シャベルとスコップの違いとは?基本的には同じものなの?

JIS規格によれば、上部が平らで足をかけて押せるものを「ショベル(シャベルと同じ)」、上部が曲線状で足をかけられないものを「スコップ」と定義していますが、実際には地域によって異なる呼び名が存在し、JIS規格の基準で説明しても理解されにくいことがあります。

関東(東日本)では、大型のものを「スコップ」、小型のものを「シャベル」と呼ぶことが一般的であり、一方、関西(西日本)では逆に大型のものを「シャベル」、小型のものを「スコップ」と呼ぶことが一般的です。これにより、地域ごとに呼称が逆転しています。

一部の辞書では、スコップを「小型のシャベル」と説明しており、西日本の呼び方が支持されています。また、「ショベルカー」を「スコップカー」と呼ばないため、大きいものが「シャベル」、小さいものが「スコップ」という印象を持つ人もいます。

また、先が尖った剣型のものを「シャベル」、先が真っ直ぐな四角いものを「スコップ」と区別する方法もあります。土木現場では、剣型のものを「剣スコ」、四角いものを「角スコ」と呼ぶことがあり、先が剣型でも四角でも「スコップ」であるとされています。

形状や大きさなど、様々な区別が存在するシャベルとスコップですが、最も明確な違いは、シャベルが英語の「shovel」から、スコップがオランダ語の「schop」からという語源の違いだけです。

シャベルはスコップなぜ関東と関西で違うのか?

関東:大きいものが「スコップ」、小さいものが「シャベル」

関東地方では、一般的に大きいものを「スコップ」、小さいものを「シャベル」と呼ぶ慣習があります。この使い分けは、JIS規格で定義された形状の違いではなく、主に道具の大きさに基づいています。

関西:大きいものが「シャベル」、小さいものが「スコップ」

関西地方では、大型のものを「シャベル」、小型のものを「スコップ」と呼ぶことが一般的であり、これは関東地方とは逆の呼び方です。辞書には「スコップ」が「小型のスコップ」と説明されており、関西地方の呼称が反映されています。

また、「油圧ショベル」は「ショベルカー」と呼ばれますが、「スコップカー」とは呼ばれません。これは関西地方での呼び方の影響もあり、大きいものを「シャベル」、小さいものを「スコップ」と明確に区別しています。

北海道や新潟:大きいものが「スコップ」、小さいものが「シャベル」

北海道や新潟では、関東地方と同様に大きいものを「スコップ」、小さいものを「シャベル」と呼ぶことが一般的です。また、豪雪地帯では大きさではなく、先端が尖っているものを「シャベル」、平らなものを「スコップ」と区別することもあります。

日本語において、スコップはオランダ語由来の「schop」(スホープ)とも呼ばれ、地域や道具の大きさによって呼び分けられることがあります。

漢字では「円匙(えんし)」と書かれることもあり、方言では「シャボロ」と呼ぶ地域も存在します。また、同様の用途を持つ大型の土木機械は「ショベル」(油圧ショベルなど)と呼ばれます。

これらのことからの予測をすると、関西地方は江戸時代の貿易で長崎がオランダと貿易していてスコップが定着していき、関東地方は黒船来航で江戸から英語のシャベルが定着していったのではないかと思います。

スコップの歴史と昔の言い方を紹介

スコップとシャベルは、もともと農業で使用されていた堀棒や踏み鋤から進化してきたと考えられています。そのためスコップやシャベルの昔の言い方は棍棒や踏み鋤とも言えます。

堀棒は土を掘るために先端をとがらせた棒であり、この堀棒が進化して鋤が生まれました。

鋤は、持ち手の棒に平たい刃先やフォークのように分かれた刃先が直角に取り付けられたものです。
この鋤は、持ち手を両手で握り、頭上に持ち上げ、先端部分を下に振り下ろすことで土を耕すために使われました。

