ファスナーとジッパー、チャックの違いとは?全部同じ意味なの?

ファスナーもジッパーもチャックも、すべて同じ対象を指しており、それらの呼称が使われるのは異なる国や起源によるものです。

ファスナー(fastener)は、「留める物」を指す名詞であり、ネジやボルトなどもこれに含まれます。

日本では、ファスナーは正確にはスライドファスナーと呼ばれ、スライド式を線ファスナー、ネジやボルトを点ファスナー、マジックテープのようなものを面ファスナーと区別します。

スライドファスナーは、1891年にアメリカのW・ジャドソンによって考案され、1893年にユニバーサルファスナー社によって製造が開始されました。

ジッパー(Zipper)は、1921年にアメリカのグッドリッチ社が商標登録した商品名で、その名前は弾丸が飛ぶ音や布が裂ける音を表すzipから取られました。

アメリカではジップファスナー(Zip fastener)とも呼ばれ、世界中で広く使用されています。現在ではジッパ」は商標ではなく、一般の名称となっています。

チャックは、1927年に尾道で製造販売されたチャック印という商標登録名から生まれた言葉で、巾着をもじったものです。

チャック印のファスナーは丈夫で壊れにくいという特性から、ファスナー(ジッパー)の代名詞となりました。

ただし、チャックという呼称は、日本国内でのみ通用するものであり、他の国では理解されないことがあります。商標ではなくなった現在、日本国内では一般の名称として使われています。

チャックに相当する呼称は、他の国々でも異なります。中国・台湾・香港ではラーリェン、ドイツではライスフェアシュルース、イタリアではキウズーレ・ランポ、フランスではフェルメチュール・ア・グリシェール、中米諸国ではシェレス・レランパゴスやシェレス・デ・クレマレラスと呼ばれています。

異なる呼称が国や地域ごとに存在し、それぞれの文化や歴史が反映されています。

ファスナーの種類と特徴とは?

ファスナーにはメタルファスナー、コイルファスナー、樹脂射出ファスナーの3つの主要な種類があります。これらの異なるファスナーの特長と用途について紹介します。

メタルファスナー(金属ファスナー)

メタルファスナーは、エレメントが金属でできているファスナーです。古くから知られ、広く使用されています。

アルミ合金や銅合金を使用したスタンダードなものや、エレメントの厚みを増して強度を向上させたYZiP®などがあります。

EXCELLA®やEVERBRIGHT®は金属光沢があり、重厚感を演出し、高級ブランドのバッグにも使われています。

コイルファスナー(樹脂ファスナー)

コイルファスナーは、合成樹脂でできたコイル状のエレメントが特徴です。

柔軟性があり、長さの調節などの加工がしやすいです。凹凸が少なくデザインに馴染みやすく、裏使いが可能なのも特長です。

様々な種類があり、衣服やバッグ、雑貨、薄手の生地などに適しています。

ビスロン® ファスナー(樹脂射出ファスナー)

ビスロン® ファスナーは、エレメントを樹脂で射出成型したファスナーで、軽量で色のバリエーションが豊富です。

防寒服や作業服によく使用され、存在感があります。

他にも様々な特殊なファスナーがあり、例えば難燃性の「難燃ファスナー」や変形可能な「形状保持ファスナー」、海水に強い「漁網用ファスナー」などもあります。

これらは一部のファスナーであり、他にも様々な機能を持ったファスナーが存在します。用途や素材に合わせて、正確な製品区分やスライダーの機能、サイズなどを理解して選ぶことが重要です。

ファスナーの日本での歴史と吉田工業(YKK)の成立

ファスナーは1891年、ウィット・コーム・ジャドソンによって米国で発明されました。その後、1893年にはルイス・ウォーカーが参加し、ユニバーサル・ファスナー社(後のタロン社)が設立され、ファスナーの製造が始まりました。

現在のファスナーの原型は、1905年にジャドソンが開発した「ザ・オリジナル」ですが、1917年までに現在の仕様に改良されました。

ファスナーが日本に導入されたのは、第一次大戦中の1917年頃でした。

この時、洋行帰りの紳士たちがファスナー付きの財布をお土産として日本に持ち帰りました。その後、1927年には日本初のファスナーを使用した「チャック印」の財布が広島で製造・販売され、1932年ごろにはファスナーの量産が始まりました。

吉田工業(現YKK)の創始者である吉田忠雄は、1908年に富山県魚津市で生まれ、1928年に20歳で東京に移住しました。

吉田は異なる職場で経験を積み、1934年に個人経営としてサンエス商会を設立しました。

吉田は1938年に東京都江戸川区小松川に新工場を開設し、本格的な自社製造に着手しました。しかし、東京大空襲により小松川工場が焼失し、富山県魚津に工場を疎開しました。ファスナー生産の再開は1945年11月になり、同年に吉田工業が設立されました。

