「五里霧中」という言葉は、「ごりむちゅう」と読みます。
この言葉にはいくつかの意味があります。霧に包まれて進むべき方向がわからなくなることを指す場合のほかに、物事の判断がつかずどうすればよいか迷うことも意味します。
「五里霧中」とは、広い範囲に霧がかかっており進むべき方向がわからなくなる状況を表す言葉です。
物事の状況が全く見えず、方針を立てられなくなることや、どう行動すればよいかが分からずに迷うことを指します。また、そのような状態で手探りで進んでいこうとする様子も表現する言葉です。
五里霧中の由来とは?
五里霧中という言葉の語源は、中国漢王朝後期に関する歴史書『後漢書』に描かれた儒学者張楷の話に由来します。
張楷は人付き合いが苦手で、「五里霧」という秘術を使ってしばしば姿を隠していたとされています。これが「五里霧中」という表現の元になっています。
物語では、広がる霧を作り出して逃げるという内容が描かれていますが、「里」という単位の長さは時代によって異なります。
尺貫法に基づくと約20kmに相当しますが、日本で伝わった当時の単位ではおよそ2.5kmとされています。
また、「五里霧中」を漢字に変換する際には、「霧」を「夢」と誤変換することがよく見られますので注意が必要です。正しくは「霧」ですので、誤解を避けるために正確な漢字を使用しましょう。
後漢書とは?
後漢書(こうかんしょ)は、中国の後漢時代後期から三国時代初期にかけての歴史をまとめた歴史書です。
成立と編纂
『後漢書』は、東晋の宰相である范冉(はんざん)が主導して、4世紀の中ごろに編纂されました。その後、完結したのは5世紀初頭です。
編纂には多くの学者や文人が関与し、当時の文献や公文書、前代の歴史書などを引用しながら記述されました。
内容と構成
『後漢書』は全100巻からなり、そのうち98巻が正史で、2巻が附録(ふろく)です。
正史の部分では、後漢の歴史やその後の三国時代の歴史を詳細に記述しています。特に後漢末期からの混乱や三国鼎立時代の軍事・政治的な出来事が詳述されています。
記述の特徴
『後漢書』は、中国古代の歴史書としては比較的客観的で詳細な記述が特徴です。
著名な人物や事件についても多くの資料を基に、事実を重視して描かれています。ただし、後漢末期の混乱期の情報が不足している部分もあります。
影響と評価
『後漢書』はその後の中国の歴史書に大きな影響を与えました。特に後漢末期から三国時代の歴史の記録は、後世の歴史家や文人に多大な影響を与えました。
文学的にも一定の評価を受けており、その記述の明瞭さと豊富さが称賛されています。
『後漢書』は中国古代の重要な歴史書であり、後漢末期から三国時代の動乱期を知る上で貴重な資料とされています。
五里霧中の類義語を紹介
五里霧中に類似する故事成語や表現には、以下のようなものがあります。
手探りで進む(てさぐりですすむ)
「手探りで進む」とは、あまり情報や指針がなく、試行錯誤しながら進むことを指します。具体的な目標や方向が不明確で、行く手を模索しながら進む状況を表現します。
迷走する(めいそうする)
「迷走する」とは、方針や目的が定まらず、あてどなく進むことを意味します。混乱や決断の困難な状態を表現する言葉であり、物事の進め方が見えない状態を指します。
方針を見失う(ほうしんをみうしなう)
「方針を見失う」とは、明確な目的や方向性を失い、行動の軌道修正が困難な状況を指します。元々定まっていた計画や方針が、何らかの理由で見失われた状態を表現します。
目を回す(めをまわす)
「目を回す」とは、状況や情報が複雑すぎて、どこに注意を向ければよいか分からない状態を指します。多くの要素や情報に取り囲まれ、適切な行動を取るのが難しい状況を表現します。
途方に暮れる(とほうにくれる)
「途方に暮れる」とは、物事の進展や解決策が見えずに悩んでいる状態を指します。手がかりや解決方法が得られないため、どうすればよいか分からなくなることを表現します。
これらの故事成語や表現は、それぞれが異なるニュアンスを持ちながらも、共通して物事が見通しが立たずに迷走している状況を表現しています。
まとめ
五里霧中は、日本語の表現で、主に以下のような意味を持ちます。
方向が見えない状態
原義としては、広い範囲に霧がかかり、どちらに進めばよいか方向が見えなくなることを指します。比喩的には、物事が見通しが立たず、進むべき方策や解決策が見えない状態を表現します。
決断がつかず迷っている状態
物事の判断がつかず、どう行動すればよいか迷っている状態も含みます。情報や状況が不透明で、正しい方向や行動が確定しないため、手探り状態であることを表します。
困難に直面している状況
困難や混乱に直面しており、解決策を見出せない状態を指します。進展が望めない中で、立て直すための方法を模索しているときにも用いられます。
間違った漢字変換の例
「五里霧中」の漢字表記に誤りが多いことから、正しい漢字「霧」を誤って「夢」に置き換えて「五里夢中」と表記されることがある点も指摘されます。
このように、「五里霧中」は言葉の表面的な意味だけでなく、物事が不透明で進路が見えない状態や、判断が難しい複雑な状況を包括的に表現する言葉です。