日本では、鋤は弥生時代から農業に使用されていたと考えられています。

一般的な鋤は、持ち手に直角に取り付けられた刃先を持っていましたが、踏み鋤は刃先が持ち手部分に水平に取り付けられ、刃先を振り下ろすのではなく、足で地面を掘り起こしていくようになりました。

刃先を地面に斜めに差し込んで足をかけ、「テコの原理」を利用して土を掘り起こす方法は、まさにシャベルと同じ原理です。

歴史ある土掘りの道具: スコップ・シャベル

スコップとシャベルの原型である踏み鋤は、弥生時代には既に地面を掘り起こす道具として使われていました。

弥生時代は紀元前10世紀から紀元後3世紀ごろの時代です。

2000年以上前から、地面に斜めに先端を差し込み、足で体重をかけて掘り起こす方法が考案され、実際に使用されていたのです。

我々が普段当たり前に使っているスコップやシャベルには、壮大な歴史が込められていることを感じずにはいられません。

シャベルの歴史と昔の言い方を紹介

シャベルは踏み鋤とともに掘棒から進化したものとされています。

農業の起源は約1万5千年前に東南アジアで始まったイモ作農業にさかのぼります。

当初の農具は掘棒と鍬だけでしたが、鍬が農業の始まりとともに登場したのに対し、掘棒は農業が始まる以前から採集や狩猟の時代に使用されていました。

掘棒は農具の進化とともに踏み鋤やシャベルに変わっていきました。全金属製のシャベルは627年のハンダクの戦いで初めて使用されたと言われており、その実物は現在もエジプトのサルマーンモスクに保管されています。

日本語においては、「シャベル」と「スコップ」の区別はJIS規格において足をかける部分の有無で行われています。

一般的にはシャベルとスコップの呼び方は地域によって異なり、西日本では大型のものを「シャベル」、小型のものを「スコップ」と呼ぶことが一般的ですが、東日本では逆に小型のものを「シャベル」、大型のものを「スコップ」と呼ぶことがあります。

規格面では、日本産業規格(JIS)では土木用・農事用・家庭用のシャベルおよびスコップについて、JIS A 8902 ショベル及びスコップ (Shovels and Scoops) として規格化されています。

シャベルとスコップの違いは、さじ部が足をかけることのできる形状になっているものがシャベル、足をかけることのできないものがスコップとされており、シャベルには丸形や角形のさじ部があるものが含まれています。

シャベルとスコップの種類

シャベルは使用目的に応じて様々な種類が存在します。

剣(剣先)スコップ

尖った刃先を持ち、日本の土木作業で一般的に使用されるシャベル。全長は約1メートル強で、柄の終端はY字型になっており、グリップが付いています。古いバージョンでは柄の先端に直接握りがついていました。主に腕力だけで速く作業する際に適しています。

角(角型)スコップ

平スコップとも呼ばれ、直線状の方形のブレードを持つシャベル。剣先スコップに次いで広く使われ、土質によって使い分けられます。掘削だけでなく、砂利や堆肥などを掬い取るのにも適しています。

窓スコップ

ブレードに肉抜き穴が開けられたシャベルで、粒の大きい砂利を篩い分けたり、粘土質の対象をすくうために使用されます。通常のスコップより軽量で、大きな土塊を扱う際の労力を軽減します。

石炭用シャベル

幅広く平らな刃を持ち、石炭がこぼれ落ちないように刃の両脇が曲げられています。D字状の取っ手が付いています。

雪かき用シャベル

軽量なアルミニウムやプラスチック製の広い湾曲した刃を持ち、雪を押しやすく設計されています。老若男女を問わず使いやすいが、ブレードが軟らかいため磨耗が早いという欠点があります。

スペード

土掘り用のシャベルで、刃はゆるく湾曲しており、両脇は無い形状。地面に刃を突き刺して土をすくいます。農具としての踏み鋤とも呼ばれます。

塹壕用シャベル

軍用のシャベルで、刃の形状は剣先スコップやスペード型に似ています。主に塹壕を掘ったり整備したりする際に使用されます。

園芸用こて

小型のシャベルで、片手で持つことができ、苗の植え替えなどに使用される園芸用具。移植ごてとも呼ばれます。

軍隊におけるシャベルとは

現在の折りたたみ式の柄を持つシャベル

軍隊におけるシャベルの歴史は、1869年にデンマーク陸軍のヨハン・リンネマンによって始まり、彼はシャベル、のこぎり、ナイフ、フライパン、測定器の機能を兼ね備えたリンネマン式円匙の特許を取得しました。

