鳥取県の郷土料理スルメの麹漬けとは?

スルメの麹漬けの伝承地域は鳥取県全域です。使用材料は、スルメイカ、塩漬け野菜、麹になります。

鳥取県は日本海に面し、冬は北からの寒気によって雪が多く積もるため、特に山間部では冬季に食材の確保が難しい状況が続いていました。

そんな中、鳥取県では秋に旬を迎えるスルメイカが豊富にとれます。

このスルメイカを保存し、冬に備えた食料として誕生したのが「スルメの麹漬け」です。

生のイカを干して乾燥させることで、臭みを抑え、適度な塩味を持たせたスルメイカを使用するのが特徴です。

スルメイカを細かく刻み、麹に漬けて発酵させることで、風味が増し、柔らかく仕上がります。

かつては味噌や醤油も家庭で手作りされていたことから、家庭ごとに異なる味わいの麹漬けが「おふくろの味」として親しまれていました。

また、野菜の塩漬けと一緒に漬けるのが一般的で、使用される野菜はきゅうり、しその葉、なす、鷹の爪、わさび、ピーマンなど多岐にわたり、色鮮やかな見た目も特徴です。

現在では、真空パック技術のおかげで長期保存が可能となり、鳥取県の土産物としても広く知られるようになりました。

スルメイカの旬は9月から11月まで。旬の時期にとれたスルメイカを一日干し、刻んで麹に漬け込んで10日から2週間ほど発酵させると、冬の訪れとともに食べ頃を迎えます。冷凍や真空パックにすれば長期保存も可能です。

スルメの麹漬けは、刻んだ大葉と共に熱々のご飯やお茶漬けにのせたり、日本酒の肴として楽しむのが一般的です。

また、クラッカーにチーズと一緒にのせたり、野菜スティックに添えることで洋酒にも合います。さらに、キャベツと炒めてパスタに絡めるなど、調味料としても活用できます。麹の甘さが特徴的で、そのまま食べても美味しいです。

スルメの麹漬けのレシピと材料

材料(スルメイカ5枚分)

米麹:800g~1kg程度
一夜干しのスルメイカ:5~6枚

【調味料A】
醤油:3カップ
酒:2カップ
みりん:1カップ
砂糖:100g

塩漬け野菜(しその葉、しその実、なす、きゅうり、みょうが、塩など):適量

作り方

1:スルメイカを3mm×3cmの細長い短冊状に切り、水で軽く洗った後、酒を振りかけます。

2:麹をほぐしながらスルメイカに加え、全体をよく混ぜ合わせます。

3:野菜の塩漬けを水で洗い、塩分を抜いてから細かく刻みます。

4:2と3を合わせ、一度煮立たせて冷ました調味料Aを加え、よく混ぜて壺や容器に入れ、重しをします。

5:時々混ぜながら、分量外の酒やみりん、醤油などを好みに応じて追加します。

6:漬け込みは10月から3月頃が適期で、20日から30日間ほどが目安です。夏場であれば、10日前後で香り豊かな麹漬けが完成します。

※レシピは地域や家庭によって異なる場合があります。

スルメについて紹介

スルメは、イカの内臓を取り除いて乾燥させた加工食品であり、乾物の一種です。日本や朝鮮半島、中国南部、東南アジアなどで古くから利用され、長期間の保存に適しています。日本では、縁起の良い食品とされ、結納品として「寿留女」と書かれることもあります。また、俗に「アタリメ」とも呼ばれることがあります。

ヤリイカやケンサキイカ、スルメイカなどのイカの身を広げ、内臓や眼球を取り除き、足と一緒に竹串で固定します。その後、天日干しや室内での火を使った乾燥(機械乾燥など)で水分を抜きます。この工程で、水分は元の重量の約20%まで減少します。

