以外のお供物はどんなものがあるの?
ぼたもちやおはぎは春のお彼岸や秋のお彼岸でお供えするものとして定番ですが、お彼岸で一般的なお供え物には様々なものがあります。
以下ではお彼岸でよく見られるお供え物とその意味について紹介します。
花
仏前には花が欠かせず、お彼岸に供える花は「美しいものでご先祖様を飾る」「花を通じて命の儚さと尊さを感じる」「心を浄化し穏やかな気持ちになる」などの理由から重要視されています。
供える花の種類に特に決まりはありませんが、一般的にはキクやユリ、季節の花がよく用いられます。また、故人が好きだった花もぜひ考慮してみてください。
お彼岸団子
地域によってはお彼岸の初日に「入り団子」、最終日に「明け団子」を供える習慣があります。これらは総じてお彼岸団子と呼ばれ、感謝や敬意の意味が込められています。
食べ物のお供え
お彼岸に供える食べ物はその日のうちに下げ、家族で分かち合うことが許されています。
食べ物のお供えはご先祖様との分かち合いを象徴し、供養の一環となります。具体的な料理は地域や家庭によって異なりますが、その日のごちそうを楽しんでください。
精進料理
お彼岸には仏教の教えに基づく精進料理も供えられます。
肉や魚を避け、野菜・穀類・豆類・海藻類などを使用して作られるこの料理は、仏教の影響を受けたものです。お彼岸期間中は肉や魚を避け、精進料理を供えることが一般的です。
小豆めし
小豆は魔除けや不老長寿の象徴とされ、小豆めしはお彼岸にぴったりの料理です。
小豆の煮汁で炊いたうるち米を使用するため、赤飯とは異なるさっぱりとした食感があります。小豆めしも、お供え物として利用されます。
春のお彼岸の由来と歴史
春の彼岸の由来や歴史については、仏教の影響が大きく関わっています。彼岸とは、仏教用語で「岸の向こう」といった意味があり、悟りの境地を指します。以下は、春の彼岸にまつわる由来や歴史の一般的な解説です。
仏教の教えと彼岸
彼岸は仏教の考え方に基づいており、仏教では生死輪廻を経て悟りを得ることが目指されます。彼岸は、この悟りの境地を指すもので、「彼岸の彼方」は仏果の境地を表現しています。
彼岸の期間と春分の日
彼岸は春分の日と秋分の日を中心に行われます。春分の日は、太陽が真東から昇り真西に沈む瞬間で、昼夜の長さがほぼ等しい日です。この日を中日として、前後3日間を含めて7日間が春の彼岸の期間とされています。
彼岸の行事と意味
春の彼岸には、先祖を供養し感謝の気持ちを示すために、お墓参りが一般的です。彼岸中日には、特に墓参りや法要が行われます。
彼岸の期間中は、六波羅蜜(慈・愛・捨・禅・忍・智)と呼ばれる修行を行うことが奨励されます。これは、悟りへの一歩を意味します。
彼岸と供物
春の彼岸には、おはぎやぼたもちなどが供えられます。これは、故人に感謝の気持ちを示し、供養を行う習慣です。また、花や花環、精進料理、小豆めしも一般的な供物として用いられます。
日本の伝統行事
春の彼岸は日本の伝統行事の一つであり、家族が一堂に集まり、先祖を偲びつつ共に過ごす特別な時期です。お墓参りや供物の用意は、春の彼岸における重要な行事とされています。
春の彼岸は、仏教の教えと日本の伝統文化が融合したもので、故人への感謝と供養の心を大切にする時期とされています。
まとめ
春のお彼岸についてまとめてみました。
期間と日程
春のお彼岸は、春分の日を中心に前後約7日間で行われます。春分の日は毎年3月20日か21日に位置し、その前後3日間を含めた7日間がお彼岸の期間とされます。
仏事と行事
お彼岸には、前の3日間が「彼岸の入り(いり)」、中間が「彼岸の中日(ちゅうにち)」、そして最後の3日間が「彼岸の明け(あけ)」と呼ばれます。
お墓参りが一般的で、彼岸の中日にはご先祖様へ感謝を示し、前後3日間は六波羅蜜(慈・愛・捨・禅・忍・智)を修める日とされています。
お供え物
お彼岸のお供え物には、おはぎやぼたもちが一般的です。これらは、故人への感謝や供養の意味を込めています。
花や花環、精進料理、小豆めしなどもお彼岸に供えられ、特に故人が好きだったものや季節の食材が用いられます。
花と供花
お墓や仏壇には花が供えられます。キクやユリ、季節の花などが一般的で、美しい花を通じて故人への敬意や感謝を示します。
花を供える行為は、仏前に美を奉納することで清め、穏やかな心を持つことを意味します。
お彼岸団子
お彼岸には「入り団子」と「明け団子」と呼ばれるお彼岸団子を供える習慣があります。これは感謝や敬意を表すもので、お彼岸期間中に家族で食べることが一般的です。
その他の意味
お彼岸は故人との縁を深め、感謝と供養の期間とされています。春のお彼岸は特に、自然の中で新しい命が芽吹く季節と重なり、生と死の循環に思いを馳せる時期でもあります。
春のお彼岸は家族が一堂に集まり、故人を偲びつつ共に過ごす特別な時期であり、日本の伝統的な行事の一つとして大切にされています。
最近の春のお彼岸事情
最近では春のお彼岸も昔から続く春のお彼岸の基本的な趣旨や重要性は変わっていないものの、社会の変化やライフスタイルの変遷に伴い、一部の慣習や形式に変化が生じています。
その一例として以下のようなものがあります。
お墓参りの頻度:昔は春のお彼岸や秋のお彼岸が特にお墓参りのピークとされ、多くの人が一堂に集まって墓地を訪れました。最近では、都市化や忙しい生活スタイルの変化により、お墓参りの頻度が減少しているという傾向も見られます。
供物や食べ物の多様化:昔からの伝統的な供物としておはぎやぼたもちが一般的でしたが、最近では様々な食べ物や花、アレンジされた供物が用いられることがあります。また、近年ではスーパーマーケットなどで手軽に手に入るお墓参りセットが販売されていることもあります。
家族の在り方:昔は家族が一堂に集まり、春のお彼岸の期間中に集中的にお墓参りや法要を行うことが一般的でした。最近では、仕事や生活の都合から、家族がばらばらにお墓参りを行うケースも増えています。
お彼岸の理解度:近年では、宗教色が薄れつつある中で、お彼岸の意味や由来を理解している人が減少しているとも言われています。一方で、伝統行事としての重要性や、家族との結びつきを大切にする考え方は続いています。