このシャベルは金輪で刃に取り付けられた舌を締め付け、柄と刃を固定することができ、必要に応じて自由に分割できるという特徴があります。柄が破損した場合でも、現場で適当な木の枝や金属棒で代用できます。

リンネマン式円匙は初めはデンマーク陸軍で柄の脱着機能のみを残して簡略化されたモデルが256本しか採用されませんでしたが、第一次大戦の塹壕戦の確立によりシャベルの重要性が増し、オーストリア、ドイツ、フランス、ルーマニア、ロシアがリンネマン式円匙を採用しました。

ただし、ロシア以外の国はパテント料を支払わずに違法コピー品を使用していました。現代のロシア軍スペツナズもシャベルを使用した戦闘技術を訓練しています。

多くの軍用車両がシャベルを装備しており、これらは車内に収められるか、車外にツルハシやジャッキなどと一緒にクランプで固定され、車両が動けなくなった場合や陣地を構築する際に使用されます。

日本陸軍では、シャベルを「円匙」と表記し、「えんぴ」と読んでいました。しかし、「円匙」の正確な読みは「えんし」であり、「えんぴ」は誤読でした。また、大円匙は工兵が使用し、「小円匙」は歩兵が携行するもので、歩兵はしばしば小円匙を「耳かき」と俗称していました。

アメリカ陸軍は第二次世界大戦中の1943年にM1943 Entrenching toolを採用しました。

M1943はドイツ国防軍の1938年型シャベルを参考に設計され、柄と刃の取りつけ部分が回転して折りたため、携行が容易で、刃を柄と90度の角度で固定させることができました。同様の構造のものは今日でも各国で軍用や一般の使用に供されています。

まとめ

シャベルとスコップについてまとめました。

シャベルとスコップの定義

シャベル(Shovel): 主に土や砂を掘ったり移動させたりするための道具。刃が平らで、一般的には四角い形状をしている。

スコップ(Spade): 土を掘るための工具で、シャベルと同じく平らな刃を持つ。スコップの方が一般的に先が尖っており、土を切り開きやすい。

シャベルとスコップの形状の違い

シャベル: 刃が主に四角い形で、土を掘る際に量を移動しやすい。角スコップのように直線的な刃もある。

スコップ: 刃が先細りの形状で、土を効果的に切り開くことができる。先が尖っていることが特徴。

シャベルとスコップの用途

シャベル: 主に土や砂の移動、掘削に使用。庭の土を掘り起こす、穴を掘る、雪かきなどにも利用される。

スコップ: 主に土を切り開いて掘削するのに使用。庭や畑の土づくり、植木の植え付けなどに適している。

シャベルとスコップの刃の特性

シャベル: 刃が平らで広いため、土や砂を効率的に掘削し、量を移動できる。

スコップ: 刃が尖っており、土を切り開くのに適している。細かい作業や土の形成に向いている。

シャベルとスコップの日本語での呼び方

シャベル: 主にシャベルと呼ばれるが、地域や個人によってはスコップとも呼ばれることがある。

スコップ: 一般的にはスコップと呼ばれ、日本産業規格(JIS)では足をかける部分があるものをスコップ、無い物をシャベルと区別している。

シャベルとスコップの軍事利用

シャベルは軍隊で塹壕の掘削や作業、白兵戦での武器として使われることがある。

特殊な形状の軍用シャベルやエンターチングツールは、折りたたみ可能で携行しやすい特性を持つ。

シャベルとスコップの規格

日本産業規格(JIS)では、土木用・農事用・家庭用のシャベルおよびスコップについて規格が存在する。