スルメは、長期間の保存が可能で、水で戻して出汁を取ったり、煮物に使ったり、昆布や数の子と一緒に漬け込む松前漬けなどの料理に用いることができます。また、火であぶってそのまま食べることもでき、これは素朴ながらも人気のある酒の肴の一つです。スルメは非常に硬く、よく噛まなければ飲み込むのが難しい食品です。

スルメの歴史と流通について

スルメは江戸時代から清国への主要な輸出品として扱われていました。当時のスルメは、以下の等級や種類に分類されていました。

一番スルメ:ヤリイカやケンサキイカを乾燥させたもの
二番スルメ:スルメイカを乾燥させたもの
甲付スルメ:シリヤケイカを乾燥させたもの
袋スルメ:アオリイカを乾燥させたもので、外套を広げずに乾燥されることからこの名前が付いています

明治時代以降も、日本から中国や東南アジアの華僑への輸出は続きました。

しかし、第二次世界大戦後、国共内戦や中華人民共和国の成立により、中国本土への輸出は中断しましたが、香港、台湾、シンガポールなどの東南アジア地域への輸出は継続されました。

1951年からは、日本が台湾と行った貿易において、バナナの輸入枠と水産物の輸出枠がリンクされる形で、スルメも日本から輸出される主要な品目の一つでした。

しかし、朝鮮戦争の停戦後、韓国や北朝鮮産のスルメが市場に出回り始め、さらに1955年にバナナリンク制度が終了したことで、日本からの輸出量は急激に減少しました。

現在では、ベトナムやタイが主要な輸出国となっており、日本国内では水産業を保護するために輸入割当制度の対象となっています。

スルメとその文化的役割

日本では古くからイカが食用として親しまれており、その保存食としてのスルメもまた長い歴史を持っています。

伝統的な儀式や行事では、スルメは縁起の良いものとして扱われ、結納の際に贈る品としても代表的なものです。

結納品としては「寿留女」という当て字が使われ、昆布(子生婦)と共に、女性の健康や子孫繁栄を祈る象徴とされています。

また、大相撲の土俵の中央には、15センチ四方の穴があり、その中にスルメや勝栗が神への供物として埋められています。

スルメが縁起物とされる理由にはいくつかの説があります。

保存が効く食品であることから、長く幸せが続くという意味が込められているという説や、室町時代に「お足」と呼ばれたお金に関連し、足の多いスルメが縁起が良いとされる説などがあります。

一方、戦場ではスルメは食のタブーとされており、上泉信綱が伝えたとされる『訓閲集』には、怪我をした際に血が止まらなくなるため、スルメやイカ、カニ、トビウオは禁食とされていた記録があります。

また、群馬県ではスルメが消化しにくいため、妊婦が食べると流産するという俗信があり、同様の迷信は長野県や新潟県にも見られます。

富山県や広島県では産後にスルメを食べないようにという言い伝えもあります。一方で、愛知県では病気の際にスルメの目を焼いて食べると良いとされています。

また、江戸時代中期頃から、「スル」が「金をする(使い果たす)」という意味に繋がることを避けるため、「アタリメ」という言い換えが用いられるようになりました。

新潟県で行われる左義長(塞の神)では、スルメを炎であぶって食べると、その年は風邪をひかないという言い伝えがあります。

まとめ

スルメの麹漬けは、乾燥スルメイカを麹に漬け込んで熟成させた保存食です。鳥取県を中心に伝統的な料理として親しまれています。

スルメの麹漬けは、長期保存が可能な食品として、秋に旬を迎えるスルメイカを利用して作られます。

家庭ごとに異なるレシピで作られ、地域の「おふくろの味」として親しまれています。伝統的に保存食として重宝され、現在では真空パック技術により長期間保存が可能となり、全国的に流通しています。

スルメの麹漬けは、刻んだ大葉と共に白ごはんやお茶漬けの具として、また日本酒の肴として楽しむことができます。

クラッカーにチーズを載せたり、野菜スティックに添えることで洋酒とも相性が良いです。また、炒めてパスタに絡めるなど、多様な食べ方が可能です。