「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」は「きゅうちょうふところにいればりょうしもころさず」と読みます。
鳥が追い詰められて逃げ場を失い、猟師の懐に飛び込んでも、猟師でさえ殺さない。それどころか、逃げ場を失った人が助けを求めて来たら、どんな事情があっても助けるべきだ、という意味です。
窮鳥懐に入れば猟師も殺さずの由来は?
窮鳥懐に入れば猟師も殺さずの由来は、『顔氏家訓』にあります。
中国の6世紀、顔之推が著したもので、全20編からなります。
この書は六朝時代の家庭生活、風俗、儀礼、学術、宗教などについての知識を提供し、家訓の源流として尊ばれています。
この教訓では、善事には力を貸し、闘争や悪事には手を貸さず、正しくないことをする仲間には加わらないようにすべきだと前置きした後、戦いに敗れたり苦境に立たされた者が助けを求めてきた場合には、大切にしてやるべきだと述べています。
『顔氏家訓』は、中国北斉の顔之推が書いた子々孫々に向けた教訓の書です。
全7巻(明の2巻本もあります)で、正確な成立年は明らかではありませんが、文書の中に「今雖混一」という表現があり、陳朝が滅んだ589年以降の作であると考えられます。
また、同文に「吾已六十余」とあることから、顔之推が60歳以上であることが示されています。
窮鳥懐に入れば猟師も殺さずの例文
日常会話での例文
状況: 友人が失業して困っているとき
会話: 「友達が仕事を失って、家賃も払えないって言ってたんだ。今度会って話を聞いてあげようかな。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 友人が苦しんでいるときに、支援を提供することを意味します。
状況: 学校で友人がいじめられているとき
会話: 「あの子、いじめられてるんだって。僕たちも助けてあげようよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからさ。」
解説: 誰かが苦しんでいるときに、助けの手を差し伸べることを促す表現です。
状況: 地域で自然災害が起きたとき
会話: 「今度の台風で、町のあちこちが被害を受けたんだよ。みんなで力を合わせて、被災者を支援しないと。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 災害被災者に対して、支援を提供する必要性を強調します。
状況: 家族の誰かが病気で入院しているとき
会話: 「お父さんが入院しているんだって。家事や仕事で手が回らないみたいだから、私たちも手伝おうよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだよ。」
解説: 家族が病気や怪我で苦しんでいるときに、手助けをすることの重要性を伝えます。
状況: ペットが迷子になったとき
会話: 「うちの犬、どこかに行っちゃったんだ。みんなで探しに行こうよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずって言うしね。」
解説: 迷子になったペットを見つけるために、助け合う必要性を示します。
状況: クラスメイトが宿題を忘れているとき
会話: 「明日の授業、宿題を忘れている子がいるって聞いたんだ。助けてあげようよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからさ。」
解説: 他人が困っているときに、手を差し伸べることの大切さを強調します。
状況: 部活の仲間が練習についていけないとき
会話: 「最近、練習についていけない子がいるんだ。一緒に練習をサポートしてあげようよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: チームメイトが苦しんでいるときに、支援を提供することの重要性を示します。
状況: 友人が家族と喧嘩して家を飛び出したとき
会話: 「友達が喧嘩して家を出ちゃったんだって。心配だから、手伝いに行こうよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだよ。」
解説: 友人が家庭の問題で苦しんでいるときに、支援を提供することの重要性を伝えます。
状況: ボランティア活動で高齢者の支援をするとき
会話: 「老人ホームでボランティアをするんだ。お年寄りたちの力になれるように頑張ろう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからさ。」
解説: 高齢者が支援を必要としているときに、手助けをすることの重要性を示します。
状況: 災害で被害を受けた地域に支援物資を送るとき
会話: 「地震で被害を受けた地域に、支援物資を送ることになったんだ。みんなで力を合わせて、できるだけ多くの人を助けよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 災害被災者に対して、支援を提供することの重要性を示します。
スポーツでの例文
状況: バスケットボールの試合中、相手チームの選手が負傷してしまった。
会話: 「相手チームの選手が負傷したみたいだ。一緒に手を差し伸べてあげよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 試合中に相手チームの選手が負傷した場合、スポーツマンシップを示すために手を差し伸べる必要性を強調します。