戦後、吉田は米国人バイヤーにYKKのファスナーを提案しましたが、米国製品の品質と機能が優れていることを認識し、自社の技術開発と内製化の必要性を感じました。

1952年には新しい生産方式が導入され、手植え方式が姿を消し、大量生産が可能になりました。これにより、高品質で高生産性なファスナーが確保され、吉田工業の競争力が向上しました。

製品品質向上に伴い、YKKは国内外でのファスナー販売を拡大し、1959年には海外プラントの輸出と技術支援を開始しました。

これに伴い、特許侵害の問題も発生しましたが、吉田工業は特許擁護委員会を設立し、特許に関する問題を解決するために専門技術者が協力しました。

まとめ

ファスナー、ジッパー、およびチャックは、異なる地域や文化で使用される異なる呼称を持つが、基本的には同じ種類の留め具を指します。以下にそれぞれの特徴をまとめます。

ファスナー(Fastener)

定義: 物を留めるための装置。

種類:
メタルファスナー(金属ファスナー): エレメントが金属でできており、古くから知られるタイプ。
例: YKKのEXCELLA®やEVERBRIGHT®。

コイルファスナー(樹脂ファスナー): エレメントがポリエステルやナイロンの合成樹脂ででき、柔軟性があり、長さ調節がしやすい。
例: 衣服や薄手の生地に適したファスナー。

ビスロン® ファスナー(樹脂射出ファスナー): エレメントが樹脂で射出成型され、軽量で色のバリエーションが豊富。
例: 防寒服や作業服に使われる。

ジッパー(Zipper)

定義: ファスナー(留め具)の一種。特にアメリカでよく使われる呼称。

特徴: 1921年にアメリカのグッドリッチ社が商標登録し、ジッパーはその後一般名称となった。一般的には、衣服やバッグなどの開閉部分に使われる。

チャック

定義: ファスナー(留め具)の一種。特に日本で使われる呼称。

歴史: 1927年に日本で「チャック印」という商標登録名で初めて製造・販売された。日本国内でのみ通用する呼称として広まった。

特徴: 頑丈で壊れにくいとされ、ファスナー(ジッパー)の代名詞となった。他の国では通常のファスナーとして理解される。

これらの留め具は、素材、形状、機能において多様性があり、異なる用途に応じて選択されます。地域や文化によって呼称が異なるものの、基本的な役割や構造は共通しています。

ファスナーの歴史

ファスナーの発明(1891年)

ファスナーは1891年にアメリカ人のウィット・コーム・ジャドソンによって発明された。初期のファスナーは「ザ・オリジナル」と呼ばれ、1905年までに改良が加えられた。

ファスナーの初の製造(1893年)

ファスナーの製造は1893年に始まり、ルイス・ウォーカーが参画してユニバーサル・ファスナー社(後のタロン社)が設立された。初期のファスナーは金属製で、スライドする機構を備えていた。

ファスナーの日本への導入(1917年頃)

ファスナーが日本に導入されたのは、第一次大戦中の1917年頃。洋行帰りの紳士たちがファスナー付きの財布を日本に持ち帰り、その後1927年には日本初のファスナーを使用した「チャック印」の財布が広島で製造・販売された。

吉田工業(YKK)の成立(1934年)

吉田忠雄によって1934年に設立された吉田工業(後のYKK)が、1938年に東京で新工場を開設し、本格的な自社製造に着手。吉田は手作業で製造されるファスナーの品質向上に注力した。

戦時中と吉田工業(YKK)の焼失(1941年 – 1945年)

第二次世界大戦中、日本では戦時統制があり、国内向けの伸銅品類の使用が禁止され、また、米国のタロン社がファスナーに関する特許を取得。1945年には東京大空襲により吉田工業の小松川工場が焼失し、富山県魚津に工場を疎開。

戦後と吉田工業(YKK)の技術の向上(1945年以降)

戦後、吉田工業は復興期を迎え、1952年には生産性向上のために新しい生産方式を導入。手植え方式からチェーンマシンを使用した大量生産方式に移行し、ファスナーの品質と生産性を向上させた。

吉田工業(YKK)の国内外での展開(1950年代以降)

吉田工業の製品品質向上に伴い、国内外でのファスナーの販売が拡大。1959年には海外プラントの輸出と技術支援を開始し、特に中南米や東南アジアにおいて販売が増加。

特許擁護委員会の設立(1950年代)

吉田工業は海外進出に伴い、特許侵害の問題が発生。特許擁護委員会を設立し、各分野の専門技術者が協議して特許に関する問題を解決し、自社特許の保護・育成に務めた。