定価と希望小売価格とオープン価格の違いとは?

定価とは、事前に決められた販売価格のことで、基本的には値上げや値下げが許されていません。

希望小売価格(メーカー希望小売価格)は、メーカーなどが小売業者に対して「この価格で販売してほしい」と希望を示す価格で、定価のような拘束力はなく、小売業者が自由に販売価格を決めることができます。

オープン価格(オープンプライス)は、メーカーが設定する出荷価格のみが決まっており、販売価格については小売業者が自由に設定できます。

以前は多くの商品に「定価」の表示がありましたが、メーカーや卸業者が販売価格を制約する行為は独占禁止法で制限されており、定価の表示が販売価格を拘束することがあるため、「希望小売価格」や「参考小売価格(参考価格)」、「標準小売価格」の表示が増えました。

定価表示が例外的に認められるのは、書籍や雑誌、新聞、レコード、音楽用テープやCDなどの著作物や、国の許認可を受けて販売されるタバコなどです。

「希望小売価格」の次に導入されたのが「オープン価格」です。1980年代中頃から家電量販店などでの値下げ競争が激化し、「希望小売価格」が実質的に意味をなさなくなったことが「オープン価格」の導入の背景とされています。

「希望小売価格5万円の50%OFF」と表示されていても、実際には2万5千円が相場である場合、消費者は安くなっていると錯覚することがあります。

このような二重価格表示問題に対処するため、公正取引委員会は「15%以上の値引きが市場の2/3以上、20%以上の値引きが市場の1/2以上で行われている場合は二重価格」とする基準を設けました。

この基準に触れないために、メーカーはモデルチェンジで値崩れしやすい旧モデルに「オープン価格」を採用しましたが、「希望小売価格」が設定されている商品では値引き率の強調が続き、多くの家電製品に「オープン価格」が採用されるようになりました。

現在では、家電以外の製品でも「オープン価格」を採用するメーカーが増えています。

オープン価格について紹介

オープン価格とは、メーカーが商品の価格を設定せず、小売業者に販売価格の決定を任せる制度を指します。この価格設定方式は、定価と実売価格の差が大きい家電製品やカメラ、食品などの業界でよく見られます。

オープン価格以外にも、価格表示には定価や希望小売価格、参考小売価格などさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴や目的があります。この記事では、オープン価格の意味や他の価格表示との違い、そしてその採用によるメリットとデメリットについて詳しく紹介します。

価格表示には、オープン価格の他にも定価や希望小売価格、参考小売価格などがあり、それぞれに利点や欠点があります。価格表示には「景品表示法」に基づくルールがあり、販売に関わる全ての人が理解しておくべき重要な規定です。

特に最近では、家電製品やカメラなどの販売店で広く採用されているオープン価格について、その意味や特徴、他の価格表示との違いをわかりやすく説明します。

オープン価格を採用する利点

具体的な価格を表示しないオープン価格制度には、いくつかの利点があります。

この制度は、不当な値引き表示を防ぐために導入されましたが、具体的にどのような利点があるのでしょうか。メーカー、小売業者、消費者それぞれの視点から、オープン価格の利点を見ていきます。

メーカーの利点

オープン価格を採用することで、メーカーは希望小売価格を表示しないため、ブランドイメージを守ることができます。

大幅な値下げが繰り返されると、消費者に「常に安売りしているメーカー」という印象を与え、ブランドの価値が損なわれる可能性があります。オープン価格であれば、価格の競争による消耗を防ぎ、商品価格を効果的にコントロールできるという利点があります。

小売業者の利点

オープン価格により、小売業者は価格設定の自由度が高まります。

仕入れ価格に応じて自由に販売価格を設定できるため、利益をしっかり確保しながら販売できます。

また、他店より若干安くしても利益を確保できるため、商品の販売が促進され、利益が上がりやすくなります。売れにくい商品についても、値崩れの印象を与えずに価格を調整することが可能です。これにより、市場の動向に応じて価格を調整しやすく、過度な価格競争を防ぐ効果もあります。

