おいりの主な伝承地域は鳥取県の東部地域になります。主な使用食材としては、米、水飴です。
「おいり」は、家庭で余ったご飯を無駄にせず活用するために作られてきた伝統菓子です。
かつて因幡地方の家庭では、残ったご飯を水で洗い、乾燥させた後に炒って「おいり」を作ったとされています。
この「炒る」という作業が「おいり」という名前の由来とされています。
また、家庭によっては残ったご飯以外の食材も加えて作ることがありました。食材を無駄にしないという精神から生まれた家庭料理です。
「おいり」はひな祭りには欠かせないお菓子です。
因幡地方では、人形に穢れや災厄を移し、水に流す「流し雛」の風習がありましたが、現在では鳥取市用瀬町などにわずかに残るのみで、「用瀬のひな送り」として県の無形民俗文化財に指定されています。
流し雛を行う際には、菱餅や桃の花とともに「おいり」も添えられていました。
鳥取県では旧暦でひな祭りを行うことが多く、県内のひな祭りイベントは4月にも開催されます。そのため、1月や2月から旧暦に合わせて4月まで、「おいり」を購入して食べることができます。
「おいり」の作り方は簡単で、乾燥させた米を炒り、それに水飴を絡め、熱いうちに丸く形成します。
家庭で「おいり」を作る際には、家にある材料や食べる人の好みに応じて、オリジナルの「おいり」が作られてきました。
水飴を煮る際にしょうが汁を加えるのもおすすめです。材料は作る人によって異なり、玄米や白米、小麦粉、米粉、ポン菓子などが使われることがあります。
しかし、現在ではスーパーマーケットや和菓子店で購入するのが一般的です。昔ながらのレシピでは着色はしませんが、ピンクや緑に軽く色づけした「おいり」を製造するお店もあります。
おいりのレシピと材料
材料(約50個分)
白米または玄米:500g
カラフルな乾燥餅:大さじ2
水飴:260g
砂糖:160g
塩:小さじ1/2
水:40ml
作り方
1:白米または玄米をポン菓子状に加工します。
2:餅を3~5mmの大きさに小さく切り、硬い場合は割って、軽く炒っておきます。
3:鍋に水飴、砂糖、塩、水を入れ、煮立たせます。泡が小さくなり、しゃもじで持ち上げた際に糸を引く状態になったら、ポン米と準備した餅を加え、手早く混ぜます。
4:温かいうちに、手に少量のサラダ油を塗りながら、適当な大きさに丸めて形を整えます(まん丸よりも楕円形の方が食べやすいです)。
5:※熱いうちに固く握るのではなく、手のひらで転がすようにして丸めます。
6:※冷めた場合は再度火にかけて水飴を溶かしながら混ぜますが、焦げつかないように注意してください。
7:※お好みで、しょうが汁(大さじ3~5程度)を水飴を煮る際に加えることも可能です。この場合、水飴が煮上がってから加えるようにしましょう。最初に加えると、泡が立ち煮詰まり具合が判断しにくくなります。
8:※「ポン」とは、米を加工機で膨らませることを指します。米や玄米を業者に加工してもらうか、すでに加工されたものを購入してください(砂糖が表面についているものは避けてください)。
※レシピは地域や家庭によって異なる場合があります。
流し雛とは?
鳥取県東部地域の「流し雛(ながしびな)」は、ひな祭りに関連した伝統行事で、特に鳥取市用瀬町(もちがせちょう)で行われる「用瀬のひな送り」が有名です。
この行事は、古くから続く民間の風習で、人形に穢れや災厄を移して川に流すことで、厄を払うという意味合いがあります。
用瀬のひな送り
「用瀬のひな送り」は、鳥取県指定の無形民俗文化財として認められており、現在も継承されています。行事は毎年旧暦の3月3日(現在では新暦で4月に行われることが多い)に行われ、地域住民や観光客が参加します。
行事の概要
行事の際には、木や紙で作られた雛人形が用意され、これに穢れを移した後、人形を川に流します。川に流される人形は、川下にある網で回収され、後に供養されることが多いです。この儀式を通じて、人々は健康や家内安全、災厄の回避を祈ります。
文化的な意義
「流し雛」は、地域の伝統行事として重要な位置を占めており、子どもたちに昔からの習慣を伝える機会でもあります。また、この行事は観光資源としても注目され、地域の文化を発信する役割も果たしています。
現代の流し雛
現在、「用瀬のひな送り」は地域の重要なイベントとして行われ、地元住民だけでなく、多くの観光客も参加します。行事に合わせて様々な関連イベントが行われ、地域全体が賑わいます。また、この行事を通じて、伝統文化の保存と継承が進められています。
このように、鳥取県東部地域の「流し雛」は、地域の歴史と文化を象徴する行事であり、現代でも大切に守られています。
まとめ
おいりは、鳥取県東部地域で伝統的に作られているお菓子で、主にひな祭りに関連して食べられます。このお菓子は、余ったご飯や家庭にある食材を無駄にせず活用するために作られてきました。
「おいり」の名前は、昔、因幡地方でご飯を水で洗い、乾燥させてから炒って作ったことに由来しています。この「炒る(いる)」という作業が名前の由来とされています。
もともと家庭で作られていたもので、食べ物を無駄にしないという考えから生まれた家庭料理です。
「おいり」は、地域の伝統を反映したお菓子であり、家族や地域での絆を深めるために食べられます。食べ物を無駄にしない精神を体現するもので、地域文化の保存に貢献しています。
「おいり」は、鳥取県の伝統的な文化と食文化を象徴するお菓子で、地域の人々に愛され続けています。