状況: サッカーの試合で、相手チームが1人少なくなってしまった。
会話: 「相手チームが1人少なくなったみたいだ。今のうちにリードを広げよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 相手チームが不利な状況になったときに、勝利を追求することの適切さを示します。
状況: テニスの試合で、相手選手が自分より技術が劣っていることが明らかになった。
会話: 「相手選手が技術的に劣っているみたいだけど、フェアプレイを心がけよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 相手選手が技術的に劣っている場合でも、フェアな競技を行うことの重要性を示します。
状況: 野球の試合で、自分のチームがリードしている状況。
会話: 「リードしているけど、油断は禁物だよ。最後まで集中してプレーしよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 勝利を確信していても、最後まで集中してプレーする必要性を強調します。
状況: ラグビーの試合中、相手選手が怪我をしていることに気付いた。
会話: 「相手選手が怪我をしているみたいだ。試合を止めてチェックしよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 試合中に相手選手が怪我をした場合、フェアな競技を実践するために試合を一時停止する必要性を示します。
状況: ゴルフの試合で、相手選手がミスショットをした。
会話: 「相手がミスショットをしたね。私たちも気を引き締めて、ミスのないプレーを心がけよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 相手選手がミスをした場合でも、自分たちも油断せずにベストを尽くすことの重要性を強調します。
状況: バレーボールの試合で、自分のチームがリードしている状況。
会話: 「リードしているけど、相手チームも諦めていないはず。気を引き締めてプレーしよう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: 試合の中でリードしていても、相手チームの攻撃を警戒してプレーする必要性を示します。
状況: フットボールの試合で、自分のチームが敗れた相手選手を励ます場面。
会話: 「試合お疲れさま。負けたけど、君のプレーは素晴らしかったよ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだから、次に向けて頑張ろうね。」
解説: 試合に負けた相手選手を励ます際に、次に向けて頑張ることの重要性を示します。
状況: ホッケーの試合中、チームメイトがファウルを犯した場面。
会話: 「ファウルを犯したけど、気にしないで。次のプレーで取り戻そう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからね。」
解説: チームメイトがミスをしても、気を取り直して次のプレーに集中することの重要性を示します。
状況: クリケットの試合中、相手チームがボールを拾うのを手伝っている場面。
会話: 「相手チームがボールを拾っているから手伝おうよ。競技中にも協力し合うのがスポーツの醍醐味だからね。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだからさ。」
解説: 競技中にも相手チームと協力し合うことの大切さを示し、スポーツの精神を強調します。
ビジネスシーンでの例文
状況: 会議で自社の競合他社が困難に直面していることが議題になった時。
会話: 「競合他社が困難に直面しているとの報告があったね。その際に手を差し伸べて支援を提供することは、業界全体の利益にも繋がるだろう。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだから、我々も協力を惜しまない方がいい。」
解説: 競合他社が苦境にある場合でも、協力して支援を提供することが業界全体に利益をもたらすという視点を示します。
状況: 新しいプロジェクトでのリーダーシップ会議で、チームメンバーのミスが議論されている時。
会話: 「今回のプロジェクトでチームメンバーがミスをしたとの報告があったね。ただし、我々も失敗を恐れず、相互協力で問題を解決していく必要がある。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだから、彼らをサポートして改善に努めよう。」
解説: チームメンバーの失敗に対して非難せず、相互協力で問題を解決することの重要性を示します。
状況: 売上が伸び悩んでいる会社で、従業員間で協力不足が指摘されている場面。
会話: 「売上の伸び悩みが続いていることを受けて、従業員間の協力不足が問題視されているね。しかし、困難な時こそ協力し合うことが大切だ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、チーム全体で問題に立ち向かうべきだ。」
解説: 会社が困難な状況にある時こそ、従業員間での協力が重要であることを強調します。
状況: 取引先の企業が経済的困難に陥っていることが報告された時。