消費者の利点

オープン価格の導入により、消費者は価格の相場感覚を持ちやすくなります。

メーカー希望小売価格と実際の販売価格が明確に表示されないため、価格の差が分かりやすくなり、商品の実際の価値を理解しやすくなります。

消費者は信頼できる小売店の価格表示を基に冷静に商品を選ぶことができるため、購買時の混乱を避けることができます。

オープン価格のデメリット

日本では長らくメーカーが希望小売価格を設定する「建値制」が主流でしたが、大型量販店やスーパー、ディスカウントショップでの価格競争の激化により、この制度は機能しにくくなりました。

オープン価格はこの背景から導入されましたが、実際にはいくつかのデメリットも存在します。

メーカーのデメリット

オープン価格では基準となる価格が設定されないため、卸値だけの提示になり、小売業者との価格交渉が難しくなる可能性があります。

交渉の際に参考価格が使われることが多いものの、一般には公表されないことが多く、新規取引の機会が減少する恐れがあります。

さらに、カタログなどにオープン価格のみが記載されると、消費者にとって実際の販売価格がわかりにくく、商品の価値が見えづらくなります。このため、メーカーに対して不透明な印象を与えることがあります。

また、価格が曖昧なため、消費者が各店舗に問い合わせたり販売日まで待つ必要が生じることがあり、結果的に店舗への集客が減少し、利益に影響を及ぼす可能性もあります。

小売業者のデメリット

オープン価格では安売りのアピールが難しくなります。以前は「希望小売価格から〇%引き」といった割引率の表示が消費者を引き付ける重要な販売戦略でしたが、オープン価格ではこの効果が薄れるため、新たな販売戦略が必要になります。

価格が一目でわからない場合、消費者からの信頼を得るのが難しく、効果的な販売促進が難しくなる懸念があります。

仕入れ価格の交渉も単純化できず、希望小売価格の何%という具体的な交渉が難しくなるため、交渉が複雑化する可能性があります。

消費者のデメリット

オープン価格のみの表示では、定価や希望小売価格が不明なため、実際の購入価格がわからず、購入前に価格の予測が困難になります。

また、各店舗が異なる販売価格を設定しているため、価格の比較が難しくなります。これにより、消費者は価格の透明性が欠如し、リサーチを行わずに商品を購入した結果、市場相場よりも高い価格で買わされる可能性もあります。

オープン価格は市場価格を安定させる効果がありますが、リサーチをしっかり行わないと高値で購入してしまうリスクがあることを理解しておく必要があります。

まとめ

定価、希望小売価格、オープン価格は、商品に対して設定される価格の種類を表す用語で、それぞれ異なる意味と特徴を持っています。

定価

定価は、メーカーや製造業者があらかじめ決定した固定の販売価格を指します。

原則として値引きや値上げは許可されておらず、この価格で商品が販売されることが前提とされています。

過去には多くの商品に定価が設定されていましたが、現在では特定の商品のみが定価で販売されています。たとえば、書籍、新聞、タバコなどは、法律によって定価販売が認められています。

希望小売価格

希望小売価格(メーカー希望小売価格)は、メーカーが小売業者に対して「この価格で販売してほしい」という希望を示す価格です。

定価とは異なり、小売業者に対する拘束力がなく、実際の販売価格は小売業者の裁量に委ねられています。このため、希望小売価格よりも高く、または低く販売されることがあります。

メーカーは希望小売価格を参考にすることで、商品の価格帯やブランドイメージを維持しようとしますが、実際の販売価格が大きく異なる場合もあります。

オープン価格

オープン価格は、メーカーが商品の出荷価格だけを設定し、実際の販売価格は小売業者が自由に決定できる制度です。

これは特に家電製品やカメラなど、価格競争が激しい分野で広く採用されています。

オープン価格では、メーカーが希望小売価格を設定しないため、小売業者は市場の動向や競争状況に応じて販売価格を調整できます。

この制度により、価格の透明性が増し、消費者は市場価格を基に購入を判断しやすくなりますが、一方で定価や希望小売価格のない商品については価格比較が難しくなることもあります。