薄力粉・中力粉・強力粉の違いとは?

小麦粉は、含まれるグルテンの量と質に基づいて「薄力粉」「中力粉」「強力粉」の3種類に分類されます。グルテンは粘性と弾性を持ち、この強さによって名前が決まります。

薄力粉は、主に軟質小麦から作られ、タンパク質含量が6.5~8.5%と低めです。粒子が細かく、グルテンの力も弱いので、ケーキや天ぷらの衣などに適しています。

中力粉は、中間質小麦や軟質小麦から作られ、タンパク質含量が8.5~10.5%です。薄力粉と強力粉の中間的な性質を持ち、うどんや餃子の皮などに使われます。

強力粉は、硬質小麦から作られ、タンパク質含量が11.5~13%と高めです。粒子が粗く、グルテンの力が強いので、パンやラーメンなどに向いています。

中力粉が手に入らない場合は、薄力粉と強力粉を混ぜて代用することもできます。また、各粉は単独で使用されるとは限らず、用途に応じて適切に配合されることが多いです。

薄力粉と強力粉の見分け方は、粒子の細かさです。見た目で判断できない場合は、手で握ったときの固まり具合で区別できます。固まりやすいのが薄力粉、崩れやすいのが強力粉です。

小麦粉とその歴史

小麦粉は、小麦を挽いて作られる粉で、パンや麺類、ケーキ、お菓子など、さまざまな食品に利用されます。古代エジプトでは既に使用され、世界中で広く普及し、日本でも中世後期から一般的になりました。

小麦粉は質や使用部位、挽き方によって分類され、それぞれ異なる用途に向いています。歴史的にも小麦と人類の関わりは古く、最も古い作物の一つとされています。

種子は主に粉に挽かれ、小麦粉として利用されます。初期の小麦は粥のようにして食べられていましたが、粉にすることで加熱時間を短縮し、食感も改善されました。

紀元前3,000年頃の古代エジプトでは、すでに発酵させないパンが食べられていたとの記録が残っています。

産業革命以降、蒸気機関の利用により製粉が大規模化し、世界的に流通するようになりました。19世紀には、現代でも使われる製粉機が登場し、製粉の効率と品質が向上しました。

日本における小麦粉の歴史

日本では縄文時代には、石皿や磨石を使って植物や堅果を粉砕し、食べる粉食の習慣がありました。

しかし、弥生時代には稲作農耕が始まり、石皿や磨石は使われなくなり、米や大麦、雑穀などの穀物はそのまま粒の状態で食べられるようになりました。

小麦は弥生時代以降に日本に伝わり、古代には麺類も貴族の間で食べられるようになりました。

中世前期には、加工道具としてこね鉢やすり鉢が再び現れ、さらに中世後期には石臼も使われるようになり、僧侶や武士、一般庶民の間で粉食の習慣が復活しました。

江戸時代にはうどんやそばなども食べられるようになりました。

近代に入ると、1940年9月に戦時色が強まり、業務用の小麦粉が配給制度の対象になりました。

そして、1941年4月には家庭用の小麦粉も配給されるようになりました。

配給される量は、2人から3人家庭で100匁(約2か月分)でした。戦後の食糧不足時には、アメリカの小麦戦略から余剰分が援助物資として供給され、学校給食でパンの食習慣が広まりました。

小麦粉の栄養の特徴

小麦粉は、ふすまを取り除いて製粉したものと、ふすまを含めて製粉したものでは栄養の特性が異なります。

ふすまを取り除いて製粉した小麦粉は、主にデンプンが7〜8割を占め、タンパク質も約1割含まれます。

このタンパク質にはグリアジンとグルテニンが含まれ、水を吸収すると粘りのあるグルテンになります。

グルテンの量が多くて質の強いものからは、強力粉、中力粉、薄力粉と分類されます。また、グルテンの量は品種だけでなく、雨の影響も受けます。

雨が多いと小麦はグルテンを形成しにくくなるためです。

一方、ふすまなども含めて製粉した全粒粉には、食物繊維が豊富に含まれています。

通常の小麦粉100gに含まれる食物繊維が2.7gに対し、全粒粉には11.2gも含まれています。

食物繊維には腸の調子を整える効果があり、便秘がちな人に適しています。また、全粒粉にはビタミンやミネラルも豊富に含まれており、特にB1、B2、B6のビタミンや鉄分、カリウム、カルシウムなどのミネラルが多く含まれています。

