島根県の地元料理、すまし雑煮は、郷土の伝統として受け継がれています。
この料理は、醤油で味付けされたすまし汁に丸い餅を入れて食べる雑煮で、具材は地域によって異なります。
一般的には、岩のりやカツオ節を使いますが、西部地域では干しアユの出汁を用いることもあります。
元旦を祝う際に食べられることが多く、正月の家族の食卓に並びます。
西部では正月三が日まで白い餅が使用され、その後はよもぎ餅に変わります。
食べ方はシンプルで、地域や家庭によって出汁の味が異なりますが、醤油が基本です。保存や継承については、現代では既製品の餅を使用する家庭が増えていますが、一部では伝統を守り続ける取り組みも見られます。
すまし雑煮の手順と材料
すまし雑煮の材料(4人分)
出汁 400cc
薄口醤油 40cc
塩 小さじ1/4
水 1000cc
丸餅 8個
岩のり 適量
カツオ節 適量
すまし雑煮の作り方
1:丸餅をお湯で柔らかくなるまで煮る。
2:出汁と調味料を混ぜ、お椀に丸餅と岩のりを入れ、注ぐ。
3:上にカツオ節をのせる。
地方によるレシピのアレンジ
(石見地方):お椀に盛り、黒豆の煮豆とカツオ節をトッピング。
(隠岐地方):お椀に盛り、のりを乗せる。
(益田地方):お椀に盛り、焼きアユをトッピング。
レシピ引用提供元:島根県食生活改善推進協議会
※地域や家庭によってレシピが異なる場合があります。
雑煮の都道府県による違いを紹介
お餅の形と調理方法
お雑煮の中心となるお餅について考えてみましょう。お餅には角餅と丸餅の2つの形があり、地域によって使われるものが異なります。
東と西で形が異なる
全国的に見ると、東と西でお餅の形が異なります。その区切りは、有名な関ヶ原の戦いが行われた岐阜県あたりにあります。
東日本では主に角餅、西日本では主に丸餅が用いられます。
お餅の形が異なる理由には複数の説があります。西日本では、もともと京都文化が影響しており、丸餅が主流だったと考えられています。
一方、江戸を中心とする東日本では人口が多かったため、一度に多く作れて運搬しやすい角餅が考案され、普及したとされています。
ただし、東日本の中でも山形県では丸餅が使われています。これは、山形県の庄内地域が関西からの影響を受けていたためと考えられています。
さらに、西日本でも高知県では角餅が用いられます。これは、藩主山内氏が故郷の静岡から持ち込んだ風習によるものです。
その他、香川県ではあんこが入ったあん餅を使用する独自の習慣があります。こうした地域差によって、お雑煮に使うお餅の形が異なるのです。
お餅は焼く?煮る?
お雑煮に入れるお餅は、焼いてから入れることもあれば、焼かずにそのまま煮ることもあります。この些細な調理方法にも、全国的な違いがあります。
一般的に、東日本では角餅を焼く地域が多く、西日本では丸餅を煮る地域が多いようです。また、中部地方では角餅を煮る地域が目立ちます。
中部地方で角餅を煮る理由には、歴史的な背景があります。お餅が白いことから、「白=城」を焼いてはならないという風習が広まり、焼かずに煮る調理法が定着しました。
また、九州地方では丸餅を焼く地域も見られます。お餅の形と同様に、調理方法も地域によって異なるようです。
お雑煮の汁は醤油?味噌?
東日本では醤油ベースの汁が一般的であり、西日本では味噌ベースの汁がよく使われます。
お雑煮はもともと京都で作られ、最初は味噌ベースだったことから、西日本ではそのまま味噌ベースの作り方が広まりました。白味噌が主に使用される傾向があるようです。
一方、東日本では味噌が使われないのは、武家文化の影響があります。武家社会では失敗することを「味噌をつける」と表現することから、味噌を避けるようになったとされています。
こうして、武家文化の広まりとともに、すまし汁のお雑煮が全国に広まったと考えられています。
醤油・味噌以外のお雑煮の汁を紹介
鳥取や島根ではお汁粉のような「あずき汁」が、お雑煮のベースとして使われています。見た目はぜんざいに似ていますが、甘さは控えめで、さっぱりとした汁が特徴です。
茨城県では、すりつぶした豆腐を昆布だしでのばし、砂糖で甘く味付けした「白和え雑煮」が楽しまれています。白味噌が隠し味に使われ、おやつのような甘いお雑煮です。
お雑煮の具材の地域差を紹介
地域ごとのお雑煮の違いについて、お餅と汁について考えてきました。最後に具材を比較してみましょう。
野菜
冬野菜である大根、にんじん、ごぼうなどが全国的に使われています。彩りには三つ葉もよく使われますが、南関東ではあまり見られません。
東北地方ではセリ、中部地方や岡山ではほうれん草がよく使われています。
地域の特産品や、冬に収穫される野菜がお雑煮に使われる傾向があります。
肉・魚
全国的によく使われる具材として、鶏肉が挙げられます。鶏肉は季節に関係なく手に入れられ、おいしいスープが取れるという利点があります。
北海道や東北地方のように冬の収穫物が少ない地域でも、鶏肉はお雑煮に欠かせません。
魚を使用するのは、中国地方や九州地方など、冬に豊富な海産物がある地域です。冬に美味しくなる寒ブリは、縁起の良い出世魚として、お雑煮の具として人気があります。
お餅の代わりのお雑煮
日本で唯一、「お餅が入っていないお雑煮」があります。それは徳島県の祖谷地方の「うちちがえ雑煮」です。お餅の代わりに、地域の特産品である岩豆腐が使われます。
祖谷は山深い地域で、冬には雪も多いため、お餅の原料であるもち米が収穫しにくい状況があります。そのため、お雑煮の具として地元の岩豆腐が使われるようになったと言われています。
まとめ
すまし雑煮は、日本の伝統的な正月料理であり、地域によって様々な特徴があります。
地域ごとの違い
東日本と西日本では、お餅の形や汁、具材などに違いが見られます。角餅と丸餅、醤油ベースと味噌ベース、鶏肉や魚の使用などがその代表的な例です。
さらに、地域ごとに独自のアレンジや風習が存在します。例えば、香川県のあん餅を使ったすまし雑煮や、徳島県のうちちがえ雑煮などが挙げられます。
調理方法の違い
お餅の焼き方や煮方にも地域ごとの違いがあります。角餅を焼くか、丸餅を煮るか、あるいはその逆の方法が採用されます。
汁のベース
汁のベースは、東日本では醤油ベースが一般的であり、西日本では味噌ベースがよく使われます。他にも、あずき汁や白和え汁など、地域ごとに独自の汁が存在します。
保存と継承
伝統的なすまし雑煮は、家庭で受け継がれることが一般的でしたが、現代では既製品の餅を使用する家庭も増えています。
しかし、一部の地域では伝統を守り続ける取り組みも見られます。
地域の風土や歴史の影響
お餅の形や調理方法、汁のベースなどの違いは、地域の風土や歴史的な背景に由来します。地域の特産品や文化が、すまし雑煮の地域ごとの個性を形成しています。
すまし雑煮は、地域の特色や文化を反映した日本の豊かな食文化の一端を示す料理であり、正月の行事や家族の絆を象徴する重要な存在です。