会話: 「取引先の企業が経済的な困難に直面しているとの報告があったね。我々は彼らの立場に立って、協力しサポートするべきだ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、取引先との良好な関係を維持するためにも協力が必要だ。」
解説: 取引先が苦境にある時こそ、支援を提供して良好な関係を維持することの重要性を示します。
状況: 新商品の開発プロジェクトで、競合他社が同様の商品を発表した場合。
会話: 「競合他社が同様の商品を発表したとの報告があったね。しかし、我々も自社の強みを活かして差別化を図り、顧客の信頼を勝ち取ることができる。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、チャレンジのチャンスと捉えて前向きに取り組もう。」
解説: 競合他社が同様の商品を発表した場合でも、自社の強みを活かして差別化を図ることの重要性を示します。
状況: プロジェクトの進行中に予想外の問題が発生した場面。
会話: 「プロジェクトの進行中に予想外の問題が発生したね。しかし、我々は困難に立ち向かって成長するチャンスだと捉え、チーム全体で問題解決に取り組むべきだ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、逆境を乗り越えることでより強固なチームとなれる。」
解説: 予想外の問題が発生した場合でも、チーム全体で協力して問題解決に取り組むことの重要性を示します。
状況: チームメンバー間でのコミュニケーション不足がプロジェクトに影響を与えている場面。
会話: 「それでは、コミュニケーションを改善するためのアクションプランを策定しましょう。お互いに情報共有を促進し、チーム全体で目標に向かって協力し合うことが重要です。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、チームメンバー同士のコラボレーションを強化し、プロジェクトの成功に向けて前進しましょう。」
解説: チーム内のコミュニケーション不足がプロジェクトに影響を与える場合、チームメンバーがお互いに情報を共有し、効果的なコラボレーションを行うことの重要性を示します。
状況: 重要なクライアントとの契約が危機に瀕している場面。
会話: 「クライアントとの契約が危機に瀕しているとの報告があったね。しかし、我々はクライアントの立場に立って、問題解決に向けて全力で取り組むべきだ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、クライアントとの信頼関係を守るために最善の努力を尽くそう。」
解説: 重要なクライアントとの契約が危機に瀕している場合、チーム全体でクライアントの信頼を守るために全力で対応することの重要性を示します。
状況: 社内のコスト削減プロジェクトで、従業員の不満が増大している場面。
会話: 「コスト削減プロジェクトが進行中で、従業員の不満が増大しているとの報告があったね。しかし、我々は困難に立ち向かって企業の利益を守る責任がある。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、従業員とのコミュニケーションを強化し、改善策を共に模索していこう。」
解説: コスト削減プロジェクトによって従業員の不満が増大している場合、従業員とのコミュニケーションを強化し、改善策を共に模索することの重要性を示します。
状況: 新規プロジェクトの立ち上げで、チームメンバー間での意見の対立が生じている場面。
会話: 「新規プロジェクトの立ち上げにあたって、チームメンバー間で意見の対立が生じているとの報告があったね。しかし、異なる意見が生産性を高める可能性もある。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、異なる視点を尊重し、最良の解決策を見出すためにディスカッションを進めよう。」
解説: 新規プロジェクトの立ち上げで意見の対立が生じている場合、異なる視点を尊重し、最良の解決策を見出すためのディスカッションを進めることの重要性を示します。
まとめ
窮鳥懐に入れば猟師も殺さずという故事成語は、困難に立たされた者に対する同情や慈悲の心を表現することを意味します。以下は、この諺の要点をまとめたものです。
同情と慈悲の表現: 鳥が窮地に追い詰められ、猟師の懐に飛び込んでも猟師が殺すことはしない、という状況を描写しています。これは、困難や苦境にある者に対して同情や慈悲の心を持つことの重要性を示唆しています。
助け合いの精神: 困難にある者に対して助けの手を差し伸べることが大切であることを示しています。猟師が窮鳥を殺さずに助けるように、人々も困難にある人々に対して助け合う精神が求められるという意味が含まれています。
倫理と道徳: 倫理的な教訓も含んでおり、他者の苦境に同情し、優しさや思いやりを持つことの重要性を強調しています。それによって、個人や社会全体がより良い関係を築くことができるとされています。
寛容と理解:人々が他者の立場や状況を理解し、寛容であることの重要性を示唆しています。窮鳥のように苦境にある者を理解し、彼らに対して残酷でなく、寛容であることが求められます。
総じて、「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」という故事成語は、同情、助け合い、倫理、寛容の精神を表現し、困難や苦境にある人々に対する思いやりと理解を促す教訓として広く理解されています。