グラハム粉は、全粒粉でありながら、精製法が通常の全粒粉と異なり、血糖値の上昇が緩やかになる特徴があります。

表皮と胚芽の部分が粗挽きされており、健康的な食品に利用されることがあります。

小麦粉の性質はカロテノイド色素により淡いクリーム色をしています。

粒子は細かく、粉塵爆発の危険性もあるため、一部の自治体では指定可燃物とされています。

粉末調味料などと混ざりやすく、プレミックスやビタミンの添加に利用されることもあります。ムニエルなどの衣や、麺類の打ち粉としても使われますが、保管方法によっては異臭が付くことがあります。

小麦粉の種類について紹介

小麦粉は、ふすまを取り除いてから製粉するものと、ふすまを含めて製粉するものによって、異なる性質を持ちます。

ふすまを取り除いたものは強力粉、中力粉、薄力粉に分類され、ふすまを含めたものは全粒粉やグラハム粉といった種類があります。

また、でんぷん成分だけを取り出したものは浮き粉と呼ばれます。

強力粉

強力粉は、タンパク質の割合が12%以上のもので、パンやうどん、中華麺、柔らかいソフト麺などに使われます。主にアメリカやカナダ産の硬質小麦が使用されますが、焼くと硬い仕上がりになるため、洋菓子には向きません。

中力粉

中力粉は、タンパク質の割合が9%前後のもので、たこ焼きなどに用いられます。主にオーストラリアや国内産の中間質小麦が使用され、強力粉と薄力粉を混ぜることで中間的な性質になりますが、本来の中力粉とはやや異なる加工特性があります。

薄力粉

薄力粉は、タンパク質の割合が8.5%以下のもので、ケーキや天ぷら、カレーなどに使われます。主にアメリカ産の軟質小麦が使用され、タンパク質の含有量を抑えるほど繊細な仕上がりになります。さらに、タンパク質をさらに減らした商品も存在し、製菓用薄力粉やスーパーバイオレットとして販売されています。

全粒粉

全粒粉は、小麦の表皮、胚芽、胚乳を全て粉にしたもので、食物繊維やミネラル、ビタミンが豊富に含まれています。主にパンやビスケット、シリアル食品の材料として利用されます。特徴としては、香ばしい風味と歯ごたえのある食感が挙げられます。通常の小麦粉に比べ栄養価が高く、食物繊維や鉄分、ビタミンB1の含有量が多いです。ただし保存性は通常の小麦粉ほど良くありません。

1837年にアメリカのシルベスター・グラハムがその栄養価を注目し、全粒粉の利用を提唱しました。一部では「グラハム粉」とも呼ばれていますが、現在の「グラハム粉」は全粒粉全般ではなく、胚乳を通常の小麦粉と同じように挽いたものと、表皮や胚芽を粗挽きにして混ぜ合わせたものです。

全粒粉は強力粉に加えて使用することで独特の風味やほのかな酸味、コクを楽しむことができます。しかし、全粒粉だけでパンを作ることは通常行われません。パンに使用する場合は、強力粉に全粒粉を加えるか、他の材料と組み合わせて使います。

全粒粉はパンやマフィンだけでなく、ケーキや武蔵野うどん、インドのチャパティなどにも使用されています。製麺業界でも試みられてきましたが、グルテンの形成が困難なため、小麦粉の一部に全粒粉を加える程度に留まっていました。最近では、石丸製麺が国産小麦による全粒粉100%のうどんを開発し販売しています。

グラハム粉

グラハム粉は、小麦を粗く挽いた粉です。全粒粉と同様、全粒穀物から作られますが、より粗く挽かれており、ふるいにかけられないことが特徴です。

ざらざらとした食感が特徴で、栄養価が高く、糖質の量が少ないため、ダイエットや健康志向の食事に向いています。健康食品志向のクラッカーやシリアル食品などでよく利用され、パンの表面に使用すると独特の食感を楽しめます。

「グラハム」の名前は、菜食禁酒主義の牧師シルベスター・グラハムに由来します。彼は小麦粉の製粉とパンの焼き方において、穀物の全てを活用することを提唱しました。

一時期、グラハム粉の模倣品が販売されましたが、1906年の純正食品薬品法の施行により、市場から排除されました。1913年の報告では、グラハム粉から作られたパンのたんぱく質含有量は全粒粉と同様であるとされています。

セモリナ粉

セモリナ粉は、穀物(小麦、米、トウモロコシなど)を粗く挽いたものを指します。現代では、主にデュラム小麦を粗く挽いたミドリング粉を指し、パスタやシリアル、プディング、クスクスなどの調理に使用されます。

小麦の製粉には溝の付いた鉄製ローラーが使われます。穀物が製粉機に入れられると、麦粒から胚乳と胚芽が取り除かれ、澱粉が粗く砕かれます。この胚乳粒子がセモリナとなります。そして、この粉はさらに砕かれて小麦粉になります。この過程により、異なるグレードの小麦粉が生産されます。

セモリナは黄色い色合いで、クスクスなどの乾燥製品の原料として使われます。クスクスはセモリナ粉と細かく挽いた小麦粉を混ぜ合わせて作られます。

小麦粉が柔らかい小麦から作られる場合、粉の色は白く、セモリナとは呼ばれません。これをファリナまたはクリーム・オブ・ホイートと呼びます。セモリナはさまざまなデザートや朝食料理の材料として、世界中で広く使用されています。

さらに、他の穀物から作られた粉もセモリナと呼ばれることがあります。南インドや北インドなど、さまざまな料理文化で幅広く利用されています。

浮き粉

浮き粉は、生地から分離されたグルテン以外の澱粉分から作られます。この粉は澱粉だけで構成されており、片栗粉のような性質を持ちます。主に明石焼きや和菓子、香港の透明な皮の海老餃子などの材料として広く使用されています。

まとめ

強力粉、中力粉、薄力粉は、小麦粉の種類の一部であり、それぞれ異なる特性と用途を持っています。以下にそれぞれの特徴をまとめます。

強力粉

タンパク質の含有量: 強力粉は、タンパク質の含有量が高く、通常は12%以上です。これにより、粘りや弾力性が高く、よく伸びる性質を持ちます。

用途: 主にパン、うどん、中華麺、学校給食などに使用されます。パンなどの独特の食感と膨らみを生み出すのに適しています。

製造原料: 主にアメリカやカナダで生産される硬質小麦(パンコムギ)が使用されます。

中力粉

タンパク質の含有量: 中力粉のタンパク質の含有量は、強力粉と薄力粉の中間で、通常は9%前後です。

用途: たこ焼きなどの和菓子や、パン生地を作る際に強力粉と薄力粉の中間的な性質が求められる場合に使用されます。

製造原料: オーストラリアや国内産の中間質の小麦が主に使用されます。

薄力粉

タンパク質の含有量: 薄力粉はタンパク質の含有量が比較的低く、通常は8.5%以下です。そのため、粘りや弾力性が少なく、柔らかな仕上がりとなります。

用途: ケーキ、クッキー、天ぷら、カレーなど、繊細な食品や揚げ物に使用されます。軽やかな食感やサクサク感を生み出すのに適しています。

製造原料: 主にアメリカ産の軟質小麦が使用されます。

これらの小麦粉の種類は、それぞれ異なる製品特性を持ち、料理や製菓において適切な選